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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第三章

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51話 防衛戦

「こ、これ……」


 眼下に広がるモンスターの群れ群れ群れ。一体何匹いるんだ?1万や2万じゃきかないだろう。明かりに照らされた部分全てにモンスターが蠢いてこちらを目指し進んでくる。


「ちょっとすごいわね。最初の以外じゃ今までで一番の数じゃないかしら」


 おれが呆然としていると、エリザベスがなんてこともないように言う。


 第一と第二城壁の間がぎっしりとモンスターで埋め尽くされている。第一城壁の一部は見るも無残に破壊されており、そこからも続々とモンスターが侵入している。既に多くのモンスターが城壁に取り付き、はしごをかけて登ろうと試みている。幸いにも空を飛ぶモンスターは少ない。きっと砦のほうの襲撃に参加しているんだろう。


 防衛側は奮戦しているが敵からも矢や魔法が時々飛んでくる。モンスターは倒しても倒しても減る様子はない。これはちょっとやばいんじゃないだろうか?怪我人の治療にまわるか?それよりも敵を減らすほうが……


 サティは既に城壁の壁から少し顔を出しながら、矢を射ち始めていた。アイテムから矢を出してサティの側においてやる。


 エリザベスも詠唱を始めていた。おお?いつもは声が小さくて聞き取れない呪文詠唱がすぐ横にいたからか聞き取れた。


「天地に吹き荒び流るる風よ

破壊を与え、時に再生を施す汝の力を我は招かん

求むるは暴れ斬り裂く疾風の渦、天高くまで伸びる螺旋を以て我が敵を打ち砕け

ウィンドストーム!!」


 竜巻が巻き起こり、モンスター達を吹き飛ばし切り刻んでいく。


 なんだ、格好いいじゃないか。恥ずかしがっていたからどんなのかと思えば。よし、おれもやるか。


【火嵐】詠唱開始――おれとエリザベスの前には数人の騎士団ががっちりと固めていて安心して詠唱ができる。


「ファイヤーストーム!!」


 敵の一番濃そうなところにぶち込んでやった。大量のモンスターが火に巻かれて倒れていく。レベルが2つあがった。あと1発で打ち止めか。土壁がなかったら撃ち放題だったのに。惜しいことをした。


「ちょっとずるくない?」


「ん?」


「これだけの火魔法を使えて回復魔法も空間魔法も。サンダーも使ったし。それに何よ、さっきの土魔法。もしかして水も初級以上使えるんじゃないでしょうね?」


「ええっと。水も中級クラスかなあ」


「町にいた頃は火と回復のみだったじゃない!どんなずる使ったのよ!教えなさいよ!」


 さすがに大きい声は出してないが、顔を近づけて詰問してくる。実際ずるして能力覚えたし、言い訳のしようもない。サティと一緒で天才ってことで押し通すか?


「ほら、そんな場合じゃないだろ?敵が……」


「まあいいわ。あとできっちり教えてもらうからね」


 どうするんだこれ?ここを生きて帰れてもピンチじゃね……


 しかしどうしようか。あと1発は撃ってもぶっ倒れないくらいには魔力残っているが、フライで逃げるくらいの魔力は温存しておいたほうがいいか?


 それに。実は大岩をこつこつと集めて99個にしてあるのだ。


「ちょっと見てもらえますか?」


 そう騎士団の人に言って、アイテムから岩を出して投下する。落下した結果は見ない。城壁から顔を出すのは怖いし。


「おお、すごいですな。今のも土魔法ですか?」


「空間魔法なんですよ。アイテムボックスに大岩を入れてありましてね」


 おれだとどこに投下していいかよくわからない。それを騎士団の人に指示してもらおうと思ったのだ。


「残り98発ですか。わかりました。指示を出します」


 よしよし。これで経験値を稼げるぞ。稼げるよな?投擲で倒すのと同じだし。まあいいか。経験値はともかく敵は倒さないと。


 騎士団の人の後ろを頭を下げてこそこそと付いて行く。フルアーマーいいな。おれも買ってアイテムボックスに入れておこうかな。いや、大盾があればいいのか。ギルドか騎士団に在庫がないか聞いてみるか。


 ここ、と指示されたところに大岩を投下していく。どうやら敵のはしごを狙っているらしい。たまに狙いが外れたのか少し位置をずらして2発目を投下したりする。30発ほど投下したところで砦の右端のほうまで来てしまった。レベルは1つ上がっている。


