表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第十六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

335/351

334話 ヒラギスでの治水と資金調達

 ミズホ攻略作戦までに少し暇ができたのでヒラギス南方の大きな河川の治水をやっている。ティリカが陸王亀で地ならしをし、俺がそこに堤防用の土をアイテムボックスで運び、増えた土魔法使いたちが堤防を固める。帝王陛下に依頼のあったライナス川流域に始まり、ブランザ領でも何度もやったので連携もスムーズで、みるみるうちに作業が進んでいく。

 

 堤防ができれば次は森林だったり湿地帯だった地域を整備して農地に変える。あるいは水路を引いて既存の農地を拡大する。俺たちの力をもってすればこれも実に簡単なことだ。しかしそれで食料が湧き出るかというと、もちろん全くそんなことはない。


 なにもない場所からだと農業経験者が絶対に必要だし、そして広い農地にはかなりの数の人手が必要だ。すべてが人力、手作業なのだ。農業は手間暇のかかる厳しい労働だ。

 そのうえ農地もなかったような辺境だと魔物も出るから自衛能力まで求められる。魔物が襲ってくれば一番の働き手が戦い、簡単に命を散らす。さらに日照りや大雨であっさりと農地はダメになり、食糧不足からの餓死が世界のどこかで毎年のように発生する。衛生環境にまで気を配る余裕はないから、疫病もちょくちょく蔓延する。これで文明が維持できていたのが不思議なくらいだと、何度目かの思いを新たにする。


 いま何が問題なのかというと、ヒラギスで新しい農地を開拓しても、そこで食料を生産してくれる人手が足りないことである。ヒラギスは魔物に蹂躙され、人口を大きく減らした。人が減って余った農地を荒れた状態から元に戻すだけで手一杯だったのだ。それでも格安で農地が手に入るとなれば希望者は居るのだが、全然足りていない。まっとうに人口が増えるのを待っていては一〇年二〇年かかる。


「しかし本当に無償で良かったんすか?」


 現場責任者として来ているウィルがそう言って渋い顔だ。国境沿いの作業となるので、トラブルがあった時にウィルが直接調整するためだ。ヒラギス王配で帝国の王子であるウィルが出向くと、何か言いに来た者もすぐに大人しくなる。


 問題の足りない人員は他から連れて来る他はない。帝国と王国も新規開拓地があるからダメだし、ブランザ領も人手は足りない。そうなると東方国家群から引き抜くことになるのだが、他国で好き勝手に募集するわけにもいかない。ウィルが出向いて交渉したのだが人を送る交換条件がグランコート王国側の治水で、元から格安で引き受ける予定だったのだが、これがなんと、驚きの無償である。


「交渉が長引いても面倒だろ。気にするな」


 思いつきの行動で交渉期間が短かったし、隣国での食料生産が増えれば地域の安定にも繋がる。どこの国でも国力が向上してくれることは俺へのメリットだ。お金よりもそちらが目的まである。グランコートは儲けたとでも思って喜んで食料を増産するだろう。この世界全体の食料生産を増やす。もちろんヒラギスの国力も増やす。


 どこもかしこも人手不足である。シンプルに人を連れてくる以外の方法もあるにはあるが、未だ開発中だ。エンジン、それもガソリン駆動のエンジンさえ完成すれば、開墾から種まき、収穫、そして輸送まですべてを効率化できるのだ。


「とにかく俺はやれることをやるだけから、後のことはうまいことやってくれ」


 焦ってもエンジンの開発が早まるわけでもない。頭が痛いのがミズホである。王国の食料生産の三割を担うことができると試算されている広大な領地だ。貧民街や職にあぶれた者を連れて来るにも限界がある。作った農地が埋まるかどうか。帝国の新規開拓地も人の募集には苦労している様子だ。これまでに作った農地が埋まれば、追加で開拓をするという話もしているのだが、その予定は当面なさそうだ。

 俺の発言にウィルが乾いた笑いをあげる。治水が簡単に進むだけに、あとの作業、人を集めて生活基盤を用意し、農業を立ち上げるまでの苦労は大変なものなのだ。ウィルはすぐに真面目な顔をして聞いてくる。


