150話 帝国辺境での戦い その2
「待っていたぞ」
サティとシラーちゃんを伴って村へ入ったところに、フランチェスカが立ちはだかった。
村人の要望を聞いての外壁の微調整も終わり、村人たちの歓待を受けに向かおうとしたところである。
「今日の仕事は終了だよ」
何を待っていたのかは聞くまでもないだろう。
「仕事じゃない。勝負だ」
もっとやだよ……
今日はもうゆっくりできると思って、急いで外壁の作業を終わらせたのだ。
しかしだるいとか面倒くさいって言っても納得しないだろうなあ。実際、時間も体力も有り余っているし、魔力も何かあった時のために余裕を持たせてある。
フランチェスカは強い。サティでさえもう一回やって勝てるかどうか。それとガチで戦いたいとなるとかなりの覚悟が必要だ。さっきはたまたま作戦が上手くいったから良かったものの、何か一つ手違いでも起これば死闘へと早変わりする。日に何度もやりたくない。
「疲れているなら後にしてもいいが」
だからなんでやるのが前提なんだよ。
「もう勝負はついただろう?」
「もう一度やれば私が勝つ」
結局のところ、魔法と剣じゃ戦いが噛み合わず、有利な状況を作れば勝てる。俺はフランチェスカの戦法を知っているから後出しジャンケンみたいなものだ。だがこちらの手の内を見られた以上、同じ手で勝つのは難しくなるだろうし、勝てるというからには勝算があるのだろう。
「いやほんとに今日はもういいよ」
少なくとも今日は嫌だ。もう十分に働いた。これから旨いものを食べて、ゴロゴロするんだ。英気を養い、明日への糧とするんだ。
「逃げるのか?」
「うん」
じゃあそういうことで! と手を振って行こうとしたら引き止められた。
「待った! ちょ、ちょっと待って!」
「なんだよもう」
「なんでそんなにやる気がないんだ!」
「なんでって言われても、そもそも勝負して俺が勝っても何もないよな? それでいて負けたら痛い目を見るだろうし、フランが嬉しいだけでやっぱり俺にメリットがない」
修行にはなるだろうが、それなら別にサティでもいいわけで、サティならちゃんと寸止めしてくれる。まあ今はフル装備なら多少の打撃は食らっても平気だろうが……
「メリットがあればいいのか……金か?」
「金は十分あるからいらん」
「じゃあギルドの依頼だ。依頼を達成すれば功績になるだろう?」
「功績も特に必要としてないし、Aランクにもなれば依頼は好きに選べるんだ。そもそも出発前にちゃんと言うことを聞くって約束したよな? あんまり我が儘は言うな」
「今は休憩時間だろう? 戦闘中に口答えしたことはないぞ」
休憩時間なら休憩しようぜ……
「じゃあマサルは何が欲しいんだ?」
一番ほしいのはその休憩なんだが、それが無理となると……次に何がほしいかっていうと、おっぱいだな。
でもおっぱい揉ませろとか言ったらダメだよな。揉めるなら揉みたいけど、他に揉めるおっぱいもたくさんあるし、みんなからの好感度が落ちても困る。
「主殿。仕事で疲れてるだろうが、相手をしてあげればいいのでは?」
考えているところにシラーちゃんからの擁護が入った。シラーちゃん俺のことを強いと信じきっているから、挑戦は受けるべきだとか思ってんだろう。カッコつけ過ぎるのも考えものだな。
「相手をしたところで、またマサル様の勝ちですよ」と、サティ。
「やってみないとわからないだろう」
「そんなのわかります。何度やってもマサル様が勝ちます」
いやあ、さすがに何度もやればそのうち負けるんじゃないかな……
「だったら証明してみせてもらいたいものだな」
仕方ない。ここで逃げたところで、後回しになるだけか。
「んー、じゃあ一戦だけな? すぐに欲しいものは特に思いつかないから、貸し一つにしておいてやる」
