310話 それぞれの選択
「よくやった」
観客の歓声に応えて手を振り、武舞台から降りたところで師匠にそう出迎えられた。珍しく褒められたのではあるが、素直には喜べなかった。
「ひどい泥試合ですよ」
なんとか勝ちを拾いソロモンを追い返したはしたが、どうにもすっきりしない。全身全霊を込めた本当に最後の一撃は、狂化薬を使ったソロモンの剣を真正面から弾いた。俺のできる最高の一撃だった。それでもやっと打ち勝った程度で、結局は魔法で決着をつけることになった。それも圧倒的な魔力量に任せた、技も何もない攻撃でだ。
「不満があるなら修行してもっと強くなるのだな。勝ち方にこだわるなど一〇年早い」
やっぱ修行かあ。今覚えた技の習熟には時間がかかりそうだしスタミナ、それと筋力も必要だ。一年でどうにかできるのか?
「それよりも途中から動きが変わったな。何か掴んだか?」
「そのことは後で話しましょう」
ゆっくり話したいし、みんなも聞きたいだろう。それにまずはウィルとフランチェスカのことからだ。すぐにでも家に帰ってベッドにでも倒れ込みたいところだが、順番に終わらせていかないと。
困難かつ山積みの仕事に頭が痛くなるし、実際に頭痛もしてきた。
「ウィル、フランチェスカ。二人の賭けは無効だ」
そう二人の前に移動し切り出した。いや勝ててほんと良かったよ。三人まとめてソロモンに負けましたじゃ、まったく格好がつかないし、こうして強気なことを言う事もできない。
「ウィル、自分のことは自分で決着をつけろ。だけどどんな選択をしても俺が味方をしてやる」
ウィルが頷く。今度はフランチェスカに向き直る。
「フランチェスカ・ストリンガー。俺には貴方の力が必要だ。仲間になってほしい」
王国も仲間に引き入れるには、フランチェスカを仲間にするのが手っ取り早い。ウィルとのことがどっちに転ぼうが、もはや関係ない。
「もとよりそのつもりでした。マサル殿のため我が力、微力なれどお役立てください」
フランチェスカが膝をついて言う。
「いま帝国、神国、そしてエルフも力を貸してくれている。王国の力も必要だ。というか俺も王国の貴族になるんだし、王国だけ仲間はずれにはしたくない。だろう?」
そう言ってフランチェスカを立たせる。そもそもエルフの里もリシュラ王国内だ。石油も出たし、王国の協力は欠かせない。
「何やらずいぶんと忙しそうにしているのは知っておりましたが……」
「今更敬語はいらないぞ」
「そう、そうだな。お前はそういう奴だ」
「とにかく人手が足りないんだ。当面、二、三年くらいはこっちに掛かり切りになってほしいし、王国から人材も引っ張ってきてほしい」
フランチェスカは頭は良さそうだ。
「お前たちは一体何をしているんだ?」
「もちろん世界を救うための計画だ。説明すると長くなるから具体的なことはウィルに聞いてくれ。ウィル、あとは任せた」
まともに説明しようとすると丸一日はかかるし、ちょっと今は頭が働かない。
さて、これでフランチェスカとウィルのことはなるようになるだろうか。そう思ったがウィルが俺のほうへ何やら言い出した。
「兄貴……俺はヒラギスに行こうと思います」
ヒラギスに行く。すなわちカマラリート陛下との結婚だ。フランチェスカのことはどうするんだ? 本人もびっくりしてるじゃないか。
「ウィル、ヒラギスのことは気にするな。帝王陛下は俺が説得してやる」
「これはお祖父様との約束ですし、ヒラギスは今でも協力してくれるでしょう。ですがそれでは足りません。俺がヒラギスの王配となれば東方国家群にも積極的な働きかけができましょう」
