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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第五章

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89話 農園開拓と家作り その2

 屋上の天守閣(仮)を仕上げたあと、一旦下に降りて建物の出来を確認する。

 当初の予定とはまったく違ったものが完成したが、そんなことはおくびにも出さずに披露する。

 日本の城は世界遺産にも認定されるような建造物だ。それを再現しようなどとその場の思いつきで出来るものじゃなかった。

 城を作るという考えは一旦こっそりと封印して、計画を練り直しだ。諦めたわけじゃないぞ!


「悪くないわね。上からの景色もよかったし」


「入り口はどこですか、マサル様」


「屋上」


 下から一層ずつ積み上げる感じで作ったんだが入り口はわざと作らなかった。周囲に壁を作ってからにしないと何かに侵入されるのが怖い。内部にもまだ扉はついてないのだ。ちゃんとした扉を作るのは壁を組むのより手間がかかる。

 入り口が屋上だけなら空を飛べでもしない限り侵入はできないだろう。

 サティはどうだろう。塔の高さは十数メートルはある。レヴィテーションは使えるが、さすがにこの高さはきついか? 


「サティ、屋上に登れる?」


「はいっ!」


 一応試してみたらさすがに1回のジャンプでは無理だったが、建物にあるわずかなとっかかりに指をかけて、そのまま一気に屋上まで登ってしまった。

 いけそうだとは思ったが、目の前で見せられるとサティのジャンプ力は圧巻だなー。


「すごいぞ、サティ!」


 屋上にいるサティに下から声をかける。


「次は降りてみますね!」


「いやいや、まてまてまて!」


 続いて飛び降りようとしたので焦って止めた。大丈夫だとは思うけど、さすがに怖いよ!

 屋上にレヴィテーションであがってサティを捕まえる。


「降りる方もたぶん大丈夫ですよ?」


 たぶんって自分でも言っちゃってるし。


「降りる時はほら、俺が抱えてやるからな?」


 それでサティは飛び降りないとニコニコで約束してくれた。

 明日はちゃんとした入り口を作ろう。

 

 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 



 とりあえず寝室とお風呂場まわりの内装だけは済ませた。寝具は旅の装備があるから今日から寝るのに問題はない。

 こちらに滞在するのは冬の間だけの予定でその後どうするかは決まってないが、最低限の家具や調理器具は揃えておいたほうがいいだろうということになった。

 砦は商業も盛んで色んな店が揃っているそうだし、明日見に行くことにした。


「え? もう家を建てたの? 今日からそっちに住む?」


 戻ってオルバさんに報告をする。


「そうよ。マサルがすごいのを建ててくれたの!」


 エリーがナーニアさんに俺が作った塔の自慢をしていた。


「魔力は大丈夫なのかい?」


「そうですね……休み休みやれば問題ないと思います」


 さすがにでかい建物だったので魔力はごっそり減っていた。だけどまだまだ余裕はあるし、なくなったらなくなったでアンに補充してもらえばいい。

 