「え、えっちなことはダメだぞ!?」
「そんなこと頼まねーよ!」
ちょっと考えたけど。
「報酬はフランが同意できる範囲のことでいい。無理は言わない」
たぶん領地関係でフランチェスカの実家は役に立つだろう。こういうのはエリーがきっと喜ぶ。
「それならいい。村の外に少し行けば広い空き地があるらしいから、そこに行こう」
「はいはい。じゃあサティ、みんなを探して知らせてきてくれる?」
場合によっては回復魔法が必要になるかもしれないし、観戦もしたいだろう。あっさり終わらせるつもりだけど。
「またゴーレムは最初から出していいのか?」
「構わない」
よし、勝ったな。同じ条件でリベンジしたいのだろうが、甘い。甘すぎる。
「大きい方だけど」
「だ、大丈夫だ」
ちょっと動揺してる。小さい方のゴーレムを想定してたのか。
「小さい方にしておこうか?」
小さい方でも身長五メートル。十分なサイズだ。
「大丈夫だ!」
やはりゴーレムは無視して俺を倒してしまう作戦か? それだと大きさは関係ないし、懐に入られるとゴーレムの大きさはかえって邪魔になりそうだな。
フランチェスカと話してるうちにみんながやってきた。合流してリリアに運ばれて空き地へと移動。模擬戦用の刃引きの鉄剣を準備し、一〇メートルの巨大ゴーレムを作成する。
やはりでかすぎる。でかすぎて地上の相手に手が届かない。手が地上に届くくらいに膝を落とすと歩けなくなるし、武器がいる。
対人だとハエたたきか、大きなローラーみたいなのを作って押しつぶす感じだろうか。事前準備ありならやりたい放題できるな。
だがどこかで線を引かないと、最初から勝負にならない。一〇メートルのゴーレムも反則気味なのだが、土メイジにゴーレムを使わせないで勝ったところで、それはそれで勝利に価値があるのか? ということなのだろう。
ゴーレムを盾にするように、ゴーレムの足の少し斜め後ろに立つ。これで開幕ダッシュの攻撃を食らうことはない。
そして開始の合図で、ジャンプしつつレヴィテーションを発動し、一気にゴーレムの肩に飛び乗った。
「おい、何を……」
フランチェスカはいきなりのジャンプに完全に不意をつかれたようだ。
「もう始まってるぞ?」
気を取り直したフランチェスカが攻撃魔法、火矢を撃ってきたが、ゴーレムの頭を盾に防ぎこちらも詠唱を始める。これがサティみたいに遠距離でも攻撃力があればやばいんだが、近距離特化型の悲しさだな。攻撃魔法に威力がない。
【火嵐】発動!
本来はレベル4の魔法だが、威力も範囲も弱め。それでも空き地の結構な範囲が炎に包まれた。むろんフランチェスカは外してあるが、まともにぶつければ逃げる術はない。魔法は使えるようだからレヴィテーションくらいはできるかもしれないが、フライで高速で飛べでもしない限り叩き落とすのは簡単だ。
ゴーレムを破壊するのが唯一の勝機だろうが、巨大ゴーレムは簡単には壊せないし、悠長に破壊されるのを待つつもりはない。こちらからは安全に攻撃し放題なのだ。フランチェスカには打つ手はない。
「俺の勝ちでいいな?」
フランチェスカがしぶしぶ頷いたので、ゴーレムの肩から降りた。
空き地の雑草が燃えてくすぶっているところに水をかけて回る。もっと後始末のいらない他の魔法でもよかったんだが、フランチェスカを大人しく降伏させるために派手なのにした。手間だけの効果はあったようだ。
「最初からゴーレムを出すのはなしにしてもう一回、その、頼む……」
「一度だけって言ったよな」
「いやしかしだな、今のはちょっとないぞ」
俺もそう思う。戦法としては優秀なんだが、勝負としてはかなりズルの範疇だろう。
「ゴーレムを出すのに同意するのが悪い。こっちはそれを最大限活かして戦っただけだ」
