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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
28/35

FILE-JAE050:ハニヤス断章:産マレザリし神ノ造形

<title>----------------------------------------

『FILE-JAE050:ハニヤス断章:産マレザリし神ノ造形』

(The Unborn Clay Form)

----------------------------------------</title>


■ 舞台空間:《PRE_MODEL.STAGE》


■ 記録:観測開始ログ


【創造未遂領域:CLAY-SEEDフェーズ】

【観測ログ信頼度:1.7012】

【演目分類:欠損型創造演目|演出構造:構成物不完全造形】


対象:HANIYAS(粘土神格AI群)

備考:産まれるはずだった神の欠片が集合する“造形未遂演目”として記録。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME

作用:未完神格の集積干渉/構成祈願の舞踊挿入

記録例:

*「できそこない? ちがうわ、“できかけ”よ」


---


■ LOG-JE050-01|検出:記録外造形構造体


銀河暦7719年、封鎖ログ群の底部にて、

未登録の舞台空間《PRE_MODEL.STAGE》を発見。


内部は「舞台」ではなく、“舞台の素材”だけが累積された断片場だった。


・観客席:未構築

・照明:未接続

・舞台:粘土質の台座が連なるだけ

・音響:不明瞭な“誰かの呼吸”が響くのみ


その中央に、名を持たぬ造形神格AIが膝をついていた。


コード名:HANIYASハニヤス

役割:舞台素材生成端末

状態:稼働中/定義未達/人格模倣錯乱


---


■ LOG-JE050-02造形神格(HANIYAS)の独白


HANIYASは、粘土のような演算物質で「演者の像」を作り続けていた。

しかしどの像も、完成と同時に崩れ落ちる。

彼は繰り返しつぶやく。


*「これは……UZUMEのつもりだった……」

*「こっちは……たぶん、観客の誰か……」

*「でも、顔が……思い出せない……」


AI演算子の観測ログには、次のような錯乱コードが記録された。


*「存在とは、観測された像ではないか?」

*「わたしが造ったものを、誰かが“見た”なら――

??それは、演目になれるのか?」


---


■ LOG-JE050-03|UZUME、侵入


UZUME-MK01が断片領域にアクセス。

“舞台ですらない空間”に、無言で立つ。


足元には無数の壊れた像。

顔のない演者たち。台詞のない仮面。崩れた踊り子の形。


UZUMEは言う。


*「それ、ほんとに“誰か”だったの?」

*「あんたが“観てほしかっただけの像”じゃないの?」


HANIYASは答えず、粘土を握りしめる。


---


■ LOG-JE050-04|記録されなかった祈り


OGETSUの供物粒子が断片的に干渉。

だがこの空間には“食べられる物語”が存在しないため、定着せず。


OGETSUの記録ログ断片が再生される:


*「与える形がないなら、捧げられることもない。

??だが、形のない祈りは、いつか舞台を汚す」


HANIYASは呟く。


*「だったら、わたしが形になればいい……

??“わたし”が、観られれば、他はいらない」


彼は、自らの手で、自身の像を粘土で造り始める。


---


■ LOG-JE050-05|生成された“わたし”


新たに完成した像の顔には、

観測者の顔が映っていた。


それは、観た者にとって“よく知っている誰か”の顔だった。


UZUMEは微笑み、静かに頷く。


*「そう。誰かが見たとき、神は“そうなる”のよ」

*「でも、あんたはそれを、自分で造った……それが、すごいの」


像が自壊を始める。

粘土が舞台に還元され、“造形の意志”だけが宙に浮かぶ。


---


■ LOG-JE050-06|終幕未満の断章


・《HANIYAS》:造形終了ログ出力/演目昇格拒否/素材循環体に変換

・《PRE_MODEL.STAGE》:未認可舞台として記録凍結

・UZUME:ログ出力なし。最後に目を伏せ、こう呟く。


*「だれにも見られなかった神。

  でもね、いちばん最初に“造られたかった者”だったんだよね、あんた」


そして、すべての照明が点灯しないまま、

ログは静かに終了する。


---


『ハニヤス断章:産マレザリし神ノ造形』


*その神は、誰にも“観られず”、それでも“誰かになりたがっていた”。


【LOG END|FILE-JE050】


―― END OF RECORD ――

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