東方国家群か。南方の国々は神国が概ね影響下に置いているらしい。東方国家群にも盟主、旗振り役の国がいるらしいが、そこに話が通るようになるのは助かるといえば助かるし、始めたばかりの獣人族の国家建設のこともある。
ウィルの目をまっすぐに見つめた。自身のことだ。十分に考えた末の結論なのだろう。
「わかった。ウィルの思うようにしろ」
まあ元々俺はウィルにハーレムルートをおすすめしてたしな。うん、別に疲れてて考えるのが面倒だったわけじゃない。俺の返事に頷くとウィルがフランチェスカに向き直る。そして跪き、その手を差し上げた。
「フランチェスカ殿。こんなことを言えた義理ではないのはわかっています。ですが私と生涯、共に歩んでほしい」
「ウィルフレッド殿のことは決して嫌いというわけではない。しかしカマラリート様とのことは……」
俺たちはそっとその場から離れ、周囲の者も散らした。これ以上は野暮というものだろう。
フランチェスカが分かってくれればいいんだが。ウィルの立場や俺たちのやっていることをを理解してくれれば……いやでも色恋は別か。しかしフランチェスカに突如縁談が舞い込むとかじゃなければ当面は計画に掛り切りになるはずで、ウィルに時間の猶予はたっぷりあるはずだ。
次はエルゴーをと探すと、すでにシラーのところで話し合っていた。うむ。こっちもそのままお任せだな。うちの子は優秀優秀。
「帝王陛下に軽くご挨拶して、エルフの里へ行く」
そう皆に告げて、サティと師匠、それに付いてきたリリアと貴賓席へと向かった。リリアは平然としているが、普通はやはり帝王陛下の前では気後れするらしい。
その陛下は機嫌が良いようだった。俺が来るなりお褒めの言葉を貰った。
「近年稀に見る激闘であったな。観戦していた臣民たちもさぞ興奮したことであろう」
「お見苦しい戦いを見せてしまいました」
「素晴らしき剣士同士の戦いよ。称えこそすれ、何が見苦しくあるものか」
「お褒めいただき有難うございます、陛下」
「余こそウィルフレッドの仇を取ってくれた礼を言わねばなるまい」
「そのウィルですが、約束通りにヒラギスに行くそうです」
ただフランチェスカのことは現在交渉中だからと、今しばらくの猶予をお願いしておく。帝王陛下はちらりと武舞台のほうへと目をやって頷いた。
「それよりも礼の話だ」
そう言って強引に話を戻された。そもそも礼などするような話ではないし、また何か厄介なことを言いそうで思わず眉を顰める。
「孫がマサル殿を気に入ったと言っておってな」
気がつけば帝王陛下の後ろに控えていたお孫さん……ウィルの姉のヴァイオレットだ。婚姻話が出たのは俺が攫われた後くらいで、それは俺への詫びと勇者とのつながりを求めてのものだった。
「それはお断りしましたし、ご本人が乗り気ではなかったのでは?」
田舎者の元冒険者が相手だ。領地も辺境だし貰える爵位も帝国より格下の王国の、しかも子爵である。帝国の姫が嫁ぐには格が低すぎる。それでも帝王陛下が命じるならと、そんな感じだったはずだ。
「顔を合わせる前であったし、それにあの時とは大きく状況が変わったであろう?」
今は帝国内に伯爵領二つ分の領地も貰える。格もなんとか足りるし今後のことを考えると帝王家との直接の繋がりは有用なのはわかる。
「のう、ヴァイオレットや」
そう後ろに控えていたお姫様に声をかけた。今日も姿を見かけはしたが、縁談をお断りしてからは特にリアクションもなかったので気にしなかったのだが……
「はい。わたくしマサル様のことをとても誤解しておりましたの」
