312話 強さを求めて
早朝。起きてすぐにサティたちを誘い、軽く剣の立ち合いをした。疲れが抜けきっていないのか頭は重かったし疲労感はあったが、体調自体は問題なさそうだ。
ソロモン戦の成果はやはり確固としたもので、サティの攻撃が良く見える。ほぼ互角の実力だったサティの攻撃を軽くいなせるようになっていたのが確認できた。
「本気でやってもいいですか?」
俺が頷くと、すでに体は暖まっていたのだろう。即座にゾーン状態に移行してきた。その強烈な剣戟はまともに受けずに、躱すか受け流していく。
最初はゾーン状態のパワーに振り回されていたサティだったが、やはり習得が早い。昨日の今日で早くも使いこなし始めている。だが狂化状態のソロモンほどの圧力はないし、もちろん動きの粗さも目立つ。
小柄なサティの筋肉の動きはソロモンより読みづらいが、動きは良く把握しているから読みが外れることもない。サティ特有の体勢を低くした大きく素早いステップはかなりやっかいな攻撃だったのだが、激しければ激しいだけ、筋肉の動きで読みやすかった。当然奥義の発動のタイミングも起動もよく見え、サティの奥義にカウンターを軽く当て、立ち合いを終えた。
「次だ!」
続いてシラー、ミリアムと順に相手をする。この二人も決して弱くはない。加護のお陰でスピードとパワーも一般人に比べてずば抜けている。剣技も申し分のないレベルで高度だ。なのにソロモンと戦った後では、どうにも弱く感じてしまう。
結局のところソロモンの強さというのは、俺を上回るパワーももちろん恐ろしいが、そのパワー以外の部分にあるのだろう。相手を追い詰める。俺の動き、呼吸の隙をつく剣は今思い返せば芸術的でさえある。
「我らではもう主殿の相手は厳しいな」
俺自身の動きを確認したくて何もさせずに封殺しちゃったせいで、シラーちゃんが渋い顔でそんなことを言いだしてしまう。サティはともかく、シラーとミリアムでは相手として少々不足してきたのは確かだ。奥義を習得してゾーンを覚えさせれば強くなるだろうか。強くはなるだろうが、それだけでは俺の目指す領域には到達しない。むしろ今の状態でしばらく苦労して技を磨くほうが有益かもしれない。
奥義やゾーンでパワーが上がると、強くなったと勘違いしてしまう。しかし実際には同等かそれ以上のパワーにぶつかれば、あるいは俺やギュンターさんのような鉄壁の防御持ちに当たるとそれだけでどうしようもなくなる、脆い強さでしかない。
だけど実戦を考えるとさっさと強くなれるほうがいいし、格下相手には圧倒的になる。技術で埋められない力の差というのもあるし、単純に余力が増えると楽にはなる。
「だからって強くなるのを諦めるのか?」
「そんな訳ないだろう! ただ……どうやったら追いつけるんだ?」
もっともな疑問である。俺自身、ここのところ考えていたことでもあるし、一度整理して話してもいいかもしれない。
「そろそろ朝食の時間だし、その時にそこら辺について話そうか」
シャワーを浴びて朝食の席につくともうみんな集まっていて、今日はいつものメンバーにフランチェスカも加わっていた。
「何か急ぎの報告がある者は?」
「いくつかあるけど急ぎのはないから、マサルからでいいわよ」
エリーがそう言うので、二口三口と軽く具だくさんのスープを飲み込みながら考えをまとめ、話し始める。
「昨日のソロモン戦の話をするつもりだったんだけど、どうすれば強くなれるのか。そんな話があったんで、先にそれから話そうと思う」
これは俺たち剣士組の最大の関心事であったし、ソロモン戦とつながる話でもある。
「あと、これは剣を学んで一年の俺の考えに過ぎないということを最初に断っておく」
俺の言葉に微妙な表情の者が何人かいる。わかっている。お前みたいな初心者がいるかってことだろ。
それでもたった一年でこれだけ強くなった俺の考えだ。参考くらいにはなるだろう。
「強さと一言で言うが、じゃあ強さとはなんだろうか。それは強くなるという意思と勝利を目指す執念。実現するための剣の技。土台となる体だ。この三つを、心、技、体とまとめて呼ぶこととしよう。この心技体をバランス良く鍛えることが強くなるということだ」