「人集めのうまい方法が何かないすかねえ」


 人は余ってないにせよかなり存在するのだ。村一つ分くらいならすぐ集まる。しかし五〇〇人一〇〇〇人となると難しくなる。独裁国家の権力で強制移住というのもできなくもないが、それは最終手段だ。

 グランコートでの募集はこれからだから、もしかすると応募殺到となる可能性もあり得なくもないが、何か対策をしなければ俺たちが拡張した農地は半分以上が確実に余ることになりそうだ。


 都市部の人間は農業に馴染みがない。できれば農村出身者がいいのだが、新規開拓がどれほどの苦労か、なんなら命までかけることになることもわかっている。自分の農地を持たず貧乏をしていても、死ぬリスクを考えると二の足を踏む。さらにヒラギスは他国で、魔物に一度滅ぼされてボロボロになった国だ。

 村や領主レベルだと人口が減ることも警戒される。人の数が生産力、税収にも防衛力にも直結するからだ。だから五年間の税の優遇や、初年度の食料の保証で釣るのだが、それでも思ったほどに集まらない。どうにかしてやりたいがこれ以上は俺ではどうしようもない。


 橋や道の整備も入念に、並行して行っている。対岸のグランコート王国側から移住でもあればと期待したが、対岸もやっぱり荒れ地である。元から人は居ない。とはいえ人の往来があれば住もうと考える人は増えるかもしれない。


「いっそ支度金でも出すか?」


 開拓済みの農地、住居、食料の保障でも人が来なければ、あとは金を出すしかない。


「貰うだけ貰ってさっさと逃げるんじゃないすかね……」


 ヒラギス外に逃げられたら追うのも難しいし、そんな手間もかけられない。


「月給制にしよう。一年間、毎月お金と食料を支給するんだ」


「それなら逃げられても被害は少ないし、怠けたら支給を切ればいいっすね」


「いや。一年はとにかく払うんだ。最初から金や食料目当てで働く気がなさそうなのは排除すればいいけど、一旦受け入れたら一年間は面倒を見る。いちいち仕事ぶりの確認なんて面倒だろう?」


「現地の村長にやらせればいいんじゃないですか?」


「村長も開拓者なんだ。あまり負担はかけたくない。資金や食料は足りなきゃ俺のほうからも援助するから」


「エルフからの援助がまだ残っているから大丈夫だと思うっすけど……支度金は月なら銀貨一枚てとこですかね?」


「少なすぎないか? 銀貨五枚くらいは?」


 銀貨一枚でだいたい一万円くらい。月五万円なら適正だと思うのだが。


「それは出し過ぎっすよ。銀貨一枚だって本来なら貰えないし、家や食料まで用意するんですから」


 それもそうだがと、結局銀貨二枚に話し合って落ち着いた。


「子供や老人はどうします?」


「手伝いができるくらいの子供は半分だな。手伝いもできない幼児は四分の一だ。老人は働けるなら一人分。無理でも半分出そう。ただし子供や老人は家族単位……それか一人分で働ける、農地を維持できる者が面倒を見ることが条件だな」


 これで家族単位での移住を考える者が出るはずだ。ヤマノス村は独り身が多くて、結婚相手をこっちで探したりの面倒があった。


「それはまあ当然っすね」


「子供でも農地を一人で維持できるくらい働けるなら一人分出してもいい。それで支出は確かに増えるが、一年間限定だ」


「一年やって無理だって帰っちゃったら?」


「放っておけ。むしろ二年目、戻った者に話を聞いたやつらで希望者は増えるぞ」


 この政策の肝は二年目である。農業は自然相手のことだ。地質がどうしても作物を育てるのに適さなかったり、天候で作物が壊滅したり。未経験者の単なる失敗で収穫ができないかもしれない。それでも一年間の保障はあるのだ。そこに信用が発生するし、成功した農地があれば後からの参入はし易い。

 しかし失敗したらどうするかな。二年目もやる気があるようなら食料保障を継続するのもありか?


