表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第9章 精霊の誓約
197/1015

(16)先見⑯

「では護衛をつけるが、納得していただきたい」

「護衛?専属護衛としてアイリがすでにおりますよ?」

「アイリ以外にだ」


 メレ・エトゥールは辛抱強く言った。

 メレ・アイフェス達は自分の安全というものを軽視しがちの傾向がある。これは譲れない条件だった。


貴女(あなた)は自分の価値をわかっていない。治癒の能力を持つメレ・アイフェスなど、誘拐して手にしたいと思う人間は山ほどいる。エトゥール内にも国外にも。貴女(あなた)に何かあれば施療院どころではない。カイル殿といい貴女(あなた)といい、もう少し身の安全について考えていただけないか?」


 シルビアは考え込んだ。メレ・エトゥールの言い分も、もっともだった。


「わかりました。では、治療の手伝いも可能な護衛を優先的に希望します」

「警護の者を治療の補助として使うつもりか?」

「はい。知識は増えますし、技術も学べます。習得するいい機会だと思いますが?」

「……第一兵団の者でもいいか?」

「かまいません。襲撃を計画したとしても、まさか手伝いが護衛だと思わないでしょう。患者を運ぶには力のある男手は大歓迎です。ただ女性である私が命じても、気になさらない方がいいです」

「他には?」

「侍女の方でやはり手伝いを希望したら、施療院の手伝いを認めていただけないでしょうか?」

「侍女?」

「大災厄の時に、私だけでは心もとないので、補助ができる者を鍛えたいと思います」


 沈黙が流れた。


「……だめでしょうか?」

「いや、待て。前提条件が違う。貴女(あなた)は大災厄の時点で、地上に残られる気か?」

「?」


 シルビアは怪訝(けげん)そうな顔をした。


「当たり前じゃないですか」

「当たり前ではないだろう?地上にいてどうする。命をおとす危険性もあるのだぞ?」

「それは地上にいる全ての人間に言えることですよね?」

「それはそうだが――」

「メレ・アイフェスが全員、安全なところで高みの見物を決め込むと思われるのは心外です。私とカイルは少なくとも違います」

「だが――」

「カイルはまだ諦めていません。私もです」

「だが、それは――」

「五年後の話です。その時、論じればいいのではないですか?」

「論じる――いや、そうではなく――」


 珍しくメレ・エトゥールは動揺していた。


「どうされたのですか、メレ・エトゥール?大災厄の映像にも動じなかったと言うのに」

貴女(あなた)が予想外のことを言うからだ……」

「何が予想外だと?」

「あの先見のメレ・アイフェスと天上に戻るのではないのか?」

「クトリと?彼は残る気はないでしょうけど、私も戻る気はありませんよ?」

「なぜ?」

「――それは私にもわからないのです」

「わからない?」

「この行動の衝動(しょうどう)がどこからくるのか、私には全くわかりません」

「――」

「でもこのままエトゥールが滅びるのは見たくないことは確かです」


 セオディア・メレ・エトゥールはシルビアを見つめた。


「……五年後の話も、ひとまず保留にしよう」

「わかりました」

「施療院の広さはどの程度を考えている?」

「治療に携われる人がどれほど、確保できるかに左右されますが……」

「それもそうだな。わかった、とりあえずこちらで適当な館を見繕(みつくろ)う」

「あと、薬草をどこかで栽培できないでしょうか?その……実験的に」

「庭師と相談してみよう。中庭の一角を使えばよい」

「ありがとうございます」

「礼を言うのはこちらの方だ。メレ・アイフェスの助けがなければ、絶望しかなかった」

「もう一つ、お願いごとがあります。少し(はかりごと)に近いことですが……」


 シルビアにしては珍しい言葉に、セオディアは眉をひそめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