強さというだけでは曖昧だ。まずは問題を切り分けて、個別に考えるべきなのだと説明を加える。
「心は強くなろうという意思、厳しい修練にも挫けない心。そしてどうやったら相手に勝てるかを常に考えることだ。たとえ勝つのが難しくとも、最後の瞬間まで考えるのを諦めるな。それから今みたいどうしたら強くなるか、しっかり考えて鍛える方向性を見据えるのも大事だな」
立ち合いで実戦的に鍛えるか、体の鍛錬をするか。俺の場合はここのところ立ち合いが多かったから、そろそろ筋力強化も考える必要がある。
「技は剣技だな。これは師匠やデランダルさんにでも聞いてくれ。あるいは自分で研究して技を編み出すのもいいし、人の技を見て盗むのも有益だ。俺の魔法を絡めた攻撃やサティの高速ステップ、シラーなら盾の活用とか独自のスタイルを考えるのも技だ。あるいは敵の技を知るのも重要になる。ソロモンは恐ろしく強かったが、俺のことを知らなかったから最初にいきなり負けかけた。高度な技術や多彩な技を持っていたところで、敵を知らなければそれを活用する以前ってことだな」
敵を知り己を知れば百戦危うからず。元の世界では相当昔からの格言だが、この世界では主敵があまり賢くない魔物だったせいか、軍学といったことはあまり発展してないようだ。
「体は奥義や相でスピードやパワーを上げるのもいいが、普通に鍛えるのが一番だな。俺はこれが圧倒的に足りなかった。ソロモンのパワーは俺以上だった。スピードは多少俺のほうが上だったみたいだが、魔法を使ってやっと対抗できるほどだったし、何より常に全力で剣を振ったからあっという間に体力がなくなった」
すぐにそれに気がついたソロモンはねちねちと俺の体力を削りにかかった。
「それで俺は反撃する余力をなくして防戦一方になって、必死にソロモンの動きを見ていたんだ。五感と気配察知、聴覚探知、空間把握を全開にしてな。特に空間把握で筋肉の動きを見てソロモンの動きを先読みするのは、回避にとても役に立った」
「ちょっと待ってくれ。その、気配察知や空間把握とかいうのは何なのだ?」
フランチェスカはまだ教えてなかったな。話が逸れるが仕方がない。
「俺がもらった神の加護だよ。気配察知はたとえばエルフの里の中ならどこに人がいるかはっきりとわかるし、目の前とか近くにいれば手足の動きまで見ないでもわかる。聴覚は耳の強化だな。衣擦れや剣の風切り音まではっきりと聞こえる。空間把握というのは……物の形そのものを感じ取れる感覚だ。もちろん目に頼らないでだぞ」
それはある意味視覚以上の感覚だ。範囲は狭いが視覚では見えない裏側、内部まで視て取れるし、空間そのものを把握するから、たとえばクルクルと何度も回ったところで視覚や三半規管の乱れのようなことも起こさないし、剣で吹き飛ばされて変な体勢になっても自分の位置、地面の位置を見誤らない。
視覚というのは平面を二つの目で見ることで、脳で擬似的に立体に再構成しているのだが、空間把握は最初から完全な立体と三次元的位置情報を提供してくれる。最初は戸惑ったが、視覚以上の完璧な距離感覚は、戦う上で確実に大きなアドバンテージとなっていた。
「あと俺たちが常人離れした力があるのも加護のお陰だから、フランチェスカが俺たちに勝てないからと言ってがっかりする必要はないぞ」
「ウィルも、か」
難しい表情でフランチェスカが言う。避けて通れない話だし、俺自身も色々考えたことでもある。
「そうだ。だけど一つ言っておくと、俺たちは凡人なんだ。神の加護を持ってしても、厳しい修練を経て、魔法まで使ってやっとソロモンに届いたし、師匠にはいまだ敵わない。一度は俺に勝ったフランチェスカは紛うこと無き天才だよ。誇ってもいい」
「マサルは小柄だったしひょろひょろで、普通の兵士や冒険者どころか、うちの孤児院の子くらいの強さしかなかったんじゃないかしら? 正直凡人にも届かないくらいだと思うわ」
そうアンが言う。俺がよっぽど弱そうに見えて、だからあんなに心配してたんだな……
