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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第三章

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42話 神々の使徒

 突然司祭様に部屋に呼ばれた。改まって何か話があるという。


「座ってください、シスターアンジェラ」


「はい。それで何のお話でしょうか、司祭様」


「マサル殿のことです」


「はい」


 最近ちょっとマサルのとこに入り浸りすぎたか?司祭様に怒られるかな・・・


「マサル殿は最近どんな様子ですかな?」


 どうやら怒られるという感じじゃない。ちょっと安心して最近のことを色々話す。


「なるほどなるほど。仲良くやっているようですね」


 なんだろう?そんな話なら治療の空き時間にでも聞けばいくらでも答えるのに。こちらの疑問が顔に出たのだろう。


「話はここからです。今から話すことは内密にお願いしますよ」


「はい、司祭様」


「使徒という存在を知ってますか?」


「使徒……勇者様が使徒なんですよね?」


 いきなり話が飛んだな。司祭様の意図がよくわからない。


「そうです。ですがそれ以外にも使徒は存在しました。諸神は時折こっそりとご自分の使徒を、我々を助けたり、見守ったりするために遣わすことがあるのです」


 初めて聞く話だ。神殿の上層部のみに伝わるような話なんだろうか。


「それでマサル殿のことなんですが」


 またマサルの話?使徒の話はどこへ?


「使徒かもしれません」


「えええ!?」


「声が大きいですよ」


「す、すいません」


 マサルが使徒?


「今の段階では可能性があるという程度です。ただ、使徒は高い能力、変わった力や特殊な知識を持っていることが多いそうです。心あたりがありませんか?」


 そういえば魔法の上達ぶりはちょっと異常だし、見たことのない料理を知ってたりする。


「それに少々こちらの知識に疎いところがありますよね。勇者様などは異世界から召喚されたと伝わっています」


「ではマサルに聞いて・・・」


「いえいえ、待ってください。まだ可能性があるというだけですし、使徒など滅多に遣わされることはありませんから、可能性は極わずかだと思います。私もあまり本気でそんなことを考えてるわけでもありませんし。それに本当に使徒だとしても隠してるのなら、何かしらの理由があるはずです。しばらくは見守っていてください」


「はい、司祭様」


「ですがもし彼が使徒であったら、陰となり日向となり全力で支援をしなければなりません。それこそが我が諸神の神殿の役目なのですから」


「はい」


「まあ普通の人だったとしても、彼はいい青年ですし、魔力も高い。縁を作っておくのは悪くないでしょう。アンジェラ。彼とは仲良くしておきなさい。好意は持っているのでしょう?」


「あ、あの・・・好意っていうか・・・」


「いいんですよ。アンジェラも恋の一つもしておいたほうがよろしいのです。こちらの業務は負担にならないようにしますから、なるべく彼の様子を見ておいてください。ですがあくまでも使徒と疑っていることをばれないように、普通に接してください」


「はい、司祭様」


「神殿公認ですから、好きなだけ仲良くなってもいいですよ。もしそれでマサル殿が神殿入りをしてくれるなら大変結構なことだと思います」


「は、はい」


「ああ、勧誘などはしないでくださいね。彼が自発的にというなら大歓迎ですが」


「わかりました」


「ではお話は終わりです」


「あ、あの。司祭様。このことは上のほうには……」


「もちろん知らせていません。こんなことを報告しようものならひどい騒ぎになりますよ。あくまでも可能性が極わずかにあるという程度なのです。アンジェラもこのことは神殿の他の人間にも言わないように」


「はい、司祭様」


 以前マサルがやった神殿ホールでの無料治療。あれが少し噂になって治療をした人物に関して問い合わせが来たりしているのだ。もちろんそれには知らぬ存ぜぬで通している。その上、使徒の可能性があるということになったら、司祭様の言うとおりひどい騒ぎになるだろう。


 それにしてもマサルが使徒?全然そんな風には見えない。それに可能性は極わずかとおっしゃってたし、きっと司祭様の勘違いだろう。でも神殿公認で堂々とマサルのところにいけるのはとてもいい。司祭様も仲良くしろって言ってたし、今日も早めに様子を見にいってみようか。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 午後からマサルのところに遊びに行くと何か料理を作っていた。