「最初はお金目当てでも、住んで収穫もできれば土地に愛着が湧きますよ」


 そう話を聞いていたサティも言う。それに食い詰めてやってくるなら必死にならざるを得ない。戻る場所なんてないんだから。


「そういうことだな。それにもう一つ利点がある。村人に金があるから商人が来る。それで五年間は無税だろ?」


 厳密に言えば国庫に収めなくていいだけで、領主は収穫があれば税は取る。商人からも税は取れる。


「二年目でトントン。三年目四年目くらいには収入が出るんじゃないか?」


 収穫次第になるが、川沿いというのは土が栄養豊富なのが相場だ。水にも困らないし、人さえいれば収穫に関してはさほどの心配もないはずだ。

 それでも慮外者は紛れ込むだろうが、枯れ木も森の賑わいだ。見かけ上でも人が多ければ、上手く行っているように見える。


「とりあえずここで試してみて、問題がなさそうならミズホでもやってみよう」


 支給は月に銀貨二枚。子供なら一枚。夫婦で子供二人なら銀貨五枚か六枚となる。ここに別途食料の支給もあるし、農夫の収入としてはなかなかのものだ。

 一〇〇〇人なら銀貨二〇〇〇枚。日本円で二〇〇〇万円。年額にすると二億四〇〇〇万円。一万人なら二四億円。一年だけのことだしまあいけるか?

 収入はそれなりにあるが、借金返済と奴隷解放の資金、それからミズホの準備で手持ちがないどころか、相変わらず借金すらしている状態である。

 やっぱり銀貨二枚は多すぎる。一枚にしようというウィルの意見を受け入れるべきだったかもしれない。しかし人が来なければ話にならないのだ。

 まあヒラギスで効果をまずは試すし、ミズホでやるならみんなと相談してからだな。ミズホへの移住者の想定は多めに見積もって五〇〇〇人。まさか二万人とか三万人も来ないだろう。


 治水作業は午前中のみで、三日、四日と順調に堤防工事は続き、ヒラギス国境部分は終わり、グランコート王国へ。そして見物人が多い。俺たちが作業をしている川沿いに街道が走っていて、近くにも町がある。

 ティリカの使役する巨大な召喚獣が地ならしをし、土魔法で堤防がみるみるうちに伸びていくのをぽかんと口を開けて多くの人が眺めている。珍しいどころか普通は一生お目にかかることのできない見世物だろう。


「偉そうなのも来てるな」


「ここの領主かもしれないっすね」


 騎馬を引き連れた一団が見晴らしの良さげな場所に陣取ってこちらを見ている。時間があれば追加で交渉の余地もあったのだろうが、ミズホ前に疲れは完全に抜いておきたい。グランコート側で農地は作らない。ヒラギス側だけだ。すでに面倒なことを言ってきているから、あまり関わりを持ちたくないのだ。

 魔力開発に何人かねじ込めないかって、確かに俺ならどうにでもなるけど前例は作りたくない。窓口はあくまで帝都の神殿だ。


「みんなも今日の分は終わったみたいだな。さっさと戻ろう」


 魔力開発法もなかなか難航している。繊細な魔力操作が必要で使い手が思ったより確保できていないのだ。一年か、せめて半年や数カ月の修練が必要だ。エルフは才能のありそうな者にたっぷりと時間をかけて習得させる。錬金術の習得も進めているし、空間魔法の鍛錬を続けている者もいる。もちろん魔力開発法の使い手も増やそうとしているが、これもすぐには期待できない。

 魔法に関してエルフが時間をかけるようなことである。人間でもよっぽど才能のある者でもなければ簡単に習得には至らない。ある程度わかっていたが、使い手の増えるペースは遅い。そして熟練した魔法使いというのは神殿でも重要な人物が多い。そこを安易に引き抜くと通常業務に支障が出てしまう。魔力開発法で神殿所属の魔法使い、治癒術師は増やせるが、戦力になるまで育てるには時間もかかる。


 魔力開発を受けたい希望者は想定より殺到していて神殿は大変だそうだ。無理だと断ってもなお数カ月待ちが発生していて、神殿からも俺になんとかしてくれと言ってくるがどうしようもない。