 俺が家を建てていた間も順調に伐採は進んでいたようだ。村人たちはちょうどまた休憩中でお昼の準備をしている。

 そういうことならと、アイテムボックスに貯めこんであるオーク肉を提供した。

 別に彼らとてタダ働きってわけじゃない。切った木は自分たちで使う薪になる。面倒な輸送は俺たちがやるので、働いた分損はないのだ。

 とはいえ、手伝ってもらってるのは確かなのでお昼の食材の提供くらいはして感謝は示しておいてもいいだろう。

 オーク肉の大量提供は好評だったようである。


「うちは別に貧しい村ってわけじゃないけど、今年は不作でね」


 雨不足はここでも深刻なようだ。ただ、この近くの川はそこそこ水量が豊富で、干ばつでも凶作というほどの被害はないそうだ。


 昼食後の作業が始まった。

 俺も木こりに回ろうとしたんだが、オルバさんに休んでていいと言われた。

 休んでいたほうが魔力の回復が早いって話は何度も聞いたが実際のところはどうなんだろう。


「どうなの?」


「そりゃ休んでたほうが回復は早いに決まってるわよ」


 エリーに聞いてみると、リラックス状態のほうが魔力の回復が早い、という説があるそうである。あくまでも説だ。諸説あって確定されたわけでもないらしい。

 こっちの人は魔力を数値化できないし、確かめるすべは個々の体感でしかない。

 まあ楽できるにこしたことはないので、この件はあまり追及しないほうがいい気がする。


「暇だな」


「……」


 ティリカがこくりとうなづく。

 サティとアン、エリーは伐採の手伝いだが、ティリカは俺と居残りだ。

 だが実はティリカはそれほど暇じゃない。仕事中である。

 ほーくで周辺の偵察をやってもらっているのだ。魔物がいるなら早いうちに駆除しなければならない。


 俺一人、することもないので思いついて井戸を作ってみる。

 早目に作っておかないと、掘ってすぐは水が濁って使えないのだ。

 建物もあったほうがいいかな。野外で食事もたまには楽しいが、なにせ真冬である。寒い。

 厨房と食堂でいいから、そんなに複雑な建物はいらないけど、人がたくさん入れるように大きめがいいな。

 場所は井戸も食堂も、午前中に壁を作った内側に作った。勝手に作っちゃったけど、邪魔なら壊せばいいだろう。

 魔力も自然回復分くらいでまかなえた。魔力を節約するには壁を薄くすればいい。使う土の量が少なければ魔力も少量で済む。今日建てた塔のほうは自分が住むので、おもいっきり頑丈に、壁を分厚く作ってある。


「まだ寒い」


 ティリカがつぶやく。新しくできた食堂に入ったが、そもそも作ったばかりだ。気温は外と変わりない。


「はいはい。火をつけような」


 壁際にかまどを土魔法で作る。3つもあればいいか。

 アイテムボックスから薪を取り出してかまどに火をつける。お湯を沸かしてマギ茶を入れる。あったまるな。


「どんな感じ?」


「近くにはいない」


 ほーくの空からの偵察は森だと小物は発見しづらいが、少なくとも群れや大物がいないというのは朗報だ。

 周辺の魔物掃除は楽にできそうだ。いや、たいがにでもやってもらえればそれすらも……

 でもたいがにやらせると獲物の回収が難しいし経験値も入らないな。


 ティリカと一緒に火にあたりながらぼーっと考え事をしていると、扉を開けてオルバさんとアンやエリーやサティが入ってきた。


「これいつの間に……」


 オルバさんが驚いている。オルバさんには家作るの見せたのは初めてだっけ。

 かまどどころか、机から椅子から完備である。孤児院を参考に作ったから40人くらいは座れる規模だ。


「寒かったんで休憩所も兼ねて作ってみました」


「気が利くじゃない」


 エリーはさっそくかまどの火にあたっている。


「そろそろまた農地を作って欲しいんだけど、魔力は大丈夫かな?」


「ええ。休んでたんで回復してますよ」


「え? これ今作ったんだよね」


「え、ああ。これくらいならあんまり魔力はいらないんですよ」


「ああ、そうなんだ……結構立派な建物だからずいぶん魔力を使ったんじゃないかと思ったんだけど」


「ちょっと手を抜いて壁は薄くなってますし、机とかあまり丈夫じゃないかもしれません」


「ああ、そうなんだ……」


 机はただの長方形の箱だし、椅子も横長の固定式のベンチタイプだ。土を簡単に固めただけで強化もしてないし、魔力も手間もほとんどかかっていない。


「じゃ、行きますか」


「いってらっしゃい。私たちは休憩してるわね」


 エリーがこちらも見ずにそう言った。

 みんなでかまどの前に集まって火にあたっている。付いてきてくれるつもりは全くないようだ。

 うん。いままで働いていたもんね。俺の魔法も何度もみてるしもう見飽きたよね。外は寒いよね。


「わかった。行ってくる」


 サティはついてきてくれた。サティだけはいつでも俺の味方だ……



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 



 その日の仕事はそれで終えて、我が家(塔)に帰還である。

 だいたい俺の能力は把握したので、村長さんとオルバさんは改めて開発計画を練るそうだ。

 なんだか俺の魔力が思ったより強力なので、村長さんはずいぶんとやる気である。

 オルバさんはさすがに悪いと思ってるようだが、エリーはいけいけであるし、アンも別にやってあげればいいじゃないと賛成だ。

 だがまあ依頼の分、オルバさんの部分だけしっかりやればいいから、あとは適当に休み休みやればいい。伐採は村人でやってくれる約束をしたし、農地作りも壁作りも魔法があれば楽なものだ。


 まあそっちは適当でいい。世の中にはもっと重要な事がある。

 休暇だよ、休暇!