「アンジェラ。いまラーメン作ってるんだ」


「ああ、この前の。あれは美味しかったね」


 変な響きの名前の料理だけど、味はともかくスープにパスタをいれる料理とかは普通にある。


 マサルはサティにあれこれ指示をするとこっちに来て座った。


「今日は早いね。どうしたの?」


「うん。孤児院のほうが最近は手がかからなくてね。今日も泊まっていってもいい?」


 そう聞くとマサルがすごく嬉しそうな顔をしていいよって言ってくれた。


 これが使徒?ただのエッチな男の子じゃない。嬉しそうな顔にはちょっときゅんと来たけど。やっぱり司祭様の勘違いだろう。それに使徒だったりしたらもうこんな風に会えなくなる?ありそうだ。私みたいな下っ端神官は近寄れもしないかもしれない。


 そしてこんな料理も食べられなくなるかも。そんなのだめだ。使徒疑惑はしばらく放置しよう。どうせ違うんだし。変わったところはあるけど、普通の人。それでいい。司祭様も普通に接しろって言ってたし。ティリカに協力してもらえばたぶん本当のことはわかるだろう。だけどもし本当にマサルが使徒で、それを隠してるのなら暴いちゃいけない。




 夕方、サティとティリカをまじえて夕食の準備をする。といっても今日はラーメンがあるので上にのせる具を作るくらいだ。サティは物覚えがよく手際もいい。ティリカはじっくりと確実にやるタイプだ。どちらもいい生徒である。そろそろ教えるのも卒業かもしれない。そしたらどんな口実でここに来ればいいのか?もうしばらくは教える振りでもしておこうか……ちょっとサティに相談してみよう。サティにはマサルのことで色々と話す。マサルとのことも協力してくれてとてもいい子だ。奴隷なのを気にして遠慮してるみたいだけど、マサルはベタ惚れだし、私もこの子は大好きだ。このままずっと3人で、いやティリカもいれて4人か。エリーは……いないからまあいいか。でもこんなことになって怒るかな。抜け駆けするなってちらりと言われたんだよね。でもこうなっちゃったんだし仕方ない。孤児院で育った私には初めての家庭のようなところだ。居心地がいい。マサルと家族に……そうなったらエリーも入れてやらないでもない。




 お風呂ではサティに洗ってもらうのが癖になった。孤児院じゃ自分でなんでもできるようにって小さい子供以外は洗ってもらったりはしない。さすがに全身は初日以来やってもらってはないが、気持ちいい。マサルは毎日やってもらってるみたいだ。これはしっかりと聞いておかないといけないかもしれない。いや、それよりも一緒にお風呂に……一緒に……無理だ。恥ずかしい。


 ティリカと一緒にお風呂からあがるとマサルが嬉しそうに、いそいそとお風呂に入っていった。やはりこれは本人に聞いて確かめないと。


 お風呂からあがってソファーでゆっくりとくつろぐ。ちょっと胸を押し付けるとすごくだらしない顔をする。やっぱりこんなのが使徒だとか勇者だとかは間違いだ。司祭様にはそう言っておこう。いや、黙っていたほうがこっちに来る口実になるかな。




 行為を終えた後、マサルの故郷について聞いた。学校に通ったりして裕福な家庭だったみたいだけどすごく普通だ。特に変なところもない。お返しに自分の話もした。孤児だった話は司祭様達は知っているが、他の誰にもほとんどしたことがない。でもマサルにはちゃんと聞いて貰いたい、そう思ったんだ。


 話している途中でマサルがぴくっとして視線を泳がせた。


「どうしたの?」と、聞くと胸を触ってきた。話の途中なのに。エッチなんだから、もう。


「……もう1回する?」




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 アンジェラが故郷の話を聞いてきたのでうまくごまかしながら話をする。話すところを間違えなければ案外異世界だとかはわからないものだ。


 そしてアンジェラの身の上話も聞いていると突然メニューが開いて、びくっとしてしまった。アンジェラがどうしたのと聞いてくる。ごまかそうと思ってとっさに胸を掴んでしまった。だって目の前にあるんだもの。


