異世界一ウザい奴、自称勇者
自称勇者様達の今回の目的、古びた城の魔物調査。
クエストではない仕事の依頼らしい、勇者様故か?
俺とガルンとエメスは俺たちの拠点で異様に早く収穫できたバナナをもそもそ食べながらついていく。
勇者様はアステマにご執心だ。そしてあれだけ嫌そうな顔をしているアステマは初めてみるぞ。
いい薬になるだろう。
「アステマ、ほら見てごらん! 綺麗な花だよ。あれは魔除けのスカーレットと言われているんだ。特にデーモンなどの魔族種が近寄らなくなる魔法効果があるのさ、髪にさすといい」
君が話しかけているその面倒臭い女がデーモンなんですよ。
勇者様は自ら地雷を踏みにいく。バナナうまっ!
「タルバン、あんまりベタベタと触らないで! それにこんな花、好きじゃないわ! こんな物っ!」
いつものアステマさんなのだが、勇者様の目からすれば……
ツンデレな身分を隠したどこぞのお姫様映るのだろう。そんな目は捨ててしまえ。
「ふっ、あの勇者を語る男、アステマと合体したいと見たり、一万と二千回程告白しても不可能と算出」
8千回過ぎた頃からどうでも良くなるでしょうね。
ガルンは話すら聞いちゃいない。バナナをもそもそ、もそもそ食べている。確かに虚の森で栽培したバナナは美味い。
「ご、ご主人! このばにゃにゃ、美味いのだ! これ! これぇ!」
「あぁ、うん。分かったから、お前は静かにバナナ食っておこうな? エメスの燃料として栽培したけど、思いの外土壌があったのか、ヤバいくらい収穫できたからじゃんじゃんバナナ食え!」
「ま、マスター。お前は黙って、俺のバナナを食べていればいいんだとか、ガルンにはまだハイレベルなプレイと見受ける。我、提案す! 無知なガルンとマスターは無知っく……」
スパこーんと俺はエメスの頭を殴る。無知なら無知のままでいいででしょ!
定番のコントを繰り返しているとザ・洋風の城・アンド・廃墟にたどり着いた。
勇者様一行はアステマとついでに俺たちを後ろに隠れておくようにと指示。
まぁ、この初めてのお使いについていくだけでお金もらえるとかマジ勇者だなあんたら、自称だけど……
「我が眠りを妨げる者は誰だ? 我はホホト・シュヴァイン6世。純潔のヴァンパイアなりっ!」
うわっ! マント広げて顔色悪くて、牙があるこれぞ異世界! これぞ吸血鬼がご登場された。
“アプリ起動 アンデット種。ヴァンパイア。危険度★2 数多くの魔法を操り、無数の使い魔を持つ分岐上位種にグレーターデーモン種等がいます。魔法と使い魔を考慮すると危険度★4相当の場合があります“
ホホト某さんはマントを広げ、俺たちに威嚇する。
それに勇者パーティーは少しつらそうに困ったように笑い、そして冷や汗を流す。実際のヴァンパイアはかなり危険な魔物なんだろう。そしてこの城はこのホホト何某さんの家で俺たちは不法侵入者か。
「悪しき魔物よ! この勇者タルバンが成敗してくれるわ! 魔法使い、戦士! 合わせろよ!」
なんか勇者様は侍みたいな時代劇的なノリでホホト何某さん……もうホホトさんでいいか、に戦いを挑む。
「『ブレイク・ブレイドぉ!』これが勇者の力だ! 悪しきモンスターよ、己が罪を悔い滅びゆくがいい! ちぇええええええストぉおおお!」
ソードマンタイプの初級から中級のスキルを使ってホホトさんに襲いかかる。ホホトさんはそんな勇者様達を見て……
「……その程度の力量で我と戦おうとはその無謀さ、尊敬に値するな。愚かな人間ども。その血を持って我が従者になれ」
ホホトさんは思いの外強かった。魔法使いの魔法を打ち消し、勇者様と剣士の斬撃を寄せ付けない。
「つ、強すぎる……こいつ、まさか魔王種なんじゃないか……だが、俺たちは勇者パーティーだ……負けるわけにはいかない……例え、ここで死ぬことになってもな……俺としたことが、守べき者の顔が浮かんだ。そうだ、守る者がいる俺は負けるわけにはいかない! 『ブレイブ・ソウル』!」
なんかクサい芝居をしながらチラリチラリとアステマを見る勇者様。まぁね、好きなら好きって真正面から言ったほうが伝わると思うよ。
物凄い地雷女だけど……アステマ。
「私の力はいらないのかしら? あんな雑魚相手に頑張っちゃって」
「やっぱ地雷だなこいつ」
戦闘開始してからどれだけ経ったろう?
