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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第二章

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17話 倒したあとはおいしくいただきます

 みなでドラゴンの側に集まる。改めて近くで見るとでかい。この人たち、よくこんなのを肉弾戦で倒したな。


「よくやったぞ、マサル!」「すごいよ、マサルさん!」「エリザベスもよくがんばったな」


 合流したおれたち2人をみんなで歓迎してくれる。


「ふふふん。わたしの考えた作戦のおかげね!」


 エリザベスはふんぞりかえっている。だが、そもそもあの自称、最強魔法で落とせていれば、ここまで苦労しなかったんじゃなかろうか。確かに強力な魔法だったけどさ。おれも最初の一撃外しちゃったから人のことは言えないけど。

 

 おれ的には一番の殊勲者はあの盾の人だと思う。このドラゴンの攻撃を3度も正面から受けるとか、半端じゃない。盾の人はと探すと、いた。ドラゴンをぺたぺたと触っている。全身鎧で顔もわからないが、立って動いてるから元気なのか?だが、左手の大盾は変形し、鎧は煤で真っ黒だ。


「あの、傷は大丈夫ですか?」


「ああ、ポーションは飲んだし、回復魔法も自分で少し使えるから、歩けるくらいには回復したよ。もう1戦やれって言われたらなんとかできるかな」


 いやいや、無理しないで!


「魔力に余裕があるから、回復魔法かけますよ」


「お、そうか?助かるよ。正直立ってるだけでも結構つらくってなー」


 やっぱりやせ我慢か。【ヒール】【ヒール】【ヒール】これくらいで大丈夫だろうか?ついでに浄化もかけて鎧をきれいにする。煤が取れて見えた鎧もところどころへこんでぼろぼろだった。


「おお、だいぶよくなった。鎧もきれいにしてくれてありがとう」


 まだ完治してないのかよ!あわてて【ヒール】【ヒール】【ヒール】追加で3回かける。


「うん、もう大丈夫だ。ありがとう。やっぱり治癒術師がいるといいね」


「わたしだって魔力が残っていればそれくらいできるわよ」と、エリザベス。


「エリザベスは2人も抱えてフライを使ってたから仕方ないよ。おれとかほら、上のほうで一発撃っただけで、魔力あんまり使ってなかったし」と、フォローしておく。


「そうよね!ドラゴンを倒せたのもわたしのおかげなんだから!」


 すぐに機嫌のよくなるエリザベス。ちょろい。


「ほかにも、怪我してる人いたらなおしますよー」


 数人怪我人はいたが、盾の人ほど重傷者はいなかったので、さくさく治療していく。死人がでなかったのは奇跡的だな。あの最後のブレス、まともに食らっていたら果たして生き延びられただろうか。たぶんブレスで死ななくても気を失って墜落死してたな。


「軍曹どの、ブレスは連続で吐けないと聞いたのですが、最後のあれは……」


「うむ、そうだな。たぶん、かなり無理をして撃ったんだろう。あのブレスはだいぶ弱かった気がする。それに、あのあとは一度もブレスを吐かなかった。地面に落ちたダメージのせいの可能性もあるが」


 なるほど。最後っ屁ってやつか。本当に死ななくてよかった……。今更ながらいかにぎりぎりの生還だったか理解できて、震えてきた。


「それと、このドラゴン。もしかして上位種かもしれないな」

 

「きっとそうよ!わたしのメガサンダーを食らって耐えるなんてありえないわ!」


 サンダー系の魔法には電撃による麻痺効果もある。本来なら短時間、確実に行動が止まるはずなのだ。


「上位種というのは?」


「文字通り、通常のドラゴンの上位にあたる種だ。より強く、賢明で、狡猾だ。わたしはそう多くのドラゴンと戦ったことがあるわけではないが」


「そうだな。可能性はある。我々がこのサイズでこれほど手こずるはずもない」と、これは暁の戦斧のリーダーだ。名前は忘れた。たしか鮮血のって通り名だった。20人も一気に覚えられないし。盾の人の名前はあとでエリザベスに訊いてみよう。


「帰ってからギルドで調べてもらわないとな。マサル、こいつを運べるか?」


 うん、とうなずいてドラゴンを収納する。どんなにでかくても1枠で収まる。相変わらずチートだ。このサイズが入るなら家とか運べるかな?そこらへんのでかい木はどうだろう。収納。だめか。地面に根が生えてるからかな。家も無理そうだ。さすがにそこまでチートじゃないか。エリザベスがこちらをじーっと見てる。なんだろう。また機嫌が悪くなったのか?