「……もう1回する?」


 致しましょう!メニューのことは後で考えよう……




 ちなみにだが、避妊はちゃんとやっている。粉状の薬があって、茶さじ一杯お湯に溶かして飲めば1週間くらい妊娠は絶対しないそうである。副作用も全くない安全な薬らしい。女性冒険者必須の品で普通にポーションとか売っている店で置いてある。兵士や冒険者やってるのに妊娠したら困るからね。さすが異世界。変なところで便利である。




 終わったあと、アンジェラが寝たのでメニューを確認する。レベル4、神官。ステータスはやっぱり魔力が高いしMPもそこそこあるな。スキルは家事系に水魔法に回復魔法、棍棒術。スキルポイントは20。そして忠誠心が50。やはり忠誠心か。おそらく50を超えるとメニューが開けるようになると。


 しかしこれはどうしたもんか?サティみたいにパーティーにいれるわけでもないし。水とか回復魔法をこっそりあげちゃう?うーん。やっぱりだめだな。サティも気がついたんだ。1個でもレベルを上げると変化がすごい。アンジェラが気が付かないとは限らない。スキルに関しては保留しておこう。


 でも忠誠心っておれが好かれてるってことだよな。すごく嬉しい。世界の破滅なんか忘れてずっとこうしていられればいいのに。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 平穏な日々は続いた。森の攻略は順調に進み、おれは1レベルアップ。サティはさらに3つレベルがあがった。おれがレベル11でサティがレベル10だ。サティのスキルはこんな感じになった。


スキル 1P


頑丈 鷹の目 肉体強化Lv1

料理Lv2 家事Lv2 裁縫Lv2

隠密Lv3 忍び足Lv2 聴覚探知Lv4 嗅覚探知Lv3

剣術Lv4 弓術Lv5 回避Lv3 盾Lv2


 隠密、嗅覚探知、回避を3に。剣術も4にした。そして肉体強化を取っておいた。これで遠距離でも接近戦でもそうそう遅れを取ることはないだろう。訓練場でも負けなしになってきて、さらに目立つようになったのはまあ仕方がない……




 前回使ってから30日すぎ、スキルリセットも復活したので前から考えていたことも試した。


 ポイントを使用しないで覚えた、槍と弓をリセットしてみたんだ。ポイントはその分ちゃんと増えた。だけどそのあと槍と弓を使おうとして愕然とする。使い方を全く覚えてない。リセットしたから忘れたんだ……いらないスキルで試してよかった。料理法とか忘れちゃったら酷いことになるところだった。それともレシピの類は覚えていられただろうか?危険すぎて試せない。今後リセットするスキルは慎重に選ばないとダメだろう。


 とりあえずリセットの仕様は危険過ぎると日誌に書いておいた。すると珍しく返信が来た。リセットはおれだけの特殊スキルだし、多少の不具合は容認して欲しい。またリセットで忘れた知識はスキルを再取得することで思い出すはずだ、多分と。


 多分かよ!やっぱり危険すぎて試せない。そんなにうまい話はないってことだな。地道にやっていくしかない。とりあえず槍はいいとして弓は使いたかったので槍の分のポイントもつぎ込んでレベル3にしておいた。ポイントは10残っていたけどちょっと保留だ。当分スキルリセットは使えないし、何かのときのために残しておきたい。


 ちなみにリセットはサティのスキルには使えなかった。




 そしてエリザベスが出立して1ヶ月も過ぎ、冬も近くなり少し肌寒くなってきた頃、その何かは起こった――

「聞け!冒険者の諸君!先ほど、転移術士より急報が入った。現在、ゴルバス砦はモンスターの大集団に包囲されており、我々はこれの救援にあたる。これは緊急依頼である!」

ゴルバス砦!?それってエリザベスが……


次回、明日公開予定

43話 ゴルバス砦の危機


誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。

ご意見ご感想なども大歓迎です。






司祭様が怪しいと思ったのは魔王だの世界の破滅だの聞きに行ったあたりでしょうね

でもあくまで可能性。司祭様もたぶん違うだろうとは思ってるはずです

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[良い点] 今回の話でifルートの神殿飼い殺しエンドを思い出した。あの時、20年経って元の世界には帰らないと言っていたんだよな。しかし、現時点では帰りたいと考えている(らしい。唐突に思えたが)。外堀を…
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