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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第十六章

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320話 家族会議

「白い短剣?」


「白い刀身がとても美しいですね」


 夕食前、エルフ城の居間に先に戻ってきていたアンとイオンに披露したのは、本日の成果、セラミック製の短剣である。


「今日はずっとこれを作ってたんだ。土でできた陶器の剣だよ」


 白くなったのは陶工の助言で陶器に使う土で色々試したところ、最終的に白磁器の製法と同じ、土と骨を配合した材料で作ると品質が安定することが判明したからだ。見た目もいいし、短剣なのでセラミック特有の折れやすさも軽減できる。長いとやはりどうしても折れやすくなるのだ。あと斧や槍、盾なんかも俺以外が作ると強度に不安があって無理と、武器にするなら切れ味の良さもあって短剣が最適となったのだ。


 あーでもないこーでもないとセラミックと鉄の強化を、一日試行錯誤して過ごしたお陰で、セラミックと鉄の強化方法には一定の目処が立ったし、俺が居なくてもそこそこ強いセラミックと鉄を作れるようにはなった。

 セラミックに関しては土の質が重要だが、それとは別に、物質とは何かという原子や分子への理解と、変容させるイメージが重要なようだった。ただ圧力をかけたりするだけではだめで、圧縮した結果の物質の変化までイメージする必要があった。


 その説明を何度もしてはみたが、実感として魔法に影響を及ぼすほどの理解はまだまだ得られていないようだ。俺もそんなにしっかり理解してるとは思えないのだが、それでもこの世界の人間に比べれば、かなり深く理解しているということなのだろうか。


「魔法ってなんだろうな」


 ソファーに沈み込んで、今日はずっと俺に付き合っていたエリーに聞くともなく尋ねる。


「なにって神様に与えられた特別な力でしょう?」


「その力が何かって話なんだ。魔法の属性ってあるだろう?」


 属性で分類されている魔法だが、水といいつつ石油も操れるし、土に関しても石も含まれるし、土というだけではふんわりしすぎている。だから風は気体、水は液体、土は固体を操る、その理解が正解なのではないだろうか。そんな俺の仮説を聞いたエリーが尋ねる。


「じゃあ火魔法は?」


「火は熱エネルギーの操作だな」


 そして魔法は直接原子か分子に影響を及ぼすことができる。たぶん原子のレベルだ。それ以下となると、属性の分類が意味を成さなくなるし、もっと根本的なことができるようになるはずだ。


「素粒子という原子の下のレベルを操れるなら、魔法でできることはもっと多いはずなんだ」


 特に解説も加えずに、つらつらと頭に浮かんだ考えを話していく。仮定として素粒子のレベルで、俺たちの意思に反応する魔法粒子が存在する。魔法粒子は原子に作用する。光子や電子も動かすことができる。いやこれは無理か。光も雷も発生させて指向性は持たせることができても、発射後のコントロールはできない。


「それとも俺ができないと思っているだけで 本当は可能なのかもしれない」


 空間魔法はまた別の理屈のようだし、俺たちの加護やレベルアップも科学的に考えると謎だらけだ。


「それでも俺たちはそれを認識できるし操作できる能力を与えられている。そして生命には魔力が宿る」


 魔力とは魔法粒子だと考えるとしっくりくる。しかし魔力が切れると意識を失う。脳に魔力器官と呼ぶべきものがある? それは魔法粒子の供給で稼働していて、それが切れると酸素不足のようになる。


「そういえばイオンとアンは神国で人体の解剖をやったんだろ?」


「うっ。思い出させないで……」


 イオンは顔色を変えずに頷いていたが、アンはとたんに顔を青くした。病人や怪我人を見慣れているアンでも、解剖はきつかったようだ。


「俺が考えるに、魔法を操る器官が人体のどこか、たぶん脳にあるはずなんだ」


 目や耳、鼻みたいな感覚器官だが、意思が関係するからにはあるなら脳だろう。元の世界には魔法がなかったから……いやほんとうか? それにしては神様が居たし、魔法の存在も昔から言及されてきた。あっちにも魔法はあった? そして獣人のように失った。一度失えば取り戻すのは大変だ。それとも一部の者が特権的な技術として秘匿して、やがて遺失してしまったのかもしれない。