「やっぱりずるいわ。ねえ、それどうやってやってるのよ。ケチケチしないでわたしにも教えなさいよ!」


 むう。本職の魔法使いが見るとやはり違和感があるのか?ここはうまくごまかさないと。


「地道にやるんじゃなかったのか?」


「うぐ。地道にもやるわよ!でもなにかヒントでもちょうだいよ!」


「うーん、前にも言ったけど、普通にやってるだけで特に何にもしてないんだけどなー。そういう才能?向き不向きがあるんだよ。ほら、おれもエリザベスみたいなすごいサンダーとか使えないし。あれはすごかったな!あんなの見たの初めてだよ。おれのほうが風魔法を教えてもらいたいくらいだ」


「う、そ、そう?それほど言うなら教えてあげてもいいけど」


 適当に言ってみたが相変わらずちょろいな。なんか風魔法を習う流れになってしまったが、まあいいか。水も練習中だし、風もこれで覚えられたらあとは土でコンプリートだ!


「ぜひ!お願いします。エリザベス先生。いや、師匠!」


「いいわ。たっぷり教えてあげる!わたしは厳しいわよ!」


「はい、師匠!」


 エリザベスはご機嫌だ。にっこにこしている。おれも気分がよくなった。美少女に色々教えてもらえる。しかも無料で!きっとアンジェラみたいにナイフで迫ったりはしないだろう。勢いだけで決まったが、これはいい具合に話がまとまったな!

 

 

 宵闇の翼の人たちもやってきた。

 

「巣と周辺を見てきましたけど、何もありませんね」


「お宝期待してたんだがなあ」


 ドラゴンは巣に宝物を溜め込む習性があるらしい。

 

「作ったばかりの巣だ。これから集めるところだったんだろう」


 お宝ってどんなのか聞いてみた。

 

「そりゃあ、金銀宝石がざっくざくだよ。あいつら光物が大好きだからな。すごいのになると国が買えるほど溜め込んでるらしいぜ。いやー残念だな」




 キャンプへの帰り、エリザベスがぺらぺらと風魔法について講釈をたれるのを聞く。さすがは本職の魔法使いだけあって、役に立ちそうな知識も披露してくれる。だが、キャンプ地に着く頃にはなんだが元気がなくなってきた。ちょっと足元が怪しい。


「ああ、体力が切れたんだな。今日はでかい魔法もつかったもんな」と、暁の戦斧のリーダーの人が話しかけてきた。斧を装備した鮮血のなんちゃらさんだ。


「ほら、エリー。ちゃんと歩きな。それともおぶっていくか?」


「ナーニアがいい……」


 はいはいといいつつ、女戦士の人がエリザベスをひょいっとお姫様抱っこするとスタスタ歩いていった。あの女の人はナーニアっていうのか。


「君は元気だね。エリザベスは魔法を使いすぎるといつもああでね」


「おれも魔力使い切ったらあんな感じですよ。すっごい疲れるんですよね。今日は割と魔力に余裕あったんで」


「それにしても、今日はマサル君のおかげでずいぶん助かったよ。礼をいっておく」


「いやいや、魔法一発当てただけですから」


「でもあれのおかげで地面に落ちて、もうふらふらだったからね。楽に倒せたよ」


「あれもだめだったらどうするつもりだったんですか?」


「そうだね。降りてくるたびに翼を攻撃してなんとか叩き落すってところかな」


「無茶じゃないですかね」


 盾の人が死んじゃうよ!