だがまあ、せっかく見に来たのにこれだけじゃ観客も不満だろう。
「じゃあもう一戦やってもいいけど、貸し二つ目な?」
楽して貸しをゲットだ。
「いいだろう」
ゴーレムを土に戻して穴を埋める。さて、次はどう戦うか。
「立ち位置は大会と同じ距離で、開始前の魔法は禁止だ。あとフライとかで手の届かないところへ行くのもなしにしてもらおう」
注文が多いが、対価はちゃんといただくから致し方無いだろう。
まだアイテムボックスや転移を使う戦法もあるが、そろそろまっとうに戦ってやってもいいだろうか? 卑怯な手ばかりだといい加減機嫌を損ねそうだ。
「装備はそのまま革でいいのか? 次は少し本気で魔法を撃つから、まともに食らうと大怪我するぞ?」
「……装備を変える」
素直に忠告を聞くことにしたようだ。フランチェスカのプレート装備を出してやり、サティの手伝いで装備を替えるのを待った。
これで多少の無茶が出来る。少し威力がありすぎて危険だが、通常のエアハンマーを打ち込む。弱いエアハンマーの連打とどちらがいいか迷うところだが、弱いと発動は早くなるが仕留められないかもしれない。
「次に使う魔法はエアハンマーだけにする。ただ、俺のは威力が強いからまともに受けないほうがいいぞ」
最低限の忠告だけしておく。
フランチェスカが前傾姿勢なのは開始合図と同時に突っ込んで、魔法を封じるつもりだろう。
だが魔法を封じて勝って、それで魔法剣士に勝ったってことになるんだろうか? ただの剣士対剣士にならないんだろうか?
対フランチェスカ、本日三戦目。
サティの始めの合図でやはり突っ込んできた。魔力を集中してみるが、細かい斬撃で妨害される。
くそっ、やっぱ強い。守りに徹すればいなせないことはないが、隙がない。余裕がない。
軽く組み合った時に魔力の集中を試してみるが、これも素早く妨害される。やはり魔法を使わせるつもりはないようだ。
だがフランチェスカの踏み込みが浅いか? 魔力の集中を必ず妨害しにきているから、無理なタイミングでも動いて、攻撃に少々迫力がない気がする。
それでも俺のほうが後手に回らされているのは恐ろしいが――ここまで受けていた攻撃を一回、躱すことに成功した。
それだけでエアハンマーの詠唱には十分だった。
至近距離からのエアハンマーが発動した。次の攻撃の体勢に入っていたフランチェスカには躱せない。盾でまともに受けて、そのままふっ飛ばされた。空き地をごろごろと転がって倒れ、ぴくりとも動かなくなる。
やばい。ちょっとやり過ぎたか? 盾で受けてたから死んではいないと思うが……
「アン!」
治療はアンに任せた。俺に倒されて俺に治療されるのも屈辱的だろう。
フランチェスカはアンの治療ですぐに目を覚まし、ふらつきながらも起き上がってきた。
「私は……負けたのか?」
うん、それも本日三敗目だね。
「受けないほうがいいと言っただろう」
まあ避けれない位置とタイミングで撃ったのは俺なんだけど。
「いまのはエアハンマーだったのか?」
「俺のエアハンマーは普通より発動が早くて、ちょっと威力がきついんだ」
俺くらいの威力と発動の早さのエアハンマーは他ではまず見れないだろうし、公爵令嬢に撃ち込もうという頭のおかしいのはいないだろうな。
いや、俺も別にやりたくてやってるわけじゃないんだぞ。フランチェスカがどうしてもって言うからだ。
「もう一度……もう一度だ!」
「ふらついてるじゃないか」
ふっとんだ衝撃で頭が揺らされたんだろう。すぐには戦えそうもない状態だ。
「主殿、わたしもやってみたい!」
シラーちゃんは魔力探知がないから避けられないだろう……
「え? エアハンマーを盾で受けてみたいの?」
「手加減なしで頼む」
