306話 帝都剣闘士大会、決勝その3
前回のあらすじ
・帝都剣闘士大会、決勝の一回戦が終了。ソロモンxフランチェスカ、ウィルxモブ剣士の残りは四人に絞られた
・獣人の剣士エルゴーをスカウト
「フランチェスカはかなり強いぞ。当然エルゴーより強い」
準決勝の前に少し待ち時間、賭けの受付時間があったため、フランチェスカのことを、剣聖の弟子として一緒に修行をした仲で、俺とサティの次くらいに強いとエルゴーに説明してやっていた。
「かなり高度な試合になると思うから、しっかり見ておけよ?」
剣技に関しては幼い頃から剣を握り、天禀と言われたフランチェスカの剣技のレベルは俺たちよりまだ高いはずだ。
ソロモンは奥義を使えるだろうし身体能力が飛び抜けてはいるが、その通常の剣技でフランチェスカが上回ればあるいは……といったところだろうか。
もしフランチェスカですらあっさりやられるようだとウィルに勝ち目はない。
二人が武舞台に登り、歓声が沸いた。
ソロモンは相変わらず緊張感がない様子だ。普通は気合を入れたり対戦相手の観察くらいはするものだが、眼の前に来たフランチェスカにもまるで興味を示さない感じだ。それは強さ故、誰が相手でも勝てるという自信だろうか?
フランチェスカは厳しい表情でソロモンの前に立った。こっちは気合充分だな。ウィルによると調子もいいらしい。
開始の合図で慎重にフランチェスカが歩み寄る。わずかに正面からずれ、微動だにしないソロモンの斜め前で一旦止まった。剣の間合いだが双方動かない。
気がつくと中段でゆらゆら揺らされていたフランチェスカの剣が先手を取った。キンキンキンと素早く剣同士が打ち鳴らされる。更に続くフランチェスカの素早い攻撃をソロモンはなんなく捌いていき、フランチェスカは一旦下がった。
フェイントも交えた流水系の技のはずだが、まるで危なげのないソロモンの防御だった。ススッと距離を取ったフランチェスカに今度はソロモンが動いた。一歩二歩と間合いを詰めながら剣を振るい、そのまま細かい剣の動きでフランチェスカと目まぐるしい攻防を始めた。
エルゴー戦とはまるで違う、大きな剣を器用に操る実に繊細な剣だ。
「なんでもできるタイプか」
それで相手の土俵で相手をして勝つ。しかもエルゴーにはパワー、フランチェスカでは技で対抗してのけるのはレベルが高いなんてもんじゃない。さすがは源流の元になった光輪流の継承者といったところだろうか。
そんなこと考えている間にも激しい攻防は続いていた。フランチェスカが下がってもソロモンが的確に追いすがるため、戦闘が途切れない。エルゴー戦で見せたフットワークも当然健在だ。
フランチェスカが大きく間合いを取ろうとしても、ソロモンがそれを許さない。ソロモンの攻撃をよく防いではいるが、フランチェスカが武舞台の端へと追い詰められていく。
「ああっ」
ウィルが情けない声を出す。フランチェスカが防御のための無理な動きで体勢を崩した。そのまま決まるかと思ったところでソロモンが大きく下がった。
「なんだ?」
そうエルゴーが不思議そうな声を上げた。
「今のはフランチェスカの罠だな。やられそうな振りをしてソロモンの攻撃を誘い込んで、返し技を打った。フランチェスカの剣は掠めただけだったが、ソロモンが一旦引いたんだ」
しかしフランチェスカがかなり息を荒くして休憩をしているところを見るに、実際に追い詰められたのも確かなのだろうか。
フランチェスカは呼吸を整えながらソロモンを回避して中央へと移動する。ソロモンはそれを妨害する気はないようだ。ここまでの形勢は互角だろうか。ソロモンはまだ余裕ありげだが、フランチェスカの攻撃も通用した。