「もしそいつを見つけることができたら教えてくれ。ところでティリカは?」


 アンと組んで動くことが多いティリカが珍しく一緒じゃない。リリアは途中で様子を見に来ていたが、ティリカは朝から一度も見ていない。


「人体解剖はさすがに嫌みたいで、エルフの里で何かするって言ってたわね」


 それは俺も嫌だ。まあ医療関係全般は俺が見てもどうにもならんしな。エルフの里にいるなら問題はないだろう。ティリカはティリカで真偽官としてはもちろん、魔法や召喚で、制限しなければ受けきれないほどの仕事が舞い込むくらい有能な人材なのだ。


「とにかくだ、魔法にはもっと可能性があるはずなんだ」


 たぶん元の性能の一〇分の一も使えてない。もしかするともっとかもしれない。


「見えないし触れもしない魔法の正体をまずは突き止める必要がある」


 魔法は見えないが、感じることはできるし物質への作用は観測できる。それがまずは取っ掛かりだな。誰か頭のいい人にがんばってほしい。

 三〇〇〇年間で研究した人はいたはずだが、これまでは物質への理解が足りなかったということなのだろう。雷は神の怒りだ、くらいの理解で研究したところで成果が出るとも思えない。


「思い出した。これをみんなにあげようと思って。イオンとアンも好きなのを取っていいぞ」


 そう言って今日作った短剣を全部取り出す。最初に作った土色のショートソードタイプから、最後のほうに作った白いナイフタイプまで、色々と取り揃えてある。


「全部俺の作った陶器の短剣だ。鉄が切れるくらい切れ味がとてもいいんだ。人体もスパスパだぞ。そうそう、それで陶器製の道具の研究班ができたから手術道具がいるなら相談するといい。土魔法で作るからどんな形でも自由自在だ」


 セラミックや鉄の強化をしていた話を簡単にする。


「それはガラスの強化はできないのでしょうか?」


 そうイオンが尋ねてきた。熱や圧力を使う実験をしているとよく壊れるのだそうだ。


「たぶんできるはずだ。それも陶器を作っている班に聞いてくるといい」


 基本は陶器と同じはずだが、ガラスの強化は圧力か? なんにせよ今のところは土も鉄も、適当に何かを混ぜ込んで、強くなったか調べるという総当りな手法を繰り返している。ガラスも同じように試せばいいだろう。


「そろそろガラスもこっちで作れるんじゃない? ほら、帝王陛下たちがドワーフと交渉するなら、こんないい技術はまだ見せないほうがいいでしょ?」


 エリーがそう言う。今、ガラス作りを学ぶため、何人かのエルフが神国のドワーフの下で修行中である。


「それもそうだな。飛行機の風防とか実験器具とかもエルフの里で作れるようにしておきたいし、一度戻ってきてもらおうか」


 この短期間で完全習得とはいかないだろうが、必要なら神国に戻ってまた教えてもらえばいいのだ。


「ではわたくしのほうで手配をしておきましょう」


 イオンがそう請け負ってくれる。まあドワーフもさっさと計画に参加してくれればいいだけの話だ。

 

「イオンのほうはあれから……」


 遠心分離機でのポーションの分離がどうなったか聞こうと思ったところに、リリアが駆け込んできた。


「マサル! これを見よ!」


 そう息せき切って手に差し出してきたのはミニトマトくらいのサイズの黒いモジャっと塊だった。かすかにガソリンの臭いがする怪しげな物質だったが、恐る恐る触ってみると少し暖かくてスポンジのような柔らかい感触がする。持ち上げて親指で押すと中のほうは少ししっかりしていて、ぐにゅっと軽く反発する。


