悪霊が求めるホットケーキ?
なろうラジオ大賞参加作品第七弾。
「『食わせろォ!! 食わせろォ!! 捧げ物を食わせろォ!!』」
「くっ! なんとか拘束できたけど」
「私達じゃエドに憑いた悪霊を祓えない!」
俺の名前はルイ。
そして俺と同じく正気なのがマリで、俺達とは違い悪霊に憑かれ、正気を失っているのがエド。
俺達は世界的に有名な探検隊。
そして今回俺達は、かつてこの星に存在してたという古代文明の謎を追い、砂漠地帯の、ある遺跡にやってきた。
けどまさか、その遺跡に悪霊が住み着いてて。
そして仲間のエドに取り憑くなんて、俺達の常識じゃありえん事態が起こるとは思わなかった。
俺達のいる社会じゃ、そういう存在は認められてる。
だがそれらは時間が経てば星の一部に還元されると言われてる。
なのにこの地の悪霊は……古代文明が存在してた時代から存在してたとすると、いろんな意味で常識外れだ。
「というかこいつ何を言ってるんだ? 俺達の知らない言語だ」
「翻訳機を使ってみる!」
マリはすぐに翻訳機を使った。
俺達の使う翻訳機は、石板などに刻まれてる古代文字だけじゃなく古代語も翻訳できる。
「捧げ物? まさか相手は神様なの!?」
「なんだって? まさかの神様……ていうか捧げ物ってなんだ!?」
俺達が今まで集めた、この地――文献によればエジプトと呼ばれてた地に関する様々な資料を空間モニタに映し出す。
「検索を開始。検索言葉は『エジプト』『捧げ物』……くそっ、ところどころ虫に食われてる文献ばかりじゃ……ん? ほっとけーき? 材料はコムギコ、タマゴ、ギュウニュウに……菌類も必要だと!?」
「ちょっと待って!? 私達の先祖がこの星に住む前に、この星の菌類は絶滅させられたんじゃ――」
「『食わせろォ』」
マリは言葉を最後まで紡げなかった。
そしてその代わりに、エドに憑いた悪霊の声が響き渡り、
『食わせろォ!!』
俺達は――。
地球人類が絶滅してから数万年が経った頃。
地球から数万光年も離れた惑星から異星人の難民が来訪し、彼らは人類がいないからと即座に地球に住み着いた。
だがしかし彼らは知らなかった。
彼らの霊魂と違い地球人の霊魂はしぶとい事を。
数万年後もこうして存在し。
外来種たる彼らに迷惑をかけられる事を。
まずは我々の言語を理解しなければ除霊不可能な事を。
そしてついでにいえば。
文献が虫に食われ、情報が欠落していたため分からなかったのか、古代エジプトにおける神への捧げ物の一つは、正確にはホットケーキより起源が古いパンケーキである事を。