ゆっくりとフランチェスカが休息を取った後、再びの攻防が始まった。フランチェスカのカウンターを警戒してか、ソロモンは防御主体だ。しかし押されている感じはない。堅実な防御はギュンターさんを彷彿させる。
フランチェスカが一気にギアを上げてきた。鋭さを増した攻撃にソロモンは回避で手一杯になる。
しかし二人の剣が絡むような動きをして大きく離れた。
「フランチェスカの返し技にソロモンが返し技を合わせようとして防がれた」
その後何か技を出そうとする動きもあったが、それが失敗して仕切り直しか。ソロモンが引いた感じだったが、フランチェスカも追撃するほど余裕はない。
「お前らあの女より強いとかほんとかよ?」
誰が見ても相当に高度な剣技のやり取りだ。高度すぎて一部、俺が見ても意味がわからない動きもある。たぶん相対してる相手にはいい感じのフェイントになっているんだろう。
「あの女なんて言ってはダメです。フランチェスカ様は公爵令嬢でリシュラ王国軍の将軍ですよ? でもそうですね。わたしとマサル様なら勝てます」
サティは勝てるだろうな。俺はちょっと自信ない。フェイントもカウンターも見えているし、剣速で上回るから対応はできるはずだが、俺は力押しするタイプだから流水系の使い手とは少々相性が悪い。順当に勝てる可能性も十分にあるが、二、三発食らってゴリ押しで勝つみたいになりそうだ。
「でもフランチェスカ、ずいぶんと強くなってるな」
全体的な動きの向上と多彩なフェイント。それからカウンター。短期間の修行でよく仕上げたものだ。
今度は自分の番とばかりにソロモンが仕掛けた。素早い踏み込みからの攻撃、そして剣のやり取りの後、またフランチェスカのカウンター。今度も防がれ、フランチェスカが距離を取る。
カウンターも何度も見せすぎたな。来るとわかっていれば対応策もある。せめて奥義が使えればそのカウンターの一撃は必殺ともなり得ただろうに。
フランチェスカが歩を進める。そうして武舞台中央で双方が危険なほど近い間合いで睨み合う。そのまま至近距離での打ち合いが始まった。フランチェスカは超近接の間合いでの攻防に賭けたか。ソロモンは剣も体もでかいだけに懐での攻防は辛いはずだ。
フランチェスカの連続攻撃にソロモンの体がわずかに泳いだ。ほんの小さな隙に、フランチェスカの当たるかと思われた攻撃が、あり得ない動きで復帰したソロモンの剣に跳ね上げられる。無防備になったフランチェスカにソロモンの剣が……
ゴッと剣が革鎧のぶつかる重い音が響く。ソロモンの剣はフランチェスカに深く打ち込まれ、フランチェスカの剣もまたソロモンに届いていた。
カウンターによるソロモンとの相打ち。しかし剣の持つ威力が違いすぎた。フランチェスカが武舞台にどさりと崩れ落ちる。
「これが源流か。なかなかやる」
倒れたままぴくりとも動かないフランチェスカを確認して審判が決着を告げた。
「フランチェスカ殿!」
ウィルが駆け寄り、回復魔法をかける。それで意識を取り戻したフランチェスカは、ウィルの助けで立ち上がると頭を振りながら武舞台を降りてきた。
「すまない……」
誰にとも無くそう言う。相手が強かっただけで誰が悪いわけでもないが、それでも口に出てしまったのだろう。
「フランチェスカ殿の敵は私が必ず!」
ブルーにも届きそうなパワーにフランチェスカと同等以上の剣技。しかもここまで奥義らしい奥義も出していない。正直ウィルでは勝つのは難しそうだ。
「それよりも次はお前の試合だぞ」
準決勝の相手はすでに武舞台でスタンバイしている。それに気がついたウィルは頷くと武舞台に向かった。
