7 騙されました
◇◇◇◇
日が沈みだした頃、松明を持った騎士様が二人やってきたのだが、俺の姿を見るなりブッ!!と吹き出し、その場に崩れ落ちる。
「ヒッ……ヒィ~っヒッヒ!」
「ブッ……っブフォッ!!」
体を丸めてうずくまる二人を見て、俺は首を傾げた。
「あ、あのぅ……?もしかしてどこか間違ってますか?」
「あ……い、いや……っす、すまん……っ。」
「な、なんでもない!大丈夫だが……そ、その格好はさっき渡した箱の中のモノか……?」
よくよく見れば、その二人はさっき来てくれた騎士の男性と同じ二人組の様で、俺はコクリと頷く。
ちゃんとイラスト通りに着た。
正直本当に恥ずかしいが、命が惜しくて頑張ったので褒めて欲しい。
「スカイ様が不快にならない様に頑張ります!」
正座をしたままキリッ!と表情を引き締めると、騎士様は震えながら杭に繋がっていた鎖を取ってくれた。
そしてそのまま宴が始まったらしい村の中央広場まで連れて行ってくれたのだが……進むに連れて俺は、どんどん体を丸めて歩く様になっていく。
「……ブホッ!!」
「なっなんだよwwム、ムギッ!!その格好っ!!」
『ギャ~ハッハッ!』
そこらじゅうから聞こえてくる笑い声と、差してくる指。
村民達は全員が腹を抱えて笑っているし、ジロとニコも白目を剥くほど笑っている。
勿論騎士様達だって顔を真っ赤にして笑っているし、村長は心臓発作を心配する程笑っていた。
皆泥をキチンと落として綺麗にしていたし、若い村娘達は頭に花を飾ったりとお洒落していて普通の格好だ。
そこで俺は全てを悟ったよね~。
あ、これ嫌がらせだったんだってね!
「……うぅ……うっ……うっ……グスッ……えぐっ……。」
それに気づいた俺は泣く。
もう悲しいやら虚しいやら、そしてなにより恥ずかしいやらでボロボロ泣いた。
そんな俺を見て、流石に不憫だと思ったのか、笑い声はどんどんと静まっていき、逆にシーン……としてしまう。
宴とは思えない静けさの中、俺の鳴き声だけが響く。
だって俺、頑張ったし、信じていたのに騙されたから!
どう考えてもこんな裸みたいな格好、正装なわけなかった!
「ひっ、酷ぇよぉ~……ど、どうしてこんな事……。」
立ったまま泣いている俺を、連れてきてくれた騎士たちが気まずそうに見ていたが……突然シャキンッ!と姿勢を正した。
そして他の場所にいた騎士たちも背筋を伸ばして敬礼したので、フッと顔を上げると、クッション椅子が置かれた場所へ歩いてくるスカイ様が見える。
スカイ様は、優雅な仕草で用意されていたクッション椅子に腰を掛けると、俺の方へチラッと視線を向け────……ニヤァァ~!と笑った。
光の勇者様は、底意地が悪すぎる!!
そのままグスグス泣き続けていると、突然スカイ様の隣に立っている青年が一歩前に出て、突然俺を指さした。
「この汚らしい農夫ごときが、ふざけるなぁぁぁぁ!!!なんだ!その気持ち悪い格好はっ!!国を救いし光の勇者様相手に、失礼だとは思わんのか!!」
激しい怒りをぶつけられ、「ヒィッ!」と悲鳴を上げる。
燃える様な真っ赤な長い髪を一つに縛り、純潔!高貴!なオーラをプンプン放つ、スカイ様と同じ歳くらいのイケメン騎士様。
そんな騎士様に凄まれ、俺は金縛りにあったかの様にその場に固まってしまったが……その騎士様の言葉は止まる事なく俺を突き刺していった。
「まさかそれで、スカイ様を誘惑でもしようとしているのか?!
むさ苦しい中年がそんな格好して、惑わされる者などいるわけないだろう!!」
「あ……い……いや……その……。」
「気色悪い!!頭がイカれた中年め!!そもそも誘惑するにしても、それはないだろう!!
そんな気持ち悪い服、如何に絶世の美女が着ようが魅力など皆無!!
即刻俺が首を切り落としてやる!!」
その騎士様は相当ご立腹だった様で、腰に差している剣を抜いて、殺気だった目で俺を睨む。
勿論その場は恐怖に支配されて、村長もニコとジロも他の人達もガタガタ震えてへたり込んでしまい誰も止められない中、慌てて弁解してくれたのはこの服を持ってきてくれた騎士の二人だった。
「お、お待ち下さい!!アース様!!」
「こっこれは、スカイ様からの指示で────……っ!」
必死に説明を試みたが、アース様?の目には、俺に対する殺意がバッチリと浮かんでいて……即座に自分の最後を悟る。
────あ、もう駄目だ。
俺はこのまま、気色悪い格好をしてスカイ様を誘惑しようとした狂ったオジさんとして処刑される。
「…………ハハッ。」
あんまりな最後に、恐怖を超えて笑っていると、突然スカイ様が怒り狂っているアース様の首を掴んだ。
「邪魔。」
「────へっ??」
スカイ様が小さい声で呟いた瞬間、ドンッ!!とすさまじい風と共に、アース様が吹っ飛んでいく。
そしてアース様はその直線上にある木々を何本も倒していき……視界から完全に消えた。
「…………あ……あ……あ……。」
「あ……う……うぅ……。」
残された俺達村民と騎士たちは、全員アース様の飛んでいった方向を見てポカンとしていたが、スカイ様は気にせず突然自分の腰に装備していた何かの細い棒を手に取る。
それを自分の手のひらにピシッ!ピシッ!と叩きつけているのを見て……その棒の正体が鞭である事を知った。
「……ハァ。なるほど?そんな服を着た程度で俺は誘惑されはしないが、面白そうだから、今からもっと誘惑してみろ。ほら、早くしろ。」
「ヒッ!え……えぇぇ~……っと……??!!」
もう混乱しすぎてどうすればいいか分からない!
情けなくオロオロしていると、スカイ様は鞭でいきなり突いてきた。
俺の右乳首を。
「わぁぁぁぁっ!!!」
驚いて叫ぶ俺を見ながら、スカイ様はそのままツンツンツンツンツンツン!!!と何度も突いてくる。
そのせいで突かれている方の乳首が立ち上がり布地を持ち上げたので、きれいなハートの形は崩れてしまった。
「また形が変わった!!しかもせっかく俺が贈った服をシワシワにするなど……お前は最低だ!!モノを大切にしろと、自分で言ってたくせに!!」
「す……すみませんんんんん~……!教わってきましたぁぁぁ!」
「全く~……仕方がないな!こっちも……。」
「ひゃぁぁぁぁぁぁんっ!!」
今度は左の乳首をツンツンツンツン!!
さっきと全く同じ展開が繰り広げられたが、俺はもうきったない男泣きでそれに耐える。