「ゴム……合成ゴムか?」


「そうじゃ。石油からできた。これはゴムじゃろう?」


「ゴムだな。間違いなくゴムだ。どうやって作ったんだ?」


 石油を発見して五日。その石油の分離と精製が成功して二日か三日? ゴムの見本として俺が日本から履いてきていたサンダルを渡してはあったが、それにしても早すぎる。


「今日マサルがセラミックや鉄でやっていたであろう? 同じように熱を加えながらゴムになるよう魔力を込めさせてみたのじゃ」


 多くの錬金術師を動員し、手当たり次第に手持ちの薬品や素材を混ぜ合わせて試したのだという。


「ポーションを作るのに錬金術師を増やしたであろう?」


 緊急時にポーションを量産できるよう、エルフの里の人口の三割を目標にポーション作りを指導する計画が進んでいた。それですでにかなりの人数がポーションだけなら作れるようになっていて、そこから大量動員した中の一人がたまたま当たりを引き当てた。


「マサルがエルフは全員ポーションを作れるようにしようって言い出したときは、また無茶なことを言い出したって思ったけど、こうなると錬金術師はいくら居ても困らないわね」


 エリーが俺を見てそんなことを言う。めっちゃいい考えだと思ったのに、そんな風に思ってたのかよ。


「魔力開発法の公開もじゃな。今後は魔法使いの価値が大きく見直されることになりそうじゃ」


「こうなると音楽のほうももうちょっと身を入れるべきなのかしらね? 後で何かありそうだわ」


「さすがにそれは無いと思うぞ、エリー」


「あれはあれで、マサルの名前で養育院に寄付をしてるから、後々評判になるんじゃないかな」


 アンの言葉に思わず問い返してしまう。


「え? 俺の名前で寄付してるの? チャド氏のやつだよね?」


 俺がチャド氏に定期的に楽曲提供する見返りに、利益の半分を貰えることになったのだが、パクっただけの曲で儲けるのは気が咎めると、養育院に全額寄付しておいてもらうことになっているのだ。


「あれは匿名でいいんじゃないか?」


「帝都の神殿でマサルを知らないなんてあり得ないしもう手遅れじゃない?」


 そうかー。手遅れかー。いやダメだな。名前を売っていくと決めたのだ。この程度で狼狽えていてはいけない。


「とにかくだ。ゴムはよくやってくれた。これで色々できることが増えるぞ」


 まずはタイヤ。それから実験器具に使うゴム栓とか、医療分野でも色々使える。そしてこの調子ならプラスチックとかビニールもすぐにできそうな気がする。

 タイヤがあっていい鉄も作れそうだしガソリンもあるとなると、内燃エンジンの開発も考えてみるべきか?

 エルフに新規開発をやらせるのは厳しいし、帝都の研究所ができたらガソリンエンジンとロケットエンジンの開発を投げてみるか。


「まずは飛行機のタイヤだ」


 これでやっと垂直離着陸機から滑走路を使った離着陸機に進化できる。問題は載せるエンジンかバッテリー駆動の電気モーターか。帝都でガソリンエンジンを開発するなら、電気はエルフがメインでやってもらうか。それから何が必要だ? 錬金術で何ができる?

 写真だ。航空機での偵察をするならカメラがほしい。銀の化合物で光に反応する物質となれば、これも錬金術で開発できそうだ。なら鏡もできるか? いやもう魔法でなんでもできそうだな……