「魔法の才能はたぶんあったぞ」
「そうね。そっちは中々のものだったわ。そんな凡人以下のマサルが神の加護が貰えたからって最前線で戦ったり、フランチェスカみたいな剣の天才と戦うのはそりゃあもう大変だし、しょっちゅう怪我をしてもう心配ばかりだったんだから。いくら加護があっても痛みは普通に感じるのよ?」
「そうだったな。お前の戦い方はいつでも無茶だった」
「多少怪我をしても回復魔法ですぐに治せるからな」
「多少じゃないでしょう! ほんとにもう……すぐに治せるからってフランチェスカはマサルみたいな無茶ができる?」
そのあたりの無茶は軍曹殿の薫陶、すなわち師匠の教えのお陰だし、無茶をしたからこそ今の強さがあるのだ。
「俺は加護で力だけ与えられたから、使い方が未熟だったんだ。つまり技は加護で与えられても使い方は学ぶ必要があったし、力はあってもこの体じゃ鍛え方足りなくて、すぐに体力が尽きてしまう」
「そして心の強さばかりは神の加護でも与えられておらんのじゃ。マサルは一年前、こちらへ来る前は戦いとはまったく無縁の生活で、剣を握ったことすらなかったそうじゃぞ」
「ウィルもだな。魔法は使えない。剣もいまいち。頭も特別に良くない。だから実家に居づらくなって家出して冒険者になった。サティの話とかも暇な時に聞いてみるといい」
「当然サティもか……神の加護。それは私も得られるのか?」
「ダメだな。師匠も欲しがってたが無理だった」
フランチェスカにはまず望みはないだろうな。師匠の方がまだ可能性がある。
「フランチェスカよ。嘆く必要はない。ワシを見よ。ソロモンとマサルの戦いを思い出せ。神の加護がなくとも強くなる意思、それが人を高みに至らせるのだ」
「はい、お師匠様」
この件は師匠ですら未だに未練があるくらいなのだ。フランチェスカが飲み込むには時間がかかるだろう。
「個人的な感情はこの際脇に置いておけ。俺たちの敵はなんだ? 俺は神の加護をもらってる勇者なんだ。弱いよりよっぽどいいだろう?」
俺の言葉でようやく少しは感情が整理できたようだ。ライバルであっても味方なのだ。味方なら強いほうがいい。
「 ウィル、あとで全部説明してやってくれ。そうだ、全部だ」
本来なら加護や神託に関することは俺が説明すべきなのだろうが、今日もそんな暇がない。フランチェスカも全部聞けば、剣術での強さなどどうでもいいとまではならないだろうが、重要ではないくらいには思えるだろう。
「じゃあ話を続けるぞ。その時点でソロモンには勝てないだろうと思ったが、でも実戦なら粘れば粘るほど救援が期待できる。それに隙があれば魔法での一撃もあったから、諦めることはしなかった」
ソロモンも魔法を警戒して攻撃が浅かったお陰で生き延びることができたし、実際に魔法を何度も使ってピンチを回避していった話をしていく。
「だけど筋肉の動きを見て剣の起動を予測できても、ソロモンの剣が強すぎて受けきれなかったんだ。逸らすことすら難しくて、受け流すにしてもソロモンの剣のパワーを把握しないと思って、じゃあ筋肉の動きをもっとよく、細かく見れば力の入れ具合もわかるだろうと思ったんだが、目、耳、気配察知に聴覚探知、空間把握まですべて使った状態でさらにそんなことは無理があったんだ。もうその時は相当体力も消耗して、もちろん頭も疲れていた」
疲労状態でゾーンを維持。そこにさらに負荷をかけたことで脳は限界を超えオーバーフローを起こしかけ、それを回避するため最適解を導き出した。ということなのだと思う。生存本能の発露とか、火事場のクソ力とかかもしれない。
「それでもソロモンの攻撃を回避するために、なんとかしようとして感覚の統合が起こったんだ。みんなも見たり聞いたりすることは特に意識しないで受け取れているだろう? たぶん俺の加護の探知系もそんな感じで、情報としてじゃなくてダイレクトな感覚の一つとして自然に受け取れるようになった。んー、たとえば右目と左目は実は独立して別々の情報を受け取っているんだけど、それを頭の中で統合して一つの視覚という感覚として特に意識をすることなく扱っているんだ。俺のもそういう感じにまで馴染んだんだと思う」
ゾーン状態で、なおかつ極限まで追い詰められたところに、さら負荷をかけたことで意識の覚醒、感覚の改革みたいなことが起こった。それまでの積み重ね、慣れるために普段から稼働させていた成果でもあるのだろう。
「それで全感覚からの情報が使いやすくなって思考にも余裕ができて、俺はソロモンの動きを、全体として見て、力の流れとして把握することができるようなったんだ」
サティたちで試してわかった。筋肉の大きさや付き方で多少の変化はあれど、基本の動きは同じだ。少し観察すればすぐに苦労もなく同じように把握できた。
そもそもが筋肉の動きを見るのは重要なピースであれど、情報全体として考えれば、視覚や剣や体の動きの考えうるパターン、これまでやっていたような予測が大きな比重を占め、筋肉の動きに関しては最初にやったほど詳細に感知する必要はなかったようだ。だから誰に対しても、恐らく魔物に対しても応用が効く。
「力の流れが見えれば、それを逸したり受けたりする力の加減もわかる。もちろん最初は何回か失敗したけど、感覚が鋭くなっていたお陰ですぐに修正できた」
「動きが大きく変わったのはそれでか」
師匠の言葉に頷く。自分ではよくわからなかったが、観戦者や対戦者には驚くような変化だったようだ。
「それで俺の防御が鉄壁になって粘りに粘ったせいで、ソロモンの奮戦丸が切れた」
そこから狂化薬を飲んだソロモンの……奮戦丸、狂化薬の説明もいるのね。
思うにソロモンは力への信頼を持ちすぎていたのだ。力に溺れていたとは言うまい。その技術も卓越し、師匠を除けば最高峰と言ってもいいくらいだった。
そしてその剣の技術で俺の体力を削り、魔法を封じた。
しかしまだその先があるのを、俺は師匠を見ていたから知っていた。技の極限、極地。それこそ目指すべき場所。
ソロモンももっと若い時にそれを見ておくべきだったのだ。恐らく絶対に負けられないと、限界まで鍛えて長く機を伺っていたのだろうが、負けても死ぬわけでもなかったし、むしろ強者と戦って負けることでソロモンはさらに強くなっていたんじゃなかろうか。
そうして最後は魔法でであったが、俺に敗れた。
「とまあこんな感じです。師匠、感想は?」
「マサルもいい加減ソードマスターを名乗るか?」
「ご冗談を」
ソードマスターか。実力から言えば名乗るのに申し分はないのだが、剣を修めたというには俺の技は程遠い。サティに関しては俺の仲間として箔が必要だったからで、俺は特に必要でもなかったのだ。名前を売りたくもなかったし。
「冗談なものか。強さはむろん文句はないし、その強くなるために心技体を鍛えるという話は広く伝えるべきことだぞ」
「でも別に真新しい話でもないでしょう? 全部師匠や軍曹殿、ギュンターさんに教えてもらったことですよ」
それとひとつまみの現代知識か。
「一つひとつはそうでも、それをまとめてわかりやすく理論立て、しかも一言で表現をしてみせたのだ」
「これも俺の国の先人の知識ですし」
「だからと言ってワシが広めればワシの言葉と思われかねん」
「いいじゃないですか。剣聖のお言葉ってことにしておいたほうが絶対にありがたがられますよ。そもそも俺は今、人に指導する暇なんてどこにもないですからね?」
「わかったわかった」
「というわけで今回ソロモンと戦って、ちょっとばかり俺は強くなったんだが、相や奥義と違って、お前らでは習得は難しいかもしれん」
キモが筋肉の動きの観察だからな。空間把握は必須である。ふと師匠に聞いてみる。
「これも流水系になるんですかね?」
「流水ではあろうが、マサル独自の技であるな。そんなことワシにも出来ぬ」
「でも師匠も似たようなことはできるでしょう?」
「勘と経験でなんとなくやっておるだけだ。どうやるかの説明もできん」
やっぱできるんじゃねーか。やはり師匠に至るには読みが重要だな。でも動きは読めても読み合いには負けそうだし技も勝てないしって、あれ? 体力にも自信はないし、俺が勝てるところってなくない?
「師匠にはもっと鍛えてもらわないといけませんし、やはり俺にはソードマスターはまだ早いと思います」
必要もないし、何より今貰っても嬉しくもないし納得もない。
「そうだな。お前は才能に対して体力がなさすぎる」
それはそう。
「出来ることの幅が大きいのだ。だから実戦で鍛えることの効果も大きいのだな」
特に魔法を絡めた攻撃というのは、破壊力がありすぎて普段の修練でそうそう試せない。だからソロモン戦は良い経験になった。
「足りない部分、鍛えるべき部分が多すぎて、確かにこの有様ではまだソードマスターはやれぬか」
そういう師匠はどこか嬉しそうだ。俺の育成が老後の楽しみみたいなところがあるしなあ。いや有り難いんだが。
ソードマスターは実力の証明でもあるが、免許皆伝と考えると独り立ちしてもはや指導は不要ということでもある。そろそろ俺も才能が頭打ちかと思ったが、それはまだまだ先なようだ。
「わたしもソードマスターを返上したほうがいいんでしょうか?」
「サティはそのままもらっとけ。ウィルたちもくれるって言うなら遠慮するなよ」
「そうだ。マサルは特別なのだ。真似をすることはない」
そう師匠が言う。特別というか特殊だな。魔法剣士という性質上、師匠も目指すべき場所を見極められないし、極めるのには時間がかかるのだ。
「マサルは剣聖を目指しているのか?」
フランチェスカがそんなことを言い出す。
「そうだな。お前はワシに勝ちたいのであろう?」
「勝ちたいというか、せめて互角に戦えるくらいにはとは思ってますよ」
剣聖はどうでもいいのだが、師匠に襲われて全滅しかけたのは今でもトラウマだ。
「それが剣聖でなくてなんだというのだ」と、フランチェスカ。
「そもそも次の剣聖はヴォークト殿では?」
「うむ。まずはあれを超えることだな」
ん?
「もしかして俺じゃまだ軍曹殿には勝てないんですか?」
そろそろ勝てそうな気がしてたのだが……
「本気を出したヴォークトは強いぞ? ソロモンを倒した魔力攻撃が決まれば、マサルに勝てる者はおるまいが、普通にやれば魔法をすべて使ったとしてもマサルではまだ無理であろうな」
剣だけではもちろん勝てないが、魔法込みでもそんな評価か。本調子、足が治った軍曹殿とは剣を交える機会はなかったが……軍曹殿は少なくとも奮戦丸や狂化薬使ったソロモン並ってことか。俺の動きは知られているし、相性問題もあるのだろう。パワー系のソロモンはどちらかというとやりやすかったが、流水系の使い手のホーネットさんとか俺本当に苦手だもんな。
魔法を封じられると剣術の地力での勝負となって、そうすると俺の勝率はかなり低くなりそうだ。パワーで圧倒はできようが、それこそ流水系の得意分野、柔よく剛を制すだ。
「いやその前にアーマンドだな。まだあやつとも本気でやってはおるまい?」
二刀流のアーマンドさんとは一度本気での立ち合いの機会はあったが、初見の魔法、スタンボルトで倒しちゃってたわ。
「剣だけだとホーネットさんもだし、ブルーさんにも勝ててませんね……」
「ブルーとホーネットもむろん強いが、三人の中で一番はやはりアーマンドだな。ヴォークトとどちらが強いか、正直判断がつかん」
「そんなに!? なんで後継者にしなかったんですか?」
「二刀なのもあって技術的に正統派とは言えんのもあるが、あやつは何かに縛られるのを嫌うのだ。マサルと同じで剣聖など自分の柄ではないとな」
ワシが死ねば、あやつが自然と剣聖と呼ばれるようになった未来もあったやもしれぬ。そんなことを師匠が言う。
それが嫌でアーマンドさんは後継者探しを手伝っていたそうだ。
師匠を超える前にまだ四人もか。ていうか俺は魔法込みの強さで剣術のみではまだ全然だからな。体力の問題もあるし先は長そうだ。
「じゃあ剣の話はここまでだ。みんなの報告を聞こうか。国王陛下はあれからどうなったんだ?」
強引に連れてきてしまって、そのまますぐに送り返しちゃってたが……