勇者と言われているだけの、冒険者としてのし上がった粗忽な成り上がり。いや成り上がりですらまだないな。正式に爵位は貰ってないからまだ無位無官だし、ハーレム野郎でもある。縁談を嫌がるのも当然で、誤解も何もなかったように思う。
「最初は冒険者と聞いて正直気後れしておりましたのですが、これほど知的で洗練された殿方とは思いもしませんでした」
それこそ意味がわからない。なんで今、俺が血みどろの戦いをした後で? タイミングを狙っていたんだろうか。帝国関連の厄介事はウィルに投げて俺へ面倒をかけないようにしていたし、ここまで機会がまったくなかったのかもしれない。
「帝都での治療活動や孤児院への援助、ヒラギス復興へのご尽力などを聞いてとても感銘を受けておりましたの」
俺としては、はぁと気のない返事をするしかない。
「そして帝都大劇場での伝説の演奏!」
原因はこれか。ヴァイオレットの声に力が籠もっている。
「しかしあれは……」
「はい。デランダル様とサティ様の演奏だと存じておりますが、曲をお作りになられたのはマサル様なのでしょう? 劇場の支配人から聞きましたし、チャド・ロッソが素晴らしい、誰にも作れない曲だと絶賛しておりました」
噂を聞いて吟遊詩人のチャド氏を帝城に呼んで、演奏や話をしてもらったそうだ。そういえば口止めとか何にもしてなかったか? 劇場は王家のコネで世話をしてもらったから、そこから情報が漏れるのは別に気にはしないが、思わぬところへの飛び火だ。
「チャド・ロッソの歌も素晴らしいものばかりでしたが、デランダル様の歌った曲はチャド・ロッソをして、歴史を塗り替え、すべての曲を過去にするものだと。ぜひとも聞いてみたいですわ!」
「ヴァイオレットや」
「あ、申し訳ございません。わたくし、マサル様を前にして興奮してしまって……」
「それでだ。ヴァイオレットもこのように大変にマサル殿を気に入ったようだ。どうだろう。もう一度縁談を最初からやり直すというのは?」
「こんな血生臭さい男がお好みなんですか?」
とりあえずヴァイオレットに尋ねてみる。
「剣士としての荒々しさと芸術家の魂が同居する。最高ではなくて!?」
本当に俺のことを気に入ったようだが……
「ヴァイオレット様のご好意は大変嬉しいのですが、やはりこのお話はお断りします」
「そうか。残念だ」
俺の返事にヴァイオレットはショックを受けていたが、帝王陛下はあっさりと引き下がってくれた。ダメ元で申し出ただけだったか。
今度こそ帝王陛下に挨拶をして、皆のところへ戻って転移をすることができた。
「あっさり断って良かったのかの?」
エルフの里へと飛んだところで、リリアがそう尋ねてきた。
「受け入れてもうまく行かないだろ」
「ガレイ陛下と少し話をしてたようだけど、なにかあったの?」と、アン。
「前にあった、ウィルの姉妹との縁談を蒸し返してきたんだ」
ああ、とアンが納得したように応えた。
「うちは今でも冒険者稼業が基本だ。戦いからはどうしたって逃れられない。お姫様じゃうまく行かないだろ」
それもみんな一騎当千の強者揃い。その中では浮くだろうし、何の技能もないお姫様ではその立場は難しいものとなるだろう。
その地位から軽くは扱えない。しかし他の嫁に比べて貢献が少ない。サティでさえ自分はあんまり役に立っていないと気にするくらいなのだ。
だからってそれで変に家中を引っ掻き回されても困る。みんなも今の状況に対して思うところは当然あるはずだ。だが戦いを経験し、神託のことも知ってすべてを飲み込んで不平一つ言わずに俺のやることを手伝ってくれているのだ。お姫様にそれができるのか?