「錬金術を使って開発できそうな技術や材質の洗い出しをしないといけないな」


 わいわいと話し込んでいるうちにやっとティリカが戻ってきた。


「おお、ティリカ。今日は何してたんだ? 体調は大丈夫か? 無理してないか?」


 そう言ってティリカをソファーの横に迎え入れてやる。


「これ、マサルに」


 そう言ってティリカがすっとコップを俺へと差し出した。


「炭酸? って炭酸ジュース!?」


 柑橘系の絞ったジュースからシュワシュワと気泡が浮き出ている。


「そう。今日は炭酸ジュースを作ってた」


「錬金術で?」


「マサルが言っていた方法で」


「そんなのあったっけ?」


「コーラはジュースに二酸化炭素を加えて作る。二酸化炭素は卵の殻を酢に沈めれば発生する。マサルが書いたものにあった」


 言われてみれば書いた気がする。


「空気を冷却してみたんだけど、固体の空気ができただけだった。どうして液体ができないのかな?」


 卵の殻から二酸化炭素を作るのはすごくゆっくりした反応で、二酸化炭素の量も取れなくて、他も試してみたらしい。


「魔法で強制冷却したのか。それが液体を飛ばして固体になったの? なんでだろうな……」


 そこらの空気だったら固体窒素になったのか? なんで液体窒素にならないんだろう。沸点や融点は違うから、冷却をすることによって各成分が液体、固体となって空気を分離できるかもとティリカは考えたらしい。これは石油の精製をしたときの話だな。


「でもどっちにしろ空気中の二酸化炭素はごく少量だし、上手い方法じゃないな。いや、それより二酸化炭素は吸うと危ないぞ。大丈夫だったのか?」


「それも一緒に書いてあった」


 まあそうか。純粋な気体ってどれも危険物だもんな。それで結局は卵の殻からちまちまと二酸化炭素を集めて、それを水に溶かすのは普通に水に通すだけじゃ弱い炭酸にしかならなかったので、魔法で無理やりぎゅっと押し付けて炭酸水ができたそうである。

 その第一号の成果に果汁を加えて俺にも味わってもらおうと持ってきてくれたと。


「あんまり量が作れない。どうしたらいい?」


 違った。もっと作る方法を考えてくれってことね。酢だと酸が弱いのか? 塩酸か硫酸を使う? あと卵の殻を使うなら骨のほうが量が揃う。陶工で骨粉が備蓄してあった。貝殻なんかもいい。こっちでは手に入らないが、神国か帝国なら入手は簡単だ。

 ティリカは俺の話を熱心に聞いてメモを取っている。


「酸にしろ発生するガスにしろ、どれも危険なんで扱いに十分に注意するようにな」


「大丈夫。エルフが全部やってくれる」


「我らの初めての子供じゃぞ。欠片でも危険なことをさせるわけがあるまい」


 そうでなくともエルフは人間や獣人みたいにぽこぽこ妊娠しないから、妊婦は特に大事にされる。

  

「まあ焦ることはない。できることがわかったら、後は方法を洗練させて効率をあげていくだけだ」


「あのコーラという飲み物を作れれば、帝都で評判になるであろうな」


 こっちにもビールはあったが、元々炭酸が弱いのか抜けたのか、微炭酸であんまり美味しくない。

 

「コーラは製法がわからんな。でも果汁もだけど、ビールやワインに炭酸を入れても美味しくなるぞ」


 いやスパーリングワインって炭酸を足して作るんだっけ? うーん。まあウィスキーだって炭酸を足して飲むのだ。大きな問題はあるまい。


 エルフは帝都に出店計画がある。職人が作ったエルフ産の工芸品の他に、レストランを作るのだ。料理は俺が提供したレシピが主になるが、炭酸ドリンクもいい目玉商品になりそうだ。

 エルフのための資金稼ぎでもあるが、エルフを帝国と融和のため、帝国人の胃袋から掴む作戦で、これも明日の諸々の発表の後から始まる予定だ。レシピはほとんどが俺提供だから、間違いなく人気になるはずだ。




 そうして夕食時。ウィルとフランチェスカが合流して、いつもの家族会議である。まずはフランチェスカたちから王国との話を聞くことになった。

 フランチェスカは難しい顔だ。王国の財政は思ったよりも悪い。ウィルが帝国から援助を引き出すつもりだ。ミズホの開拓計画はとても貧弱である。王国は最低限の用意しかできない。