「一度降りて左翼側に行きましょう。走っても大丈夫ですか?」


「ええ、全力を出してもらっても構いませんよ」


 だが騎士団の人を甘く見てた。がしゃがしゃ音をさせながら、すごい勢いで走っていく。なんでフルアーマーなのにそんなに速いのよ!追いつくだけで必死である。砦の左端につく頃には息も絶え絶えだった。


「いや、魔法使い殿は足が速いですね。ついてこれるとは思いませんでしたよ」


「はぁはぁはぁ、よ、余裕っすよ、はぁはぁ。行きましょう。はぁはぁ。息が。切れてても。問題ありません」




 階段を登り城壁上に移動し、また岩を投下していく。中腰になって歩くのも結構きつい。


「そこをあけてくれ。魔法使い殿がはしごを破壊してくださる」


「頼む。いい加減きついのだ」


 熱湯や矢では敵は落とせてもはしごは破壊できない。投下用の丸太なども用意してあったが、とうの昔に底をついている。


「ここです。このあたり。なるべく城壁近くにお願いします」


 アイテムから大岩を選択し、指示された位置に投下する。位置は手の届く範囲から1mくらいなら調節できる。


「やったぞ!はしごがぶっ壊れた!」


「命中しました。次に行きましょう」


 順番にはしごを破壊していき中央の城門に到達する。ちょっと覗いてみると城門にも多くのモンスターが取り付いていた。


「門が破壊されたりはしないんですかね?」


「大丈夫です。門は一番頑丈ですから。攻城兵器なんかは魔法使い殿のお仲間に破壊してもらってますし」


 砦の下部もかなり頑丈にできており、オークごときじゃ傷も付けられないという。穴掘り対策も地下まで城壁基部が続いており、万一掘り進まれても地下を探知できる魔法使いがいて、事前にわかるのだそうだ。堀もあるのだが、既に機能していない。敵の死体で完全に埋まってしまっている。


 もう少し進むと投石器なんかも置いてあった。でも2台しかない。もっとあれば攻撃が楽になるんじゃないだろうか。そう聞いてみたらほとんどが第一に置いてあり、第二にあった分も襲撃で真っ先に狙われて破壊されたという。


 さらに進むと、おれが修復した城壁に来た。どうやらちゃんと機能しているようだ。


「魔法使い殿が直した部分、なかなか頑丈にできてますね」


「うーん。でも元がただの土壁ですからね。硬化が切れたらまたかけ直すか、何か考えないと」


「硬化なら使えるものが何人かいるはずです。上に知らせておきます」


 それなら大丈夫か。でも切れる頃にまた様子を見に来ないとな。


「もし切れたら教えて下さい。普段は神殿にいますから」


「魔法使い殿も神殿の関係者で?」


「冒険者ギルドから治癒術士として派遣されてます。今日はこんなことになったんで騎士団についてきたんです」


「そういえばお名前もまだ伺ってませんでしたね。わたしは神殿騎士団青竜隊副隊長のモルテンです」


「冒険者のマサルです」と、今更ながらの握手をかわす。


「あ、ここらあたりでお願いします」


 モルテンさんが指さしたあたりに大岩を投下。


「……命中です。しかし多才ですね。火魔法に土魔法に空間魔法。特にこんな空間魔法の使い方は初めて見ました」


「あー、おれの空間魔法はちょっと特殊なんで。できればあまり広めないでくれると」


 こちらの空間魔法は重量で制限がかかるらしい。こんな大岩を何個もいれるなんて普通はやらないんだろう。


「なるほど。魔法使いの秘技というやつですね。わかりました」




 順調にはしごを破壊していき、サティとエリザベスのいる場所に戻る。


「80使いましたね。あと18個です」


「ふむ。温存して……いや、どこかで弾を補充すれば……しかしこれくらいの大岩となると砦の外にでないと」


 とりあえずモルテンさんは置いておいてサティとエリザベスに声をかける。


「どんな感じ?」


「矢がなくなりそうです」


「敵は全然減らないわね。でもマサルがはしごを潰して回ってるから上まであがってくるのは減ったみたいよ」


 サティに矢を出してやる。


「これで手持ちの矢は最後だ。軍曹どのに頼んで補充しないとな」


 サティのレベルをみるとまた1つあがってる。ポイントは16Pか。おれのはさらに1つあがって46P。

 


