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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第6章 精霊の審判者
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(8)占者②

――村の占者(せんじゃ)がイーレに会うことを希望している。


 翌日に、ハーレイがその件を伝えると、イーレは戸惑いを見せた。


占者(せんじゃ)が私に会いたいって、なんでまた……私、何かやらかした?」

「野生のウールヴェを倒しておきながら、やらかしていないと思うとは、びっくりだ」

「だって、あれは成り行きじゃない」

「村の男達が、嫁に欲しがっている」

生涯(しょうがい)初のモテ期到来?」

「そういう反応がくるとは思わなかった」

「冗談はさておき――村は余所者(よそもの)が入れないんでしょ?」

占者(せんじゃ)が招いたから今回は特別だ」

「……占者(せんじゃ)は西の民では、どういう立ち位置なの?」


 ハーレイは考え込み、余所者(よそもの)に説明する言葉を探した。


「長の次に権力があると思っていい。迷ったときなどの村の相談役だ。道を示す。彼女の言葉はよく当たる。イーレは精霊によって飛ばされたとも言っていた」

「私の言葉は証明されたわけね」


 イーレは得意げに胸をはる。このたまにでる子供っぽいところが、彼女の年齢不詳に拍車をかけるのだ、とハーレイは思った。


「メレ・アイフェスの(かなめ)が不在で、エトゥールも混乱しているが、待てば向こうから連絡がくるらしい」

「――」


 イーレは軽く口をあけた。


「ちょ、ちょっと待って。占者(せんじゃ)がそう言ったの?」

「そうだが?」


 いやいやいや。どうして、地上の西の民の占者(せんじゃ)が、(かなめ)であるディム・トゥーラの不在を見抜くのか。

 偶然?はったり?それとも――


「……私も質問が許されるの?」

「通訳はする」


 イーレはハーレイをじっと見つめる。


「他言無用を誓える?」

「個人の秘密は守る」

「個人ではなくても」

「西の民に不利なことは困る」

「エトゥールや私達に不利なことは、こちらも困るんだけど――」


 イーレはつぶやいた。


「……貴方をまきこむのも手か……」


 ハーレイは背筋がぞくりとした。本能が警告する。これはヤバい雰囲気だ。魔獣の四つ目が五十匹いるより、危険な匂いがする。


「待ってくれ、イーレ。やはり、占者(せんじゃ)は控えた方がよさそうだ」

「もう、手遅れ」


 イーレは、にやりと笑った。


「さあ、占者(せんじゃ)のところに行きましょう」


 ハーレイは戦略を誤ったことに気づいたが、すべては遅かった。




 ナーヤ婆のところを訪れると、占者(せんじゃ)は既に客人二人分のクコ茶を入れていた。相変わらずの先読みである。


「ナーヤ婆。例のメレ・アイフェスを連れてきた」

「来たな」


 ハーレイを見たナーヤは大笑いをした。


「巻き込まれたな。もう逃げる事はかなわぬ」

「待て、ナーヤ婆、それはどういう意味だ⁈」

「通訳はいらぬよ」

「エトゥール語だぞ?」

「おまえさん、あたしの言葉はわかるだろう?」

「え、ええ、理解できるわ」


 イーレは先程から戸惑いを隠せない。言葉がわかる。だが老女がしゃべっているのはエトゥール語ではない。


「お婆様、貴方もメレ・エトゥールのように『精霊の加護』をお持ちってことかしら?」

「持っておるよ。占者(せんじゃ)じゃからのう」

「通訳がいらないなら、俺は席をはずそう」


 不吉な予感から、この場を去ろうとすると、イーレはがっしりとハーレイの腕をつかんだ。


「逃がさないわよ」


 完全に獲物を捕らえた狩人の顔だ。ハーレイはぞっとした。


「あきらめろ、若長。逃げるには手遅れだ。まあ、二人とも座れ」


 二人はとりあえず老女の前に腰をおろした。

 落ち着かない二人に、ナーヤはいつものようにクコ茶をだす。


「聞きたいことがあるのだろう」

「山ほど」


 イーレはにっこりと応じた。


「よかろう」


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