「叔父上たちはミズホを制圧さえしてしまえば、後はどうとでもなると考えていたようだ」

 

 そうフランチェスカが話す。新しい豊穣な土地が得られるのだ。制圧した時点で援助を求めれば、勝ち馬に乗りたい貴族からいくらでも支援は得られるという算段だったらしい。


「しかし我らの殲滅速度と輸送能力を考えると、そんな悠長なことは言ってられぬぞ?」


「問題もいくつもある。まず集まるのは食い詰め者ばかりだということだ」


 着の身着のまま。農業などしたこともない。手に職があるわけでもない。もちろんまともな開拓者も来るだろうが、それに期待することはできない。


「つまり一年目から収穫を得ようと思ったら、農業指導とか装備設備を全部用意する必要があるのか。王国はどうするつもりだったんだ?」


「成功すればよし。失敗しても懐は傷まない。数年かけて収穫が得られるようになればよいと」


 わりと最低だな。でも、とエリーが言う。


「開拓なんてどこもそんなものよ? ヤマノス村やビースト領みたいなのは恵まれすぎね」


「運が良ければ農地を継げない次男坊三男坊が来るかもしれない」


 しかし家が作れる大工や職人は期待できないし、鍛冶屋なんかも無理だろうな。商人は一発逆転にかけて来る酔狂なのがいるかもしれない。


「我らエルフで足りぬ分は人を雇って投入するしかあるまい」


「あとな、各地の養育院からもある程度の年齢の子供を連れて行く予定だったと」


 フランチェスカの言葉にアンが厳しい顔になる。


「神殿はそれに同意したの?」


 アンの問いにフランチェスカはたぶんと頷く。子供を徒手空拳でまだ魔物が残った開拓地に送り出す。一年目でどれくらい生き残れるか。生き残ったとしてもそれは相当に過酷な生活となるだろう。


「王命だし王国はどこも苦しい。神殿も苦渋の選択だろう」


 エリーに悪いし口には出さないが、以前の開拓計画が失敗しててよかったんじゃないかと考えてしまう。俺たちが介入すれば、危険も困難もかなり減らすことができる。


「子供は受け入れよう。俺たちで何年か面倒を見てやればいい。ちゃんと教育もしてやれば将来の優良な領民になる」


「そうなるとかなりの資金が必要になるわね……」


 どうりで王国があっさり領地を譲ったはずだ。問題だらけじゃないか。


「俺の鉱山収入じゃ足りないよな?」


 ミズホには有望な鉱山があって、そこでの収益で領地の運営をどうにかする予定であったが、初期投資が相当大きくなりそうだ。


「資金はエルフがどうにかしよう。マサルは金のことなど気にせずとも良いのじゃ」


 だがエルフに頼り切りもよくない。


「今日作ったセラミックナイフはいい値段で売れるんじゃないか?」


 作成方法は帝国と神国でも共有するが、作るには今のところ潤沢な魔力と錬金術の素養がいる。俺が作った高品質は誰にも真似はできない。


「我らの新たな有力商品になりそうじゃの。ゴムも売れるか?」


「ゴムは基礎技術だから儲けにする商品にはしたくない。上手く作れそうならさっさと広めてくれ」


 ゴムは使い道が多いし、そんなに儲けがでそうな感じでもないし。


「あと労働もする。帝王陛下が農地を作ってほしいって言ってただろ。話を聞いて、受けておいてくれ」


 それから料理のレシピも増やして、エルフのレストランも儲けさせる。チェーン展開も計画しよう。

 カメラ……はまだ作ってもいないし……鏡だ。ドワーフでも開発中だが先んじて作れれば巨万の富も夢ではない。

 ある程度稼げる算段がつけば、いますぐお金を作る必要性はない。どこかから借りればいいのだ。


「まずはミズホで何がどれだけ必要か考えよう。人員と物資、収穫ができるまでの食料にかかる資金だ」


 俺の言葉に皆が頷く。


「何もない場所からの領地の整備なら、ビースト領での経験が生きるわね」


 エリーの言葉に頷く。何事も無駄にはならない。


「それから予定も考える。秋はもう無理だから、春の作付けを目指すとして、ミズホの制圧に一カ月。町や村の建設に二カ月とすれば、年明け早々に動く必要がある、と思うんだがどうだ?」