スキル 16P


頑丈 鷹の目 心眼 肉体強化Lv3

料理Lv2 家事Lv2 裁縫Lv2

隠密Lv3 忍び足Lv2 聴覚探知Lv4 嗅覚探知Lv3

剣術Lv5 弓術Lv5 回避Lv3 盾Lv2



 とりあえず回避をレベル4に振って残り12P。あとはちょっと保留しておこう。次はおれのだ。



スキル 46P


スキルリセット ラズグラドワールド標準語 時計 

体力回復強化 根性 肉体強化Lv2 料理Lv2

隠密Lv3 忍び足Lv2 気配察知Lv4

盾Lv3 回避Lv3 格闘術Lv1 

弓術Lv3 投擲術Lv2 剣術Lv4

魔力感知Lv1 高速詠唱Lv5 魔力増強Lv3 MP回復力アップLv3

コモン魔法 生活魔法 回復魔法Lv4

火魔法Lv4 水魔法Lv3 風魔法Lv3 土魔法Lv4



 とにかくMPが足りない。魔力増強とMP回復力アップを5にして18Pで、MP消費量減少を5まであげて24P。合計42Pか。消費MPが半分になればあと2発は火嵐が撃てるな。これで2つくらいはまたあがるだろう。一気にポイントを振る。残り4P。


 最後のMPポーションを使い、濃縮マギ茶も一口飲む。エリザベスはと見るとまた壁際に座ってプリンを食べていた。


「魔力切れちゃったの?」


「あと1発くらいね。マサルは?」


「あと2発かな」


 壁からこっそりと顔だし、モンスターが多そうな部分に当たりをつける。【火嵐】詠唱開始――発動!


 「ファイヤーストーム!!」


 大量のモンスターが荒れ狂う炎の柱に巻かれ焼きつくされていく。2つレベルがあがった。あと2発は撃てるな。1発分は温存しておこう。もう一発。【火嵐】――発動!さらにレベルが1つあがる。


 これで34Pか。もう一発撃つか?ふと横を見るとエリザベスもおれの火魔法が発動するのをじっと見ていた。


「火魔法もこういう時にはいいわね」


「森じゃ全然使い道がなかったけどね。このあとどうする?もう魔力もないし、サティの矢も切れそうだ」


「そうね。そろそろ夜も明けそうだし、明るくなったらあたりの様子を見て考えましょう」


 夜明けは近いはずだがまだ空は闇が濃い。しかし城壁はライトの魔法とかがり火がたかれある程度明るく照らされている。


「お弁当食べようか。サティ!休憩にしよう」


 ふとモルテンさんと目があう。


「すいません。魔力が切れたらすることがないもので……」


「いえいえ、わかっておりますよ。ここは我らに任せてゆっくりしておいてください」


 サティとエリザベスにも弁当を渡して、マギ茶の水筒も出す。弁当も残り少ないな。もうちょっと買っておくんだったか。神殿の厨房に頼んで何か作ってもらおうか。食材はあることだし。


「それで?どうやってこんなに短期間で魔法を覚えられたの?」


「うん。思うんだが。おれは天才なんじゃないかと」


「ふざけてるのかしら?」


「いやいや、大まじめに。なんかこう、ふっとした拍子に魔法を覚えたりするんだよね」


「そんなんじゃよくわからないわよ。もっと詳しく!」


「そういえば、さっきの呪文詠唱。格好良かったね?天地に吹き荒び流るる風よ~だっけ。恥ずかしいっていうからどんなのかと思ったら」


「あ、あんた聞いてたの!?」


「うん、普通の声で言ってたから全部聞こえたよ。ああいうのって教えてもらうの?」


「……のよ」


「え?」


「自分で作るのよ!」


「まじで?でも悪くないじゃないか」


「私のはね。比較的大丈夫なの。でも他の人のはちょっと……」


「なんでそんなに嫌がってるのに使ってるんだよ」


「そういう風に習ったから詠唱がないと集中がしにくいのよ」


「別に大丈夫だと思うけどな」


「私の師匠の世代でね、呪文詠唱派がすごく増えたことがあるのよ。私の師匠の師匠に当たるくらいの人かしら。すごく高名な魔法使いでね。みんな真似したのよ。でもオリジナルの詠唱なんてそんなに考えられないじゃない?だから酷いのもいっぱいあってね。それが魔法使い以外に馬鹿にされて一気にすたれたの……それ以来、詠唱は恥ずかしいって風潮になっちゃって」