 いや、あるか? ちょっと相談してみるか。


「魔力開発を受けたい希望者も、中には普通に魔法を習得できる者も混じっているはずだ」


「それはそうじゃろうの」


 昼食で集まった時にそう話してみると、リリアがそう同意して頷く。


「順番待ちをしている者はまずは普通に魔法学校に放り込む。そこで半年なり一年なり魔法の習得訓練をして、ダメだったら魔力開発法を試すんだ」


 すでに試してダメだったのなら除外してもいいが、魔力開発法を希望する者には最低限、訓練は受けてもらう。それが筋というものだろう。


「それなら魔力操作を覚えた後の座学も省略できそうじゃな」


 どっちみち魔法が使えるようになった後は魔法学校とかで使用方法を学習、訓練をしなければならない。実際今も魔法学校とは提携して、魔法が使えるようになった者の訓練をしてもらっているようだ。多忙を極める神殿でそこまでの面倒は見きれないからだ。


 食後、リリアたちと帝都の大神殿へと転移する。俺たち専用の転移室はまだ維持されていた。ぞろぞろと移動するとすぐにフローレンス神殿長が飛んできた。


「エルフの応援を連れて来てくれたのですか!?」


「それは諦めてくれ」


 エルフのほうでも使い手を増やす努力はしているが、他にも重要な案件が多すぎて、回せる人員は少ない。

 神殿長に考えた案を話す。魔法予備校の開設だ。単位や卒業といったことも必要ないから、在籍だけしてもらって授業を受けるかどうか任意であるが、今後確実に魔法を覚えるのだ。真面目に受けるだろうし、待ち時間も有効に使える。


「なるほど、いいですね。いっそ魔力開発の施術も魔力開発法の技術習得もそこでやりましょう」


 大神殿は魔力開発法を受け持ったことで、通常業務が麻痺しかけているんだそうだ。


「しかし場所が問題ですね」


 座学だけならともかく、魔法の実演をするならそれなりに広いスペースが必要だ。不便を我慢して郊外で探すか、それとも神殿のどこかを分割してしまうか。場所探しにそう時間はかけられないし……


「お誂え向きの良い場所があるぞ」


 そうリリアが言う。


「王家の森じゃ。我らが使える場所を一部、貸してやっても良い。当然使用料は頂くことになるが」


「それは問題ありません。希望者からの寄付が使い切れないほど来ています。本来ならエルフにも還元すべきお金ですし、どうしようかと思っていたのです」


 最初はそう高額でもなく、有り難く受け取っていたそうなのだが、順番待ちの列が伸びるにつれて寄付金額は増大していったそうだ。神殿は寄付自体はウエルカムであえて断る理由もない。そして高額寄付者を優先するのは当然のことなのだ。


 この世界、寄付はもちろん合法だ。賄賂や付け届けに関してもものすごくゆるい。そもそもが助け合いがなければ生きられない世界である。

 ブランザ領の徴税システムを構築する時にも少し話をしたのだが、賄賂と友好のための贈り物と単なる親切をどこで線引きすれば良いのか?


 たとえば田舎の村に税の徴収などで行くと宿屋も飯屋もなかったりする。村長なり誰かの家で歓迎してもらう必要がある。我が家へどうぞと言うのに村のどこかで野宿というのは手間だし失礼でもある。もちろんそこで徴税に忖度なり誤魔化しをしてもらっては困るのだが、村人にしても領主の手に者に対する礼儀や友好のためにやってるだけであって、税を誤魔化そうとまでするのは普通はそうある話でもない。


 賄賂で税を誤魔化すことは厳罰だと名言してあるが、旅先での歓迎やちょっとしたお土産なんかのお楽しみまで禁止するのも無用な不満や、現地との軋轢を生じてしまう。

 真偽院ですら金銭や露骨な高額の贈り物は禁止しているが、食事なんかの提供は断らない。それで手心があるかというと……たぶんないはずだが、うまい飯を食わせてもらえば心優しくなるくらいのことは人間なんだしどうしようもない話だ。

 俺の感覚としてあまり良くないなとは思うのだが、だからといって異世界の社会風習を引っかき回すほど暇じゃないし、やる利益も特にないし俺がやるようなことじゃないだろう。


「王家の森は一等地です。それなりの金額を積む必要がありますね」


「建物は我らで今日中に作ってやろう」


 俺からの無茶振りが多いから、エルフの建設部隊はとても有能だ。とりあえず建てて使ってみて、不足があれば追加すればいいだろう。場所はたっぷりあるのだ。


「それはとても助かります。その魔法予備学校ですか。組織の長はマサル様ということでよろしいでしょうか?」


「え? よろしくないけど」


 何をさらっと俺に投げる?