ウィルはずいぶんと気負っている様子で、始まるや否や、まるでエルゴーのように乱暴にがんがんと攻撃して相手に何もさせずに決着。どうだと言わんばかりに剣を掲げた。
ウィルには加護のお陰で十分なパワーとスピードがある。ゾーンを上手く使って加護の力を引き出せれば、俺のような烈火奥義も使えるはずだ。ソロモンがここまで見せた、フランチェスカを少し上回る程度の実力ならそれなりの勝算はあるはずだ。
しかしこうも冷静さを欠いては……
「ウィルがやられたら次は師匠の番ですかね」
「何を言っておる。次はマサル、お前がやるのだ」
当然のように師匠が言う。ウィルやフランチェスカが負ける前提での話をするのも空気が読めないにも程があったし、こう言われるだろうから言い出したくなかったのだ。
「でもお目当ては師匠でしょうに」
一応抗弁はしてみる。師匠がやったほうが話が早いし、ソロモンも納得もすると思うんだが。
「流派同士の争いなのだ。マサルも無関係とは言えんぞ?」
ホーネットさんには師匠に無理はさせるなと何度も言われてる。もし俺が拒否して師匠の出番なんてことになったら絶対に怒られる。そして俺以外だと強いといえば軍曹殿か。招待席でみんなと一緒に観戦しているが、やりたくないから代わってくれとはとてもじゃないが言えないよなあ。
「魔法は使っていいですか?」
「まあ良かろう」
それならやってもいいと頷く。魔法を使っても俺はまだ師匠には及ばないのだ。その俺を倒せねば師匠への挑戦資格はない。
それにソロモンに俺が全力を出せるだけの実力があるなら、それはそれで楽しみではある。負けでもしたら俺の勇者としての名声に多少は傷がつくかもしれないが、それこそそんなものがどうしたって話だ。
いや、ここでやることもないのか? そもそもソロモンは連戦になるからかなり不利だろうし、やるなら明日以降、観客のいない場所だな。
気合を入れてソロモンを睨んでいたウィルが恥ずかしそうに戻ってきた。ソロモンは治療のために武舞台を降りているし、多少なりとも休息も必要だ。決勝までの待ち時間もある。
「少し落ち着け。冷静にならないとゾーンは使えないぞ?」
いや案外いいかもしれないな。頭に血が昇って乱暴に戦うフリをする。今までのパターンだとソロモンはウィルの攻撃を受けるだろう。頃合いを見て、カウンターでも打ち込んでやればいいと作戦を提案してみる。
「ちょっと卑怯じゃないですか?」
俺たちから少し離れて所在無げに立つ、鎮痛な面持ちのフランチェスカを気にしてウィルが言う。フランチェスカがどうなるかはウィルの戦いの結果待ちで、今の段階で言えることはないのは俺たちもフランチェスカもわかっているからそっとしている。慰める言葉もないし、ウィルにしてもソロモンとの戦いに集中する必要がある。
「そんな余裕のあることを言える相手か?」
俺の言葉に、ならばそれで行きましょうと納得したようで、再び気負った風で武舞台に向かった。実際のところフランチェスカが倒されて頭にきているのは本当なのだろう。
「光輪流ソロモン・ライトマン。目当てはお師匠様か?」
ウィルとしても確認しておきたかったのだろう。
「そうだ。剣聖を倒し、我が剣の最強を証明する」
最強の剣士か。これ、ウィルが負けたとして、俺みたいな魔法剣士が出て行って納得するのかね……
「ならば! まずは私の屍を超えていくのだな! 行くぞ!」
ウィルが大きく剣を掲げるのを見て、慌てて審判から開始が告げられた。王子様に忖度しとるな……まあ試合の勝敗にはさすがに介入できまい。