 待ちに待ったハネムーンだよ!

 この塔なら邪魔も入らない。

 明日は砦で買い物して、家具を揃えよう。

 塔の内装もぼちぼちやって、家の周囲の壁や地下室も。

 やることは多いが、基本的に全部魔法で済ませればそれほど手間でもない。魔法バンザイである。


 まずは念入りに作ったお風呂である。シオリイの町の借家の倍くらいのサイズのを作った。五人で入っても楽々である。残念ながら今日はサティとティリカだけであるが、別に残念でもなかった。

 道中、一緒にお風呂がほぼ皆無だったのでずいぶんと久しぶりだ。

 

 いやー、楽しいね!

 ちょっと最近殺伐としすぎてた。道中ずっと狩りながら移動したり、メテオぶっ放したり。

 サティとティリカに全身を洗ってもらい、お返しに洗い返してあげる。


「お風呂はキモチイイな!」


「はい、マサル様」


 サティを抱っこしてゆっくりと湯船につかる。ティリカはサティが抱っこしている。三人で手足を伸ばしてはいってもゆったりである。

 これだよ、これ。こういうのが欲しかったんだよ!


 交代でお風呂に入ったあとは簡単に食事をして、日はまだ落ちてもいないが、サティとティリカを連れて寝室に直行である。

 今日はサティとティリカの日のようだ。四人で決めているらしいのだが、順番に回してるのかと思えば連続したり前後したりしてるしよくわからない。なんだかハーレムというより俺が四人にシェアされてるような気がしないでもないが、まあこれもきっとハーレムなんだろう。


 

 ティリカとサティとたっぷり遊んだ後、休んでいると来客が来た。来客っていってもアンとエリーしかいないわけだが、夜に邪魔しにくるのは珍しい。


「ちょっといいかしら。その……マサルに話があるんだけど……」


 扉をあけてやるとモジモジしながらエリーがそう言う。

 ああ、なるほど。空間魔法で覗いてたな? それで我慢できなくなっちゃったのか。


「汗かいたしお風呂入るよ。いっしょにどう?」


 だが、紳士な俺はやさしく受け止めるのである。

 満足してぐったりしているサティとティリカの了解を取ってからエリーとお風呂に向かう。

 二回戦スタートだ! 体力も時間もまだまだたっぷりある。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■  


 

 朝食を食べたあとは砦で買い物である。今日は開墾のほうは昼からでいいってことになっている。ある程度伐採を進めてもらってから一気にやったほうが効率がいい。


 砦へはフライでいける距離だった。そう何度も行くこともないから、ゲートポイントを作るまでもなさそうだ。


 砦に到着し、家具や食材を買い込んでいく。なかなかに商店が充実していて、安くていい物が揃う。

 この砦。砦とは名がついているが、実体は商業都市に近い。


 魔境が近いのだが、直接魔境と接する部分にはエルフの森があり、エルフが魔物を全て処理してくれる。そういう盟約があるのだ。盟約は相互防衛的なものなのだが、今のところは一方的に人間側が恩恵を受けている。まあ魔境に近いのはエルフ側なのでこれは仕方のないことなのだろう。

 もちろんエルフに防衛を任せているからといって、魔境に近いことは変わりないので相応の戦力は有している。

 だがそれより重要なのはエルフとの商取引である。エルフが作る霊薬やポーション、様々な工芸品はとても人気が高い。


「どうです? お嬢さん方。こちらの品は全部エルフお手製ですよ!」


 とあるお店で店員に見せてもらったケースには十点ほどのアクセサリーが並んでおり、素人目にも美しいものばかりだ。

 エルフの寿命は人間の数倍ある。当然職人も人間の数倍の年月、修行研鑽を積むのだ。創りだす工芸品はどれも素晴らしい物になるだろうことは想像に難くない。

 そして相応に値段も高い。みんなはちょっと物欲しそうにしていたが、手が出そうにない。


 エルフ自体も観光資源となっている。この国のエルフはほとんどがこの森で暮らし、滅多に外に出てこない。唯一の例外がこの砦である。エルフたちは時々お買い物や食事にでてくるそうなのだ。