「名目だけで良いのじゃろう?」


「そうです。名目だけのことですので。マサル様にトップに立っていただければ神殿としても大変な名誉なことなのです」


「この件はマサルが始めたことであろう? 予備学校もマサルの発案であるし、マサルがトップであると色々と面倒を省けるのじゃ」


「寄付でかなりの資金が集まっております。トップの選定は慎重にする必要がありますが、のんびりと相応しい人物を探している時間はありませんでしょう?」


「土地の使用料や建物の建築費なんかの金銭のやり取りも、マサルがトップになることで省略できるじゃろ? あくまで名目上のトップであって、これ以上マサルを働かそうなどということでは断じてないのじゃ」


 うんうんと、神殿長も頷いている。あくまでも名目、お飾りだとこの二人ともが推すなら問題ないのか? 確かに場所が場所だし、エルフとの折衝も必要となれば適当な人物探しは時間がかかりそうだ。


「そういうことならまあ」


「良かった! これで神殿内での利権争いを回避できます!」


 降って湧いた巨大な利権、資金だ。運用方法や分配を誰が決めるのか。揉めるのはわかるが……


「俺が決めるの?」


「マサル様が決めたことならどこからも文句は出ないでしょう」


「マサルは自分のためにはお金は使わんからの。これ以上相応しい人選もあるまい」


 買い被りすぎだが、俺自身は何でもできて自給自足できるからお金はさほど価値がないのは確かだ。


「じゃあ予備学校の運営資金をまず取って、残りは神殿とエルフの半々で分けるというのはどうだ?」


 そう適当に決めてしまう。どうせ寄付攻勢など最初だけのことだ。魔力開発法の術師が増えれば落ち着くはずだ。


「エルフの取り分はマサルが好きに使うがいい。今は色々と物入りであろう?」


「神殿の分もマサル様にお預けしますので、ご自由にお使いください。資金をそのまま戻されたのでは何の解決にもなりませんので」


 確かにそうか。うーん。エルフの分はそれでいいとして、神殿の分は……アンにでも任せるか?


「ところで寄付ってどのくらい集まってるんだ?」


 その額を聞いて驚いた。これくらいかと思った額より一桁は多い。


「ほう。これはなかなかの額じゃの」


 リリアも少し驚いている。帝都の神殿の運営資金を一〇年分は楽に賄える額だそうで、だからこそ確実に火種になるし扱いに困っていたそうだ。しかも当分は同じようなペースで増え続けると予想される。


「本当に好きに使っていいんだな?」


「無論じゃ」「もちろんです」


 お金の出処を気にするほど余裕はないか。使ってこそのお金。なら有効に使ってやろう。ミズホへの資金投入。それからもちろん千年計画だ。どちらも投入した資金以上の見返りは確実にある。


「マサルはもう少し贅沢をしてもいいと思うのじゃがの」


 俺の寄付金活用計画を聞いてリリアがため息混じりに言う。贅沢って言ってもなあ。この世界では俺がほしいものがほとんどないのだ。日本でならマンガとゲームにお金をかけていた。もっとお金があればフィギュアとかも集めたかったし、旅行もしたかったかもしれない。


「うーん。贅沢ね……」


 こっちでも趣味といえば本くらいだが新作は少ないし、最近はゆっくり読む時間があんまりない。それに世界を救えるかどうかの活動中に、お金のことなど二の次にならざるを得ない。リリアは俺が世界を救うと確信している様子で将来のことも普通に話すが、俺はそこまで楽観はできない。


「やっぱり贅沢とか俺はいいわ。お金は必要なだけあればいい」


 そう言うと立ち上がる。まずは魔法予備学校の場所を決めて、それから千年計画への予算配分も考えないと。


「ああ。でもやっぱりお金は必要だから、フローレンス神殿長はしっかりと資金集めをお願いします」


 俺の言葉に神殿長は丁重に頭を下げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
そろそろ真偽官の増員とかも望めないのかな?
[一言] たのしみです。
[良い点] 予備校キタ! お金も手に入って良かったね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