「ふうん」


「私がそれを知ったのは冒険者になったあとよ。あの時はすごく恥ずかしかったわ……」


「風の他にどんなのがあるの?聞かせてよ」


「ぜっっったいに嫌よ!!!」


 そんなに嫌がらなくてもいいのに。どんなトラウマがあったんだろうな。


「ほら。夜明けよ……」


 あ、話をそらした。まあおれも露骨に話をそらしたわけだが。相変わらずエリザベスはちょろい。


「サティ、街の様子は見えるか?」


 矢が飛んでこない階段のあたりまで下がって街の様子をうかがう。


「飛んでいるのは見えません」


「どう思う?」


「そうね。待ってればあっちから防衛の応援に来るんじゃないかしら。もう少し待ってみましょう」


 残りの岩も放出しとくか。またレベルがあがるかもしれないし。魔力は怪我人が出ただろうし温存しておこう。


「じゃあもうちょっと、はしご潰しをやってくる」


「わかったわ。サティ、ここで待ってましょう」


「はい」


 モルテンさんを捕まえると再びはしご潰しにかかる。二周目ともなると防衛部隊も、ここだここだと誘導してくれる。30分もかからずに大岩を使い果たし、レベルはあがらなかった。


「岩もなくなったし、魔力も少ないのでそろそろ神殿に戻ろうと思うのですが」


「でしたら護衛を付けましょう」


 MPは残っているが気だるい。魔力の使い過ぎか、寝不足か。どっちにしろ休息が欲しい。矢がびゅんびゅん飛んでくる城壁にいると気が休まらないのだ。


 大岩の投下を終え、サティとエリザベスのところに戻ると軍曹どのがやってきていた。


「マサル、魔力は残っているか?治療院に怪我人が多い」


 やっぱりか……しかし、ここで防衛に参加したのは意義があった。スキルを取って大幅にパワーアップできた。時間あたりのMP回復量は200を超えている。


「大丈夫です。余裕をもってやってます。急いで戻ります」


「頼んだぞ」


「マサル様、私は残ろうと思うのですが」


「そうだな。軍曹どのと一緒なら問題ないだろう。軍曹どの、砦のほうはどうなってますか?」


「もう敵は殲滅できたはずだ」


「そうですか。サティ、腹が減ったらこれを食え」と、弁当を2個渡す。


「ありがとうございます、マサル様」


「気をつけるんだぞ。では軍曹どの、サティをお願いします。行こう、エリザベス」


 モルテンさんに護衛されて神殿に戻るとホールは沢山の怪我人でごった返していた。


 エリアヒール分の魔力は戻った。部屋に戻って、神官服と仮面を用意してステータスをチェックする。砦に来る前、1000程度だったMPはレベルアップと魔力増強で5000を超えていた。でもちょっとこれは上がりすぎだろう……





山野マサル ヒューマン 魔法剣士


【称号】ドラゴンスレイヤー

     野ウサギハンター

    野ウサギと死闘を繰り広げた男


ギルドランクD

レベル18


HP 804/402+402

MP 491/1199+4196


力 71+71

体力 74+74

敏捷 50

器用 66

魔力 135



スキル 34P


スキルリセット ラズグラドワールド標準語 時計 

体力回復強化 根性 肉体強化Lv2 料理Lv2

隠密Lv3 忍び足Lv2 気配察知Lv4

盾Lv3 回避Lv3 格闘術Lv1 

弓術Lv3 投擲術Lv2 剣術Lv4

魔力感知Lv1 高速詠唱Lv5 魔力増強Lv5 MP回復力アップLv5

MP消費量減少Lv5 コモン魔法 生活魔法 回復魔法Lv4

火魔法Lv4 水魔法Lv3 風魔法Lv3 土魔法Lv4


エリザベスが指輪を見て考え込んでる。

「貰ったって言ってたわね。どこから手に入れたの?」

野うさぎ狩って神様にもらった。そんなことはもちろん言えない。勇者の物語では、勇者だとばれた勇者の末路は魔王との命をかけた死闘。そんなのはまっぴらごめんだ。


次回、明日公開予定

52話 エリザベスと魔力の指輪


誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。

ご意見ご感想なども大歓迎です。


スキル取得のポイントについて

剣術など 5>2>3>4>10p

魔法 5>2>3>4>20p

強化系 5>2>3>4>5p

鷹の目など5p

魔法レベル5の取得が少々お高く設定

なのでなかなか取れなかった

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>という表記が意味不明だった レベル1を取得するのに5ポイント、2になるのに2ポイント、という事だね
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