 そのエルフを見ようと物好きが砦にやってきて、何日も滞在していく。


 だが今日のところはエルフの姿は見れないようだ。

 サティがせめてエルフの森を見たいというのでみんなで行くことにした。


 砦のエルフの森側を見に行くが、一般人は立ち入り禁止なので門は閉まっている。時々エルフがやってきたり、商人が品物を運ぶ時だけ開放するそうである。

 がっかりしていたら門の警備兵に声かけられた。森を見たいという人は多いそうで、普通に砦の上にのぼって見学くらいはできるそうだ。


 警備兵の人は他にも色々教えてくれた。

 エルフさんが来てもお触りはもちろん、話しかけるのも禁止。そっと遠くから見守るだけ。じろじろ見るのもいけません。そっと見るだけにしましょう。

 男女共に見目麗しく、いつまでも若々しいエルフさんたちである。ちょっかいを出す人間は後を絶たなかったそうだ。

 だいたいの場合はメイジで高い戦闘力を有するエルフさんに叩きのめされて終わりだが、時には実力者同士の戦闘に発展することもあり、俺たちのようにエルフの森を見に来た冒険者には注意喚起をしているそうである。

 トラブルが起こってエルフさんが砦に気軽に来れないようになりでもすれば、エルフ好きにとっては大変な損失である。絶対遵守するように約束させられた。警備兵さん、エルフ好きなのか……

 その他にも胸にコンプレックスがあるので、胸の大きい人間はなるべくエルフさんに姿を見られないようにすることや、木登りが得意な所、耳を舐めると甘い味がするというどこまでが本当か冗談かよくわからない噂まで。

 サティはエルフの話に大喜びだ。

 警備兵の人も暇なんだろうな。何せ門は滅多に開かないし、魔物も来ない。きっと俺たちみたいな観光客の相手も仕事の内なんだろう。

 

 警備兵さんのエルフ語りから解放されて、砦の城壁に登る。上にいるのは俺たちだけのようだ。

 ただの森だな。門からは道が伸びているが、どこまでも森が続くのみ。

 エルフの里まではずいぶんと距離があり、肉眼ではもちろん見えない。




 最初に気がついたのは俺だった。

 レベル5にあげてある魔力感知に反応があったのだ。エルフの森のほうからでかい魔力反応がこちらに向かってくる。

 続いてサティが気がついた。フライで人が飛んでくると。それもたくさん。

 これはエルフさんだろう。きっと集団で遊びにきたに違いない。実に運がいい。

 そう思ってわくわくして待ち構える。


 間もなくエルフが門の前に到着した。50人ほどもいるだろうか。さすがにエルフというべきか、この人数をフライで抱えて、しかもスピードもかなりなものだった。

 魔力感知で見ると、エルフたちから巨大な魔力が立ち上っているのを感じる。エルフってすごいんだな、なんて思っていたら、エルフの澄んだ声があたりに響き渡った。


「開門! 開門せよ! 魔境から魔物が侵入した! 戦に備えよ!!」


 メニューが勝手に開く。

 クエストが点滅している。


【クエスト エルフたちを助けよ!】

魔物の侵攻により、エルフの里が陥落しそうである。

エルフの里に急行し、これを助けよ!

報酬 パーティー全員にスキルポイント10

クエストを受けますか? YES/NO


 俺の楽しい休暇がなくなっていく……

次回 エルフの里防衛戦①






http://book1.adouzi.eu.org/n9609bu/

リレー小説「レイスの王」 

2話目の執筆を担当しました





CM 「ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた 」①巻

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さめだ小判先生による豪華挿絵!!

2万文字以上の加筆、新規オリジナルエピソード!!!

買って損は……たぶんない?

CM終わり。

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