初撃、力任せに叩きつけられたウィルの剣をソロモンは受けてみせた。そのまま剣を切り返し、ソロモンの反撃を許さずウィルは二度、三度と強打を叩きつける。乱暴ではあるがしっかり剣技に適った、ただ力をぶつけたエルゴーとは隔絶した動きだ。
四度目の剣戟でソロモンの剣が押されて流れた。どうやらここで出力を限界まで上げたようだ。
隙のできたソロモンにウィルの剣が叩きつけ……その横薙ぎの剣も、途中で軌道が変わる。フェイントだ。
ギンッ。剣と剣がぶつかった。見切られたのか、ソロモンの剣がしっかりと防いでいた。
「今のを止めるのか」
悪くない流れだったし決まるかと思ったんだが、少々性急すぎたか。提案通り、カウンターを狙ったほうが確実なはずだが、ソロモンの防御を崩したことで欲が出てしまったのだろう。
「偽の攻撃だと読まれておったな」
つまりフェイント用の剣の動きが本物の攻撃じゃないと見抜かれ、引っ掛けるのに失敗したということか。フェイントでもきちんと力や殺気を込めないと、このレベルだとそこでバレてしまう。
ウィルの経験不足が祟ったか、それともソロモンの読みが師匠に近いものがあるのか。
ともあれ不意を打つ作戦は失敗で、戦いは仕切り直し。ここからはウィルの地力での勝負となる。
「ソロモン、ギュンターさんと同程度くらいの実力ですかね?」
「さてな」
師匠はそう言って言葉を濁した。自分の目で確かめろってことか。もしくは自分の体で。
ウィルはソロモンと正面から堂々と渡り合っていた。フランチェスカ戦も見応えはあったのだが、玄人向けで少々難解な動きが多かった。こちらはこれぞ正統派剣士同士の戦いといったわかりやすく観客受けの良さそうな試合展開で、大きな動きがある度に観客は沸いていた。
今回もまたソロモンは相手に合わせたスタイルで戦っている。
ウィルのスタイルはバランス型だろうか。どんな動きや技もだいたい器用にこなし、これといった尖った部分がない。しかし器用貧乏というには加護でスピードとパワーは常人離れしているし、普段の修練相手が俺やサティなのだ。欠点らしい欠点はないし、攻撃も防御も俺たちから見ても相当レベルが高くなっている。剣だけなら俺を超えるかもしれないという意見は今でも変わっていない。
「ウィルフレッド殿は強くなったな」
フランチェスカがそう呟く。だがそれでもソロモンには及ばない。それがわかった苦い言葉だ。互角に見えた攻防は徐々にウィルが押され気味に変化している。
「まあ見てろ。奥の手があるんだ」
それで勝てるかは不明だし、そもそもゾーンが本番で出せるかどうかだ。
ウィルは手を変え品を変え攻め立ててはいたが、すべて防がれソロモンの反撃に劣勢になりつつあった。
全力で戦っているウィルは息を切らせているが、それは相手をするソロモンも同様だ。
楽に勝ち上がったウィルと違ってソロモンは強い相手との三戦目で、スタミナに不安がないのかと思ったが、あったとしてもどれも格下の相手だ。少々スタミナが切れた程度では揺るがないだろうか。
何度目かの交戦。しかし趨勢はもう誰の目にも明らかだった。ウィルの攻撃は通用しないし、同じように動いても、強者に挑むウィルと格下が相手のソロモンでは疲労の度合いがまるで違う。
そもそもが修行期間が短い俺たちはどうしてもスタミナ面には不安がある。一旦双方引いて休憩を取るようだが、比較的落ち着いたソロモンと相対的に、ウィルは肩で息をしている。
ある程度息が整ったところでウィルはゆっくりと深呼吸をし、スッと目を閉じた。
「出ますよ」
ウィルの修行に付き合っていたサティがそう教えてくれる。なんの捻りも作戦もなしに、ここで出すのか?