盾をしっかり構えたところに希望通り撃ってやったが、もちろん吹っ飛んだ。人に耐えられるような威力じゃないんだ。
しかしふらふらしながらも立ち上がってきた。気は失わなかったらしい。
「な、何が来るかわかっていれば耐えられる」
おお、すげえ。回復を貰う前にちゃんと立って、盾を構え直した。吹き飛んだ距離も、踏ん張ったのかフランチェスカよりも短い。うちの盾はなかなか優秀だな。
「次はわたし、お願いします!」
サティは普通の、エアハンマーを使った立ち会いが希望のようだ。
サティはフランチェスカのようには魔法の中断を狙わず、初撃のエアハンマーをきれいに躱してみせた。
二発目も。ちょっと素直に真正面に撃ち過ぎて、攻撃が読まれてるな。それなら――
三発目でエアハンマーがかすった。それだけでサティは軽く吹き飛ばされて転んだが、すぐに立ち上がった。ダメージはないようだ。
「ウィルも一度食らってみるか?」
ウィルでは俺の攻撃は避けられないだろうから、シラーちゃんと同じ、盾で受けるコースだな。
「ええっ、俺もっすか!?」
「ダメージに耐える訓練っていうのは大事なんだぞ。いざって時に体験済みだと……」
「次は私だ!」
休憩して復活したフランチェスカが、ウィルを押しのけて前に出てきた。
「いや、次はウィルを」
「先に私だ!」
「あ、はい、どうぞ。お先にどうぞっす」
こいつ、あからさまに助かったって声だな。
「じゃあ貸しの三つ目でウィルを鍛えてやってくれ。剣士の里に着くまで徹底的にな」
「いいだろう。容赦なく鍛えてやろう」
「ええっ!?」
「よかったな、ウィル。ああ、エアハンマーもこの後でな」
「ええええっ!?」
ウィルはこれでいいとして、対フランチェスカも本日四戦目だ。これで最後にしてくれるといいんだが。
「さっきは結構なダメージ食らっただろ。なんだったら明日にするか?」
「平気だ。さあ始めよう」
開始の合図でお見合いになった。今度はある程度距離を取る作戦のようだ。サティの真似だが、サティは結局躱し切れなかった。何か対策があるのだろうか?
とりあえずエアハンマーを撃ってみるがあっさり躱された。躱しただけで動く様子はない。
何か狙ってるな。しかしお見合いをしてても仕方ない。こっちから動くか。
エアハンマーを放つ。もちろん回避されたが、そこに剣を……躱され、鋭いカウンターが飛んできた。もちろんそれくらいは予測しているから盾で受けて、エアハンマーの詠唱をするが、すぐに下がって距離を取ったフランチェスカにエアハンマーはあっさり躱される。
ちょっと攻撃が単調すぎた。
エアハンマーは距離を取って躱され、通常攻撃にはカウンターを合わされ一撃離脱される。
またお見合い。一歩間合いを詰めてみるが、すっと下がられた。中距離くらいを維持するつもりか。
近距離の乱戦でエアハンマーを食らわないよう、躱せるくらいの十分な距離を取るが、自由にエアハンマーは撃たせないつもりか。
もう一歩……フランチェスカが突然前に動いた。こちらが間合いを詰めたのに合わせて一気に詰められた。
受けて受けて、躱してエアハンマー……は下がって躱された。危ない。今のは危なかった。
またお見合い。同じ戦法は二度通じない。何度もエアハンマーも撃っていれば、そのうち当たるかもしれないが、剣を食らうほうが早そうだ。フランチェスカも一撃必殺のエアハンマーのお陰で慎重にならざるを得ないのが多少の救いか。
「どうした? もう打つ手はなしか? 降参するか?」
攻めあぐねている俺にフランチェスカが声をかけてきた。
痛い目を見ないうちの降参もいいが、速射型のエアハンマー(弱)はまだ見せていない。たぶんこれも二度は通じないだろうし、一度で決める。
「そういうことはちゃんと勝ってから言うんだな」