まだまだ余裕のホホトさんに、もう随分ズタボロな状態の勇者様一行。
流石にこのままじゃ依頼主が死んじゃいそうなので、俺たちも参戦、ヤバければ連れて逃亡。
魔法には魔法、というかその為に募集できたアステマが働くのが筋だろう。俺がアステマに指示を出す前に……
アステマは高下駄みたいな靴をカツカツと音を立てながら歩く。
そして腕を組み、余裕の表情でホホトさんに微笑みかける。今回に限り本当に余裕があるんだろう。
「アステマ。ホホトさん結構強そうだけど大丈夫そうか? 支援魔法いるか? それとも逃げるか?」
とりあえず俺は数パターンアステマに聞いてみると、
「ねぇ、卑しきヴァンパイア、私と魔法勝負するつもり?」
勇者様が惚れ込むほどの美少女であることには間違いない。それは俺も認めよう。でもなんか腹立つなんだよな。
「若い女か、ふふっ。目覚めには最高の美酒ではないか。我と魔法勝負とは愚弄……ぐ、グレーターデーモン……様!!」
あっ、めっちゃ顔色悪くなった。元々悪いけど……
なんか虫の息の勇者一行に俺は回復魔法でもかけてやるか。
「ねぇねぇ? 何? さっきの威勢はどうしたのかしら? ねぇ?」
アステマがなんかやけに調子に乗る。ヴァンパイアとデーモンは相性があるんだろうか?
「……いえ、麗しくグレーターデーモン様」
うわっ! 傅いた。
「あんた、ここに居座ると迷惑がられているのよ。どこかに消えなさい」
ホホトさんは風呂敷に大事な物をいっぱい入れて、その日の内に廃墟の城から出て行く準備を始めた。アステマの砂糖の為に強制立ち退きとか不憫だ……
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「……グレーターデーモン様それは……」
「何? 唯一無二にして至高の魔法力と生命力を持ち。さらに一千年に一度の美魔族であるこの私、グレーターデーモンのアステマの言っている言葉が分からないのかしら? 下等種族」
アステマに若干逆らえなさそうなホホトさんは狼狽えながらなんとか立ち退きだけは勘弁してほしいと土下座している。
ガルンはあくびをしてうとうと眠そうで、エメスはその辺飛んでる蝶々を追いかけ……あまりにもこの状況不憫すぎる。
ホホトさんが今まで何をしてきたのかは俺は知らないし危険性もあまり理解はしていない。
アステマがいる事でホホトさんが突然暴れ出したりはしないだろう。俺なら偉そうなアステマに対してブチキレて大暴れしそうなものだが、ホホトさんはそうじゃないらしい。
しゃーない。なんとか俺の交渉スキルでうまいこと話し合ってお互いの落とし所を決めるか。
そんな風に思っていたところ、自称勇者様の意識が回復し、目覚めたのだ。
「あ、アステマ……君が……この魔王級のヴァンパイアを調伏したのか? やはり……君は……」
きっと自称勇者様は勝手な想像が働いているのだろう。なんせ自分達を追い詰めた魔物。
それが守ろうと思っていた。いや、格好いいところを見せつけようとした好みの女の子が自分が気絶している間にどうやらやっつけて何故か土下座やら正座させている状況。
俺なら関わり合いになりたくないから適当な言い訳して逃げ出すけどな。自称勇者様は違ったようだ。
「我が説明す、この信託を人間の分際で聞ける事をありがたく思い、末代までの宝とするがいい。ドブ臭い人間が我の声を聞けるランデブー稀な事なり」
なんでいきなりエメスさんはテンションがこんなに高いんでしょうか?
今日に限って何故か人間を超絶嫌う魔物のそれで自称勇者様にそう言うエメス。そこには下ネタを言ういつもの彼女の姿ではなかった。
うん……エメスは辛口の美人秘書キャラなのである。下ネタがなければ……
エメスは自称勇者様を睨みつけて冷たい表情を崩さない。一体どうしたと言うのか?
まぁ多分。エメスは一応モンスター、ゴーレム。今はその上位互換の魔導機人である。
そしてエメスの性別は女の子というべきか雌なのだ。そのエメスが生理的に不快感を感じたのだろう。
まぁなんとなくなんだけど、男の中ではこの類の思い込みが激しい系は笑いのネタ程度になるのだが、女子から……キモがられるのが世の常。
一応俺は何もせずにクエスト報酬をもらえることになっているので少しばかり空気を読んでやろうかと……
「……アステマ。アステマさーん? あれだ。そのホホトさん。じゃなくてヴァンパイアの件、さっさとどうにかしろ」
ホホトさんは人間である俺がアステマに命令をしたことで睨みつけてくる。が、当然というべきかアステマは俺