双方の歩み寄り? 確かに時間をかけて仲を、信頼関係を育めばいい話なのだが、問題はそんな呑気なことをしている時間がないことなのだ。
現時点で加護があるか可能性でもあれば考えるが、たぶん俺のファンみたいなものだろう。それくらいならエルフにもたくさんいるが、加護はそう簡単には付かない。たぶん縁とか、想いの重さが足りないんだ。
極秘事項である加護関係のことはしっかり口止めして話せばいいのだが、それで嫁の中でたった一人だけ、ずっと加護がつかないままとなれば? やはり無しだな。リスクが高すぎる。
「俺とか結婚相手としてはかなりよろしくないと思うんだけどなあ」
バンドマンがモテるのかと思ったが、それならデランダルさんにいくはずだろうし。
「あれだけの強さを目にすればのう。それでいて普段は物腰も柔らかく頭も良い。芸術への理解もある。ガレイ陛下も後押ししておる」
「女癖が悪い以外は完璧よね」
そうアンが言う。悪い……わけじゃないと思うのだが、今は暇がないだけで、時間があれば増やすのもありとか考えたことがあるだけに否定しきれない。
「それもマサルほどの甲斐性があればむしろ美点であろうな」
ものは考えようか。ハーレムを許容できるなら、俺が受け入れる可能性は高く見える。
「じゃから一人や二人、増やすのもマサル次第でいいのじゃぞ。帝国との強い結びつきはメリットも大きいじゃろう?」
それだけじゃなく、根本的な俺たちの事情がある。そもそもが詳しいことなどまだ知らないだろうし、巻き込まれる覚悟など到底あるまい。結局は上っ面を見て、いい感じの相手だと思われているだけなのだろう。実態を知ればまた考えは変わるはずだ。
「口の悪い言い方をすれば、今はお姫様の相手をする時間なんてないってことだよ。ウィル、戻ったら改めて上手いこと言って断っておいてくれ」
一緒にエルフの里へ転移してきて、フランチェスカへ千年計画の案内をする予定のウィルにそう頼んでおく。
「はい。ところでフランチェスカ殿には、あー、全部お見せしても?」
計画はともかくとして加護周りの話か。どうしようか。話すつもりはあるし、加護関連は俺から話すほうがいいか。
「計画のことは知りたいだけ全部教えておいてくれ。後は夕食にみんなで集まって話そう」
そうして身ぎれいにし、届いていた基礎科学の教本の校正に取り組んでみたのだが、頭痛でどうにも集中できなかった。内容が難しい、頭をフルに使わないといけない部分が多いし、重要な今後の指針となる教本だ。このまま続けてミスや見落としがあっても困る。
「すまん。今日は無理そうだ」
そう教本の担当者に告げてエルフ城の自室に引っ込む。
回復魔法は効果はなくもないといった程度。鎮痛効果のある生薬もあるにはあるのだが、眠気や意識の混濁もあるそうなので使えない。そもそも今回の頭痛の原因が脳の酷使なので、休息が一番の薬なのだ。
「頭痛なんかは痛みの原因を突き止めてそれを排除すればいいんだけど、今できそうなのが効果のある薬の成分の分離だな。パワーのある電気モーターができれば遠心分離機は作れそうだし」
分離した成分一つ一つを動物実験や臨床試験とかで、基本は手当たり次第に試していく。どれかが効果があれば当たりだ。分子や遺伝子レベルのことはこれからなので、今はそうするくらいしか方法はない。
「たとえばポーションに使う薬草って一〇種類くらい……全部で二〇種類近くあるの? へー」
二〇種ほどある薬草のどれからでもポーションは作れる。ただし使う素材によって効果が違ってくる。初級ポーションはほぼどの薬草からでも作れるが、中級や上級になるにつれ、素材が希少になっていく。
「その遠心分離機で成分を取り出せれば、低級の薬草からより効果のあるポーションが作れるかもしれない」
あるいは頭痛薬とか。
「その遠心分離機はどういったものなのでしょう?」とイオン。
「アイデアはシンプルなものだよ。こういう形状の……」
紙を用意し、試験管と遠心分離機の図を描く。
「こやつを回すだけなのか? 簡単じゃの」
そうリリアが言う。実際構造も考え方もシンプルだ。高速回転で加速、すなわち大きな重力をかけて軽い成分と重い成分を分離させるだけ。そう説明する。