「戦闘中よりああやったほうが出しやすいみたいです」
そりゃ仕方がない。覚えたてだものな。むしろここぞという場面で出すためのルーティンを組み上げたのを褒めてやりたいところだ。
ウィルの雰囲気が変わったことで何か来ると警戒したか、ソロモンが構えを変えた。半身になって少し姿勢を落とす。防御を高めてどんな動きにも対処できるような構えだ。強いのに油断もまったくしないのか。嫌な奴だ。
確かに奥義の瞬発力を生かした先制の一撃や、無拍子など警戒すべき初手の技は多い。だがウィルは正面からゆっくりと間合いを詰めた。
あくまでも堂々と正面から。それがウィルの選択か。
間合いに入るや、ウィルが上段から烈火剣を放った。むろん本来の奥義ではない。しかし奥義と呼んで遜色ない剣速は、これまでのウィルの剣より遥かに加速し、ソロモンは辛うじて躱すだけで精一杯となっていた。
続けて放たれた横薙ぎの雷光剣にソロモンの剣が弾かれる。後退しようとするソロモンに、追いすがったウィルの追撃が届いた。
ソロモンの胴鎧が切り裂かれる。刃引きの丸めた剣先では本来あり得ないはずだが、ゾーンによる限界を超えた速度がそれを可能とした。
ウィルはソロモンを短時間ではあるが凌駕してみせた。
しかし浅かった。ソロモンは無理な後退で体勢を崩しつつも、ウィルのさらなる追撃を確実に受けていき、切り裂かれた部分からは血も見えない。
ウィルの動きは急速に落ちていた。ゾーン状態とはいえ奥義の三連撃だ。俺でもそうなる。
ゾーンに加えての奥義の連撃に賭けたのだろう。しかし不発に終われば体への負担のみが残る。
限界を迎えて目に見えて動きが悪くなっているのだが、それでもソロモンとまともに戦えている。ゾーンがまだ残っている?
ソロモンの攻撃にウィルがカウンターを合わせた。ソロモンはそれをギリギリで回避しつつ後退する。肩で息をするウィルは追撃もしない。おそらくできない。
すぐにソロモンが動いた。休憩も許さないのはウィルが危険と見たのだろうか。
迫るソロモンにウィルががっちりとした防御態勢を取る。
ソロモンが上段から豪剣を放った。奥義烈火剣だ。ウィルはそれを回避してみせる。続けての横薙ぎの剣も受けるがウィルがよろめいた。
そして三連撃目。不利な体勢ながらもウィルは踏み止まり剣をぶつけ、ソロモンの剣戟を見事に止めてみせた。
当然だ。奥義の連撃とはいえ、俺とサティが練習相手なのだ。奥義など見慣れたものだ。ましてや今のはウィルの攻撃への返礼か、同じ技を模倣してみせたものだった。
だがそこまでだった。ウィルは足元も怪しく、ソロモンは休ませない。ついに一撃を食らい、膝をつく。
さすがに倒れたところにソロモンの追撃はない。ウィルはそのまま回復魔法の詠唱を始めた。それを眺めながらソロモンが疑問を投げかけた。
「続けたところでどうなるというのだ?」
回復して立ったところで、ここから試合がひっくり返るとは思えないのはその通りだ。
「貴様は相手が強いからといってすぐに諦めるのか?」
そうだ。簡単に戦いを諦めるような鍛え方はしていない。それに、とウィルは続ける。
「私は! お前よりずっと強い剣士を知っている! この程度でっ!」
そう叫ぶやしっかりと立ち上がった。この程度の苦境は、俺や師匠が何度も与えてきた。
「その意気やよし」
ソロモンは剣を構え、寸分の油断もなく、手加減もなくウィルに剣を浴びせる。ソロモンの力強く鋭い攻撃にウィルは反撃すらろくにできない。
技も力も相手が上。乾坤一擲のゾーンも凌がれた。勝機はまったくない。それでもウィルは諦めずに戦った。
追い詰められ、一撃を食らってすら今度は倒れず耐えてみせた。しかしそれで足が止まり、完全に防戦一方となる。
そしてそれすら長く続くことなく、ソロモンの剣をまともに食らって地に伏せる。ウィルは剣を手放さず、回復魔法の詠唱を試しみて続行の意思を見せるが……
「審判、決着だ」
修行なら立たせて続けてもいいが、試合でこれ以上の続行は意味がない。俺の言葉に審判が決着を告げ、帝都剣闘士大会はソロモンの優勝で幕を閉じた。
すぐに表彰や賞金の授与などがあるはずなのだが、勝者のソロモンはまだ終わりじゃないとばかりに戦意を滾らせ、倒れたウィルを後にし、俺たちのほうへとまっすぐに歩を進めるのだった。