 そうね、とエリーも同意する。そうなるとブランザ領の復興計画も二カ月で形にする必要がある。

 ブランザ領はゴールドハウブズ領と二つの領地が合体するのだ。領都を新たに中間地点に作る計画がある。それに道路網や新しい農地の整備。治水も怪しい場所があるのでどうにかしたい。領民軍もブランザ領側は壊滅状態なので、再編成する必要があるし、領民の教育計画も立てたい。


「千年計画を進めながら、ブランザ領の復興をして、ミズホの開拓計画を練る」


 ここまで二カ月とちょっと。


「ビースト領はどうなっている?」


「追加でもう少し農地を作れば、あとは自力でどうにかできるわね。それとヤマノス村なんだけど……」


 ナーニアさんとオルバさんを村長から引き抜いて、ブランザ家の家宰になってもらうつもりだと、エリーが話す。


「新しい村長はどうするんだ?」


「タマラ夫婦にやらせるわ。もう教育は始めてるし、エルフも見てくれるから」


 タマラはシラーちゃんと同じ時期に買った俺の奴隷だ。今はもう奴隷からは解放していて、村から出てきた幼馴染と一緒になって、ヤマノス村の俺の屋敷の使用人をしてもらっている。


 とりあえず次の目標は春先か? ミズホで農業が始まるくらいになれば、さすがに仕事量は減るはずだ。

 それが五カ月か六カ月先くらいか。あー、そうすっとダークエルフとの休戦協定が切れるのか。そのタイミングで何か動きがあるかもな。


「とりあえずウィルとフランチェスカのことも相談しないとな。結婚式はいつにするんだ?」


「それなんスけどね。いっそ結婚式を合同で一気にやってしまって、その後に各地でお披露目をすればって考えてるんスよ」


 帝国、王国、ヒラギスと、下手したら三回必要だもんな。


「しかし、いまの私たちにそんなことをしている余裕があるのか?」


 フランチェスカの言うことももっともであるし、ミズホの開拓計画は俺がフランチェスカを司令官に任命してしまっているのだ。まあそれでも結婚式を一日ねじ込むくらいは問題なかろう。


「余裕余裕。なんとかなるから、結婚式くらい派手にやろうぜ。どうせなら各地で三回やっとくか?」


 正直、戦争をしてない分、今はまだ余裕があるほうだと思うのだ。休もうと思ったら休めるし、もし何かあれば、それこそ結婚式なんて言っている余裕などなくなるはずだ。


「それ、他では言わないでくださいよ。マジで三回やろうって話もあるんスから……」


 さすがにそれは面倒だし、結婚式の有り難みも失せてしまうか。話し合って日程は一ヶ月後になった。招待状を送って各地から人を集めるとなると、一カ月でも短いくらいだが、それより後になるとミズホへの侵攻とその準備で忙しくなる。


「明日からも忙しくなると思うが、各人無理のない範囲で、休めるときはしっかり休んで働くこととしよう」


「たぶん来年の春くらいにはのんびりする余裕も出るはずよ」


 そうだなと、エリーの言葉に頷く。魔物が何の動きも見せなければ、それくらいには色々なことが軌道に乗っているはずだ。だよな? そうであれ……



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 相変わらず忙しすぎだなあ…
[気になる点] 着陸に絶えられる強度の航空機用タイヤは天然ゴムを使わずに作れましたっけ? 命知らずなんでは
[気になる点] プラ廃棄問題が今後どうなってくるかだな。 まあ錬金術と魔法、魔力でプラチップに還元するイメージで戻せばいいか? 大気汚染も工業排水もほぼでなさそうだしw
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