「倒せないとは思わないけど、何人か死んだだろうね。だからね、今日は本当にありがとう。エリザベスが助かったのは君のおかげだよ」


「いえ、そんなことは。エリザベスの考えた作戦、そのままやっただけですし」


「まあ感謝してることはわかってよ。それはそうとマサル君、ソロなんだって?どこかのパーティーに入る予定はないのかい?アリブールとは親しくしてるみたいだけど」


「いまんとこ予定はないですねー」


「じゃあうちなんかどうだい?エリザベスも気にいったみたいだし。ちょうど魔法使いを探しているところでね」


 暁の戦斧に入ればどれほど報酬が稼げるか。Bランクともなれば有名人。もてもてである。と暁のリーダーの人は力説する。もう数回、大きな依頼をこなしたらAランク昇格もあるかもしれないそうだ。


 でも暁の受ける依頼って、きっと今日みたいなのだよな。毎回こんなのやってたらそのうち死ぬ。エリザベスも躊躇なくドラゴンに突っ込んでいったし、この人たち、命が惜しくはないんだろうか。やはり命を大事にの方針は守るべきだろう。


「おれにはちょっと荷が重いですかね。今日だって死にそうな目にあったし、当分は危険な依頼はやりたくないなと」


「そうかい?気が変わったらいつでも知らせてよ。マサル君ならやっていけると私は思ってるよ」




キャンプにつくと、ラザードさんに呼ばれた。


「マサル、ドラゴンだしてくれよ」


 何するんです?と聞きながら開けた場所にドラゴンを出す。


「もちろんドラゴンステーキだ!ドラゴンを倒したらやっぱりこれがないとな!」

「いやいや、ドラゴンの肉はやはりシチューが絶品で」

「食べるの初めてなんですよ、楽しみだなあ」


 わいわい言いながらドラゴンの一部を切り取っていく。ドラゴンステーキか。某ゲームだと定番だったな。ちょっと楽しみだ。どんな味がするんだろう。


「味もさることながら、強いモンスターの肉を食べると、その強さを体に取り入れられるという説があってな。ドラゴンの肉は最高級品だな」と軍曹どのが解説してくれる。


「実際のところはわからんが、信じている人も多い」


 ステータスを見ればわかるだろう。食べたあと確認してみよう。


 料理が開始され、誰かが酒を出してきた。殴り合い寸前まで議論が白熱した結果、ドラゴン肉はステーキとシチュー両方作ることにしたようだ。まだ危険な森の中だと思うんだけど、酒盛りとかしてていいのか。


「ドラゴンの巣があったからな。この近くにはめぼしいのはもうおらんだろう。午前中の調査でも何もいなかった。それに宵闇の翼が見張りをかって出てくれてな」


 多少はめを外すのはかまわんだろうと、軍曹どの。そういえば宵闇の姿が見えない。なるほど、ドラゴン戦でいいとこがなかった分、働いてるのか。そういうことならと、アイテムからお酒を取り出し振舞う。軍曹どのにもお酒をすすめるが、丁重に断られた。まだ任務中だということなのだろう。さすがだ。


 ドラゴンステーキが焼けるのを待っていると、最初に焼けた肉を差し出された。少し離れたところではエリザベスも肉をもらってる。殊勲者の魔法使い2人に最初にってことだろうか。美味しそうな匂いがする。エリザベスを見ると幸せそうな顔をして食べていた。それを確認しておれも食べる。塩と何かのスパイスで軽く味付けされた、ドラゴンの肉はとても美味しかった。鶏肉に近いだろうか。やわらかくてジューシー、滋味あふれる味は、いままで経験のしたことのない味だ。最高級地鶏とか神戸牛とかって食べたことないけど、こんな感じなのかな。


 その夜はステーキもシチューもたっぷりと堪能して酒を飲んで寝た。ステータスを見たが、ドラゴンステーキで特にステータスがあがるってこともなかった。

次回、明日公開予定

18話 魔王と勇者と


至高vs究極 ドラゴン肉料理対決!なんてのもちょっと考えた。

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