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第3話 まだ遊んでいるのか?

危うく投稿し忘れるところでした^^;


竜輝「忘れるな」

冬菜「薄情な作者さんだね」


忘れなかったんだから許して欲しいです……

観覧車を降りた2人は特に他のアトラクションで遊びもせずに遊園地を歩いていた。観覧車を担当する職員は降りてきた2人を見て明らかに安心していたので自分たちの雰囲気が元に戻ったことを確認できた竜輝と冬菜だった。


「ちょっと可愛そうなことしちゃったかな?」

「そうかもしれません」


冬菜の質問に無難に返しながらも竜輝は冬菜をどう呼ぼうか考えていた。向こうは名前で呼んでくれているので自分も名前で呼んだ方が良いのかと真剣に考えている。

冬菜は無意識に名前で呼んでいるので指摘されるまでは気付かないのだが、竜輝にそれが分かるはずはない。ついこの間までクラスメートと休み時間一杯雑談することすらできなかった彼に冬菜の心情を読むのはハードルが高い。


「お化け屋敷だって。入ってみる?」


なんとなくアトラクションに乗る空気ではなかったために乗らなかった2人だったが、流石に遊園地に来て意味も無く歩くだけでは勿体無いと感じた冬菜が目に付いたお化け屋敷を指した。竜輝は初めてに等しい。遊園地を取材する番組で見たことがある程度だ。。

竜輝に反対する理由は無かったので頷くと冬菜は軽く腕を取ってお化け屋敷に向かった。周囲には完全に恋人だと思われたが2人はお化け屋敷に入ろうとしか考えていないので気付かない。鈍感さでは良いコンビだった。


「ここはちょっと長いの」

「そうなんですか?」

「うん。どれくらい長いかは自分で確かめてね?」


冬菜のクイズのような言葉に『それも面白そうです』と返した竜輝はようやく冬菜が自分の腕を取っていることに気が付いた。並んでいる最中であり、冬菜が腕を取ってから既に5分が経っている。気付くのが遅すぎる竜輝だった。


「先輩、どうして腕を?」

「へ? ……あ」


竜輝に問われて初めて気付いた冬菜は恥ずかしそうに腕を離した。完全に無意識で腕を取っていた自分に驚いていた。まさか自然に腕を取るくらいに竜輝を身近に感じていたことに驚いたのだ。


「竜輝君の腕って丁度良い高さなんだよっ」


自分でも苦しいと思う言い訳をした冬菜に竜輝は大して疑問も持たずに『そうですか』と返した。竜輝にとっては女子からの評価はほとんどが冬菜にされるのが初めてだ。

竜輝は同世代の女子と外で遊ぶことをしない。精々が妹の荷物持ちに付き合わされるくらいで自分がどう思われるかが分からない。図書委員の渡辺香澄も親しいといえば親しいが、図書委員の仕事を手伝ったことがある程度の付き合いで一緒に買いものに行ったことはない。


「……竜輝君って、本当に素直だよね」

「そうですか?」


先程とは微妙にニュアンスの違う同音の返しに疲れを感じた冬菜だったがわざとらしく

溜息を吐いて竜輝に向き直った。

お化け屋敷はあと5分待ちなので少しは立ち話ができる。


「竜輝君はもう少し他人の感情の機微に気付けるようになろうね。これじゃ体育祭の時みたいになっちゃうよ」


最後に付け足した呟きは竜輝に聞かせるものではなかったのだが思ったよりも大きな呟きになってしまったようで竜輝が反応した。

過去の失敗がまだ冬菜の中に残っていると思うと申し訳なく思ったのだ。少し焦ったとも言える。


「その件はすみませんでした」


並んでいて周囲に人目をあったために小さく頭を下げた竜輝に今度は冬菜が慌てた。冬菜としては『すんませんでした、てへ』みたいな軽いノリで返して欲しかったし、そもそも聞かれたくなかった。

未だに自分が過去のことに拘っているようで考えたくなかった。冬菜はあまり悩んだり考え込んだりはしたくないと思っているのだ。


「あ~、良いの良いの。あれはちょっとした擦れ違いってことで終わったんだから、お互い話題に出さないのっ。だから間違って話題に出しちゃった私のミス。それで終わりっ」


早口で捲し立てた冬菜に面食らった竜輝だったが今回は冬菜がこれ以上この件に触れて欲しくないと思っていると察して『分かりました』と返して話題を変えることにした。


「話は変わりますけど、ここのお化け屋敷は何がモチーフになっているんですか?」


竜輝と冬菜が並んでいるお化け屋敷は洋館のようだが列から見える庭園には剣山のように剣が地面に立てられている。竜輝には何がモデルになっているのか予想もできなかった。


「何かの英雄譚のパロディだったと思うよ。この遊園地自体がごちゃ混ぜで明確なモデルのないものだから中身もグチャグチャなの」


そんなものかと竜輝が納得したところで2人の順番が回ってきた。

お化け屋敷は複数のチームが同時に入れるようになっていたので入口の直前ではなく目の前の3チームと合同での入場だ。しかし、入口に入って直ぐのお城のエントランスのような場所で2人を含めた4チームがそれぞれの通路に案内された。


「結構大きいですね」

「そうでしょ」


思った以上に大きなお化け屋敷に驚いた竜輝に冬菜は得意気に胸を張ったが竜輝はお化け屋敷に気を取られて見ていなかった。

お化け屋敷は4つの通路に設置されている色付きの小石を揃えないと出られない仕組みで脱出までに20分ほど掛かる。最初の通路はレンガの廊下で甲冑騎士に脅かされ、2つ目の通路は夜の墓場で犬のゾンビに追い回され、3つめの通路では魔女に嫌がらせを受けた。


「……長いですね」

「そうだね」


竜輝は傍目には無表情でお化け屋敷が面白くないように見えるが冬菜には脅かされ続けて疲れているように見えた。恐らく当たっているだろうと自分で判断した冬菜は出たらジュースを奢ってあげようと考え最後の通路に竜輝を促した。




(もしかして、お化け屋敷とか苦手なのかな?)


無事にお化け屋敷を脱出した冬菜は疲れた様子の竜輝を休ませるためにベンチで休むと決めた。竜輝は『全然疲れていません』と意地を張ったが冬菜が休みたいと言ったことで素直に従った。

冬菜としては年相応に意地を張る竜輝が弟のようで面白かった。冬菜に兄妹は居ないので新鮮なのだ。


(どうやっても弟みたいな感覚が抜けないなぁ~)


恋愛実験が成功する様子が全くないと思うと苦笑してしまう冬菜だった。




(情けない)


お化け屋敷で思ったよりも体力を消耗した竜輝は表には出さないように自己嫌悪に陥っていた。まさか遊園地に来て2度も冬菜に気を遣われて休憩することになるとは思っていなかったのだ。

男女の差は適正や性質の差だと考えている竜輝だが、年上とはいえ同年代の女子にここまで気を遣われることに落ち込んでいた。


(もう少しどうにかならないんだろうか?)


冬菜に格好悪いところを見られて挽回したいと思う程度には竜輝は冬菜を意識し始めていた。


竜輝はオバケが苦手なんじゃなくて驚くのが苦手なんです

感情表現が小さいので周囲からは不機嫌な表情だと勘違いされていますけどね


冬菜「損な顔だね」

竜輝「そうなんですか?」


実は身近にいる寡黙な人がそんな感じなんです

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