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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第二章

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24話 おまわりさん、こっちです!

 目を覚ますと、生き物の気配を察知した。目の前に。ぱっと目をあけるとサティがくっついて寝ていた。布団もかけてある。寝袋から這い出てサティを揺り起こす。


「あの、夜中に目が覚めて、マサル様が床で寝ていたので、ベッドに運ぼうかと思ったんですが重くて」


 主人を床で寝かせて奴隷がベッドだなんて、とんでもないことだ。それで布団をかけて一緒に床で寝たそうである。


「今日はサティの布団を買いに行こうな」


「ベッドは大きいですし、わたしはマサル様と一緒のほうが」


 聞けば奴隷商では、あの一番年齢の上だった色っぽいおねーさんと一緒に寝ていたそうで。一人で寝るのは寂しいのか。


「色々教えてくれてすごく親切にしてくれたんです」


 裸で喜ぶとか教えたのあいつか!余計な知識を……




 とりあえず朝食を済ませる。サティには昨日と同じスープを作らせた。それにパンだけつける。ちょっと味付けが塩からかったが、まあ及第点だろう。塩味が濃くてパンがすすむ。




 朝食後、お風呂に入ることにした。昨日入るつもりだったし、今日はお客様を招待してあるのだ。身奇麗にしておきたい。昨日サティのギルドカードを作ったとき、ティリカちゃんに催促されたのだ。「肉」と。それでお昼にティリカちゃんを招待して、ドラゴン肉をご馳走することとなった。




 この家の浴槽は広い。大人2人はゆったり入れる。家を借りるのを決めた理由の一つでもある。その分、お湯をいれるのも大変なんだが、魔法を使えば、はい、一分でお風呂の用意が完了。便利である。温度調節もうまくなって、ちょうどいい湯加減だ。


 お風呂をいれるときに大量の水を出したら、少しかぶってしまったので先に入ることにした。お湯を頭からかけて、頭をごしごし洗っていると、扉ががらりと開いた。目が開けられなくてみれないが、入ってくるのはもちろん一人しかいない。サティには先に入るとしか言ってない。待ってろとも入ってくるなとも言うのを忘れてた。まさか突入してくるとは思わないだろ。


「マサル様、お背中をお流ししますね」


「いや、ちょっと待って!」


 頭を泡だらけにしたまま手を動かすと、なにやらやわらかい感触が。サティが「きゃっ」と声をあげる。


「ご、ごめん」


 今の感触は……


「あ、先に頭ですね。じっとしててくださいね」


 サティに頭を押さえられ、わしわしと洗われる。やばい、これどうするんだ。出て行けとか言ったら絶対泣くぞ。


「あの、サティさん。お風呂は一人でゆっくりとですね……」


「だめです。ご主人様のお背中を流すのも奴隷の大事な仕事なんです。絶対におろそかにしてはいけないっておねーさんが言ってました」


 またあの人か!


「頭、気持ちよくないですか?わたし、おねーさんと洗いっこして上手だって褒められたんですよ」


「いえ、気持ちいいです……」


 洗いっこ……ちょっと想像してしまった。


「はい、流しますねー」


 頭についた石鹸を洗い流される。幸い、サティは後ろに移動したようだ。


「じゃあ次は背中を洗いますね」


 こしこしと背中を洗われる。説得しないとこのままでは色々とやばい。


「あのですね。裸を見せるのは淑女としてはしたないんじゃないでしょうか」


「お風呂は脱ぐってマサル様が言われました。それにわたしは奴隷だから淑女じゃないです」


 背中を終って腕を取られて洗われていく。とても気持ちいい。おねーさんが上手だというのもわかる。たしかにこういうシチュエーションはあこがれていたが、なんていうか、唐突すぎるんだよ。あ、両手も終った。


「前も洗いますから、こちらをむいていただけますか?」


 いやいや、まずい。それだけはまずい。


「いや!前はいいから!自分で洗うから!ほら、先にお湯につかっておきなさい」


「そうですか?」と、少し残念そうにサティがお湯に入る。よっし、回避した!とりあえず急いで前を洗う。お湯で泡を流す。ちらりと見ると、サティは湯船につかってこっちをじっと見ていた。ボク狙われているの?きっとご奉仕のタイミングを窺っているんだろう。どうしようかためらっていたら「こちらへどうぞ」と腕を引っ張って立ち上がりかけたので、慌てて湯船に入ってしまった。


 サティに背中を向けて湯船につかる。久しぶりのお風呂は気持ちいいな。孤児院のときは子供がいっぱいいてゆっくりできなかったしなー。いやー風呂っていいわーなどと現実逃避をしていると、背中にぴとっとサティがくっついてきた。


「あの……わたし、一生懸命がんばってみたんですけど、何かいけなかったですか?」




 サティは当惑していた。何のとりえもない、目の悪いわたしを買ってくれたのだ。当然そういうことなんだろうと、ことあるごとにアピールしているのだが、この反応である。おねーさんの言うとおりやってみたけど、何か間違っていたんだろうか。せっかく買ってもらえたのに、またあそこに戻されるんだろうか。もうあそこは嫌だ。初物のままなら高く売り戻すことができる。だから必ずご主人様の寵愛を受けるようにとおねーさんは言っていた。手を出したあとなら、売るにしても価値は下がるし、情もわくだろうから。だからがんばりなさい。お風呂だって男の人の裸を見るのは、ほんとは恥ずかしかったんだけど、思い切ってみたのだ。背中をむけているご主人様を見て、悲しくなってきた。もしかしてまた売られちゃうんだろうか。




 サティがくすんくすんと泣き出した。


「いやいや、いけなくはないよ。サティはがんばってるよ!」


「でも!わたし昨日だって、先に寝ちゃって、マサル様を床に寝かしちゃって。料理もうまくできないし、マサル様はすごい魔法使いだから、わたしなんかいらないんじゃないかって……」


「いらなくなんかない。じゃなかったらわざわざ買わないし、サティのことは大好きだし、欲しいって思ってるよ」


「ほんとうですか?」


「うん、ほんとほんと」


「じゃあわたしのこともらってくれますか?」


「えっと、じゃあ夜にね?それでいい?」


「はい!」


 言っちゃったよ。でもほんとうにいいんだろうか。サティはすごく喜んでるけど。おまわりさんこっちです!って通報されたりしないよね?


「あの、じゃあ、洗いっこを……」


「あ、先にあがるから。サティはゆっくり洗ってからあがるんだよ」


 みんなすまん。童貞にはこれ以上無理だ。おれはサティを置いて風呂から素早く離脱した。

次回、明日公開予定

25話 マヨネーズを作ろう


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― 新着の感想 ―
[気になる点] そもそもこの世界で奴隷を買うという時点で、そういうことも視野に入っているはずなのに、ここでモゴモゴするのは、読んでて納得感がないです。 それなら最初から買わなければいいのに。
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