表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第9章 精霊の誓約
194/1015

(13)先見⑬

「星が落ちてくるとなると、我々に為す(すべ)はない。座して死をまつだけになる」


 メレ・エトゥールは、なぜここまで冷静なのだろうか?カイルは彼の態度に不安になった。ファーレンシアもただ(うつむ)いているだけだった。

 それに比べてハーレイやリル、専属護衛の反応はまともだった。皆、顔色を失い動揺をしている。

 エトゥール王族は、滅びを享受(きょうじゅ)し、諦めてしまったのか?


「メレ・エトゥール、運命に(あらが)うのを諦めるの?」

「まさか」


 セオディアは嗤った。


「私は往生際(おうじょうぎわ)の悪い人間だ。これに関してはメレ・アイフェスの協力を期待していいのか?」

「もちろん」


 セオディアはカイルの絵を拾いあげた。


「この見るに耐えない絵は、大災厄後の情景か?」

「多分」

「世界の番人が伝えてきた?」

「彼には語ってはいけない、という誓約がある。だから番人の領域で僕にこの光景を見せてきた。僕は凄惨さに耐えきれず、それを拒絶してしまったんだ。でもこの記憶のどこかに、滅亡を回避する手がかりがあるんだ。ナーヤがそう言ってた」


 カイルは描きかけの絵を指で叩いた。

 メレ・エトゥールは若長ハーレイを振り返った。


「西の民の占者(せんじゃ)はなんと?」

「――未来は一つではない、と」

「名言だな。私も常々、そう思って生きてきた。我々は何をするべきだろうか?」

「食料の備蓄と作物の種の確保」

「種?」

「もともと初代のメレ・アイフェス達はそれが目的でこの地に来てたはずだ」

「――人の命よりも植物の種だと?」

「返す言葉もないよ」

「腹立たしいのは初代に対してだ。君達ではない」

「私達は、天上に様々な技術を持っています。例えば、陽の光の必要がなく、植物を育てることができたり、防寒着の作成や建物の断熱方法を。作物の種さえあれば、育てることができます」


 シルビアが告げる。


「五年の間にそれらを準備をする必要があります」

「準備の外貨が足りない。備蓄はすさまじい量になるはずだ」 

「アドリーの貴石を流通させる」と、カイルは即答した。

「まだ、足りない」

「薬品を作ります」


 提案したのはシルビアだった。


「万能薬のようなものなら、他国は飛びつきませんか?」

「どうやって」

「薬草から有効成分を抽出して、あとはチップを混ぜます」

「ちょっと、シルビア。それ、さすがにまずくない?!」


 シルビアのいつにない大胆な提案に、黙って聞いていたイーレの方が慌てる。


「カイルと共に負傷者を治療したのに、今更でしょう?」

「シルビア様、商業ギルドを抱き込めば、多分もっと薬品で利益を出せると思います」


 リルの言葉に皆が彼女を見つめた。


「でも今流通している薬がつられて値上がりします。貧乏人が治療できずに苦しみます」


 リルのもっともな意見に答えたのもシルビアだった。


「施療院はどうでしょうか?」

「施療院?」

「準備に対して協力してくれた民衆への対価として、怪我や病気の治療を無料でするのです。もちろん私がそれをします」

「シルビア、深入りしすぎじゃないです!?」


 クトリが驚きの声をあげる。


「バレたらただではすみませんよ!?」

「私がしたいから、するのです。治療した者に薬草や種の収集を頼むこともできるかもしれません。カイル、どうですか?」

「いいと思う」


 カイルはあっさり賛同した。


「正直、シルビアの行動はありがたい。なるべくエトゥール内の協力者は欲しい。メレ・エトゥール、施療院の件はかまわないかなあ?」

「あ、ああ……」


 メレ・エトゥールの反応はやや遅れたものとなった。

 カイルは、ふと思い出した。


「ファーレンシア」

「はい」

「君と初めてあったとき、君は滅びの前兆の夢を見ると言った」

「……はい」

「この光景は一致している?」

「……」


 ファーレンシアは黙った。


「ファーレンシア、教えてくれ」

「……海ではなく、陸に火の玉が多数降り注ぎました」

「辺りが火の海になる?」

「……はい」

「人々が逃げまどう?」

「……はい」


 それは、カイルが初探索で意識を失う前に見た情景だった。あの時、無意識にファーレンシアの先見の内容に踏み入れてしまったのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