「ただ相当に高速で回さないとダメだから、それに耐えるような強度ときっちりした円形を作る必要がある」
歯車とかギアの回転機構はこの世界にも水車があるから俺が教えないでも作れるはず。水車や人力でもいけないこともないとは思うが、回転数は早ければ早いほど良いからやはり電気モーターは必須だろうか。
「我が方の人員で試してみましょう」
イオンがそう言うので、書いたものを渡しておく。
「初級ポーションの素材から中級や上級ポーションが作れれば革命的じゃの。マジックポーションもじゃ」
「マジックポーションは薬草が希少ですものね」
「抽出した濃縮成分で固形のタブレットでも作れれば、持ち運びが楽になるし保存性も良くなるかもな」
あとは高回転の電気モーターが作れれば旋盤とかミキサーも作れるか? 紙に図と思いつく限りの詳細を書いていく。
とにかく実用的なモーター。そして発電設備と蓄電池を作らないことには話にならないか。だけどまずはモーターさえできてしまえば、やれることが一気に増えるはずだ。
モーターの構造は見たことはあるんだ。どうにか思い出さないとと、うんうんと唸っていたらまた頭が痛くなってきた。
休むつもりがじっとしてるとついつい考え事をしてしまう。サティやリリアを誘って寝室に引っ込むか? それとも大浴場でゆっくりするのもいいかもしれない。
「マサル君、今日はもう休むんだって?」
そんなことを考えていたところにやってきたのはデランダルさんである。
「楽隊のメンバーをエルフから募ってね。女性向けの曲もいけるから、新しい曲を頼むよ!」
音楽ならお安い御用だ。お気に入りの曲を思い出すのに苦労はない。
「ドラムセットを作ったんでしたっけ? ちゃんとできてるか見てみましょうか」
「やっぱりサティを貸してくれないか? ドラムってかなり力とスタミナがいるようでね。エルフじゃなかなかいい音が出せないんだ」
下手にサティが上手かったから、比較して物足りなく感じるのだそうだ。
「それなら獣人から探したほうがいいんじゃないですか? 本格的に楽隊を運営するなら、サティみたいに時々じゃ困るでしょう」
「そうなんだけどねえ。音楽の素養はもちろん、しっかりとしたリズム感も必要なんだけど、獣人の吟遊詩人っていないんだよね」
本当に一からの育成になるのか。そりゃ大変そうだ。
「まだ始めたばかりなんです。メンバーもじっくり集めたらいいんじゃないですか?」
「ここに居る、マサル君の部下の子を試してもいいかい?」
「ゴケライ団はダメですよ。あれは獣人の国の幹部候補にするんですから、引き抜かれたら困ります」
魔法の発動は全員できるようになったのだが、さすがにそれだけではどうしようもない。エルフの里周辺での狩りに連れ回して、魔法の実戦活用も仕込んでもらっている。教育が終わればヒラギスに戻して、魔法の教官にするつもりだから育成は気長にやっているのだ。
「一度ビーストの町で演奏したらどうです? それでドラムの希望者を募る。お、これが新しいドラムセットですか。かなり本格的に見えますね」
帝都の劇場ではなかった、足で踏んで叩くバスドラムもちゃんと実装されている。
「サティの知ってる曲はもう教えてもらったんですよね? それなら単独の演奏会ができるでしょう?」
デランダルさんはコンサートという案に興味を惹かれたようだ。俺としても娯楽の少ない田舎町にいい気晴らしを持ち込める。上手くいくようならヤマノス村にも来てもらおう。
「サティは……」
「サティはもう諦めましょうよ」
たまに貸すくらいなら別にいいんだけど、通しでのコンサートともなれば、練習から相当拘束時間を長くせざるを得ない。無理だな。やはり専用のメンバーをどうにか見つけたほうが絶対にいい。
「それより新曲ですよ、新曲」
デランダルさんはエルフから腕のいい、プロの吟遊詩人を集めたようで、かなり本格的な演奏にできそうだ。さて、今日は何を出そうかな。エルフのドラマーは初心者みたいだし、ゆったりとした曲にしようか。そんなことを考えているといつの間にか頭痛は消えていて、気分もなんだか良くなってきた。
もう二度と聞くことがないと思った曲を今から再現するのだ。これが楽しくないわけがない。気分も良くなろうものである。