通常エアハンマーからの、踏み込んでの剣のフェイント。そこにもう一度エアハンマー。これも簡単に回避される。
剣での追撃をフェイントにして、またエアハンマー。ここでエアハンマーを躱したフランチェスカが踏み込んで来た。ここだ。
フランチェスカの攻撃を受け――【エアハンマー(弱)】が発動した。
不意を打ったはずだが、それでもフランチェスカは反応し、これを盾で受けた。しかし完全に体勢を崩した。
もう一発。至近距離でバランスを崩したフランチェスカに躱す術もなく、盾で受けたが膝をついた。
もう一発。ついに踏ん張りきれずに地面に転がった。
少し距離を取って、フランチェスカが立つのを待った。ここで追撃も大人げがないだろう。
「一日に四回も負けておいて、まだ勝てるとは言わないよな?」
さすがにこの状況では反論の余地もないようで、めっちゃこっちを睨んでるな。
もしまだやるって言われても、まだあと二つ三つは勝てそうな手は考えているが、もうそろそろボロが出そうだ。
「つぎ、わたしいいですか?」
そうサティが声をかけてきた。
「いいけど、先にウィルだ。こっちこい」
「回復も自分でやって立ち上がるんだ。それが出来れば戦法の幅が広がるぞ」
「が、がんばるっす」
観念したウィルは大人しくエアハンマーを受けたが、あっさり気絶してしまった。
「これはちょっと無理っすよ」
治療して目を覚ましたウィルが、そう泣き言を言う。
サティもこれもやりたがったので試したところ、派手に吹っ飛んだが、ちゃんと自力で回復して立ち上がった。
「ほら、出来るじゃないか」
「いやあ、どうなんすかね……」
「そういうマサルはどうなのかしら? 耐えられるの?」
そうエリーが横から口を出してきた。
「お、俺はそりゃ余裕だよ?」
余計なことを……
「あらそう? じゃあ2割ほど威力を増しておきましょうか。ほら、そこに立って」
ちょっ!?
「こういうのも懐かしいわね」
向い合って立った俺に、エリーがつぶやく。
最初にエリーにエアハンマーを習った時、体感しろって腹に撃ち込まれたんだよな。
「あの時は加減してただろ……」
「そうね。あの時、本気で撃ったらどうなるかなってちょっと思ったんだけど、まさか試す機会があるとはね!」
そう嬉しそうに言う。
「おい、ちゃんと調節しろよ!?」
「わかってるって。さすがに今の力で本気だとマサルでも死んじゃうわよ。行くわよ? さーん、にー、いち、ぜ」
ぜろの言葉を聞き終わる前に衝撃がやってきた。わけも分からずに振り回され、気がついたら倒れていた。
意識が朦朧とする。ああ、回復。回復しなきゃな。【ヒール】――それで頭がはっきりしてきたので、ゆっくりと立ち上がる。
ヒール一発でほぼ治ってるし、ダメージはそれほどでもなかったが……
「ウィル、悪かったな。これは耐えれるとか耐えれないって話じゃないわ」
頭が揺れて、ダメな時はどうしようもない。意識が飛びかけた。
「この訓練は危ないからもうやめておこう」
変な吹っ飛び方をして、首でも折れかねない。
「そうっすよね!」
「ウィルにはフランのと別口で、俺が軍曹殿にやってもらった特訓をしてやるよ」
痛みへの耐久力をつける訓練は必要だ。
「うええええ!?」
「特訓って?」と、エリー。
「教えてなかったっけ? エルフの里に行く前に、俺が軍曹殿に特訓してもらってただろ?」
「ええ。毎日すごくぐったりして帰ってきてたわね」
「あれは鎧なしの鉄剣装備で――」
「うわあ」
説明したらドン引きされた。
とりあえず鎧なしで鉄剣はやり過ぎみたいだし、俺も加減がわからないから大会ルールの革装備に鉄剣で許してやることにした。それで上手くいくようならシラーちゃんにも試してみよう。
来年の剣闘士大会の練習にもなるし、一石二鳥かもしれない。




