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第2話 波乱の前触れでいいのか?

夏休み編の2話目は遊園地の2話目です


竜輝「遊園地が好きなのか?」

冬菜「でも時期がズレテない?」


夏休みのイベントってプールと遊園地と夏祭り、部活の合宿とか思いつかないんです

図らずとも竜輝の使ったストローを使ってしまい恥ずかしさで俯いていた冬菜はオレンジジュースのボトルを竜輝が返してきたことで我に返った。

竜輝の反応を窺い見てみることにしたのだが恥ずかしさで中々顔を見ることができなかったが、どうにか横目で竜輝の顔を見ると何かを見ていた。

気になって竜輝の視線を追ってみると20代前半くらいの背の高い女性が居た。パンツルックで綺麗な立ち振る舞いの女性だった。少し目力が強く気の弱い人は理由も無く苦手意識を持ちそうな女性だったが竜輝がその手のことに影響されないのは確認済みの冬菜としては面白くなかった。


「竜輝君、何を見てるの?」

「いえ、知り合いが居たようなので声を掛けるべきかどうか迷っていたんで、す?」


冬菜の質問に何か引っ掛かった竜輝だったが直ぐには何が引っ掛かったのか分からずに素直に答えておいた。

何よりも冬菜の笑顔が少し怖かったので誤魔化すという発想が生まれなかった。冬菜が怒るときは自分がおかしなことをした時だと思っている竜輝は冬菜の怒りを鎮めるために必死に解決策を考える。

ある意味で竜輝が原因なのだが怒った理由さえ分かれば直ぐに解決可能な問題である。問題は竜輝がその理由に行きつかないことだった。


「へぇ、どの人?」


実は竜輝が見ていた女性がもうどこかに歩いて行ったのは見えていた冬菜だが敢えて聞いた。竜輝の反応を見ようと思ったのだ。


「もう居ませんね。本当にその人かも分からないので近くに居たら挨拶くらいは、と思ったんです」

「そうなんだ?」


冬菜からの圧力が増したように感じて竜輝はダラダラと冷や汗を流し始めた。理由も分からないうちに冬菜が不機嫌になるようなことをしたらしいと焦っている。

このままではマズイと解決策を考えるがやはり思いつかずに拷問のような休憩時間を過ごしたのだった。


竜輝が冷や汗で背中を濡らしているとき、冬菜は冬菜で自己嫌悪に陥っていた。

冬菜には恋人でもなく、告白もしていない後輩男子に理不尽な怒気をぶつけているという自覚があった。竜輝が涼しげな無表情に見えて物凄く焦っているのも察することができた。

本当ならば直ぐにでも怒気を収めて遊園地を楽しみたいのだがそう簡単に収められなかった。


こうして、妙に緊張感のある竜輝と冬菜は休憩時間を終えて他のアトラクションに向かうのだった。


「次は何に乗ろうか?」

「……あれなんてどうですか?」


妙に張り詰めた空気を出す竜輝と冬菜が遊園地の通りを歩いていると他の来場者は自然と道を開けた。2人の周りだけポッカリと空白地帯になるのだ。

それは2人も理解しているので2人きりで話し合える所で話し合おうと以心伝心していた。そのために冬菜の『何に乗るか?』という質問に竜輝は観覧車を示した。

何度か乗ったことのある冬菜はこの遊園地の観覧車は午前中は空いていて、大きいために乗っている時間も長いことを知っていたので1も2もなく頷いた。

竜輝は偶々目に付いた長時間人の目から離れられる所として選んだのだが冬菜は『ナイス判断』と大声で褒めてあげたいくらいだった。


観覧車の乗り場に来てみると冬菜の経験通り空いていた。直ぐにでも乗れる程度の人しか居ないのだ。2人が並ぶと直ぐに乗れた。2人が乗り込んだ瞬間に係の職員がホッとしたのは見ないことにした竜輝と冬菜だった。


「……先輩、すみませんでした」

「ええっ!?」


乗り込んで地上から離れると竜輝が直ぐに冬菜に頭を下げた。4人乗りの観覧車の中で向かい合って座っているために深く頭を下げると竜輝の髪が冬菜の膝に当たるのだが冬菜はそんなことは気にならなかった。

竜輝が急に謝ってきたことに驚いてそれどころではなかったのだ。

だが竜輝が謝った理由に心当たりがあったので直ぐに頭を上げさせた。


「別に竜輝君は何も悪いことはしてないよ」

「そう、ですか?」


冬菜は竜輝の勘違いを正確に読み取っていた。

竜輝は冬菜に気付かぬうちに不愉快になるようなことをしたと思い込んでいるのだ。間違っているわけではないが冬菜からしたら『竜輝が何かをしたわけではない』ので竜輝が悪いとは思わなかった。


「ちょっと、竜輝君が他の女の人を見ていたから誰なんだろうって気になっただけなの」


それを聞いて竜輝は今まで以上に焦った。冬菜としてはこれで竜輝が少しは落ち着くだろうと思っていたのに逆の反応をされて戸惑った。

何を考えているのか聞いてみたかった。


「どうしたの?」

「いえ、その、母と妹に『女の子と遊ぶときは他の女の人を見るのは御法度』だと言われていたので……」


段々と尻すぼみになっていく竜輝は冬菜には怒られた子犬のように見えた。普段の無表情は形を潜めて不安そうに俯く竜輝は本当にレアだった。


「……ぷっ」

「笑うところでしたか?」


力を抜いて吹き出した冬菜を見て竜輝も力を抜いて聞いた。

冬菜から先程までの張り詰めた空気が無くなり安堵しながら、頭の片隅に生まれた『結局何だったのだろう?』という疑問を放り投げた竜輝だった。




(ちょっと可愛そうなことしちゃったな)


竜輝が力を抜いて不思議そうに質問してきたところで冬菜は小さな罪悪感を抱いた。しかし直ぐに仕方のないことと割り切った。

自分は竜輝で実験を始めて、本当に竜輝が気になり始めているのだ。その竜輝が年上のお姉さんと知り合いで、デートの最中にその人のことを見ていたらヤキモチを焼くもの当然だろう。

後で何かしらのフォローは入れないといけないなと思いつつも今は何もしないで2人だけの時間を楽しもうと開き直った。

しかし、冬菜にはまだ懸念事項があった。竜輝が見ていた知り合いと思わしき年上の女性は一体誰だったのか。


(どういう関係なんだろう?)


竜輝の反応から恋人ではないと感じているが、自分から挨拶をしようかと思う程度に特別な相手だと思うと興味の尽きない冬菜だった。




(ああ、俺のことを『竜輝君』と呼んでいたんだ)


冬菜の機嫌が回復したことで安心したと同時に、冬菜が怖くなり始めたときに感じた違和感の正体に気付いた竜輝だった。普段は『木島君』と呼んでいるために違和感があったのだ。

竜輝は家族以外から名前で呼ばれた経験が無いので違和感も人一倍大きかった。だからこそ、冬菜がどうして自分のことを名前で呼んだのかが分からなかった。

そして、母親と妹には男女が2人きりで遊びに行くことは特別なことだと教えられている竜輝には普段と違う冬菜の行動全てが特別なことに見えた。


(俺も、名前で呼んだ方が良いのか?)


冬菜が意図することとは別の理由で竜輝は冬菜を名前で呼ぼうか悩み始めた。


冬菜が少しアタックを掛けましたが竜輝には微妙に届きません


遊園地をもう1話入れるか次の場面に移るか悩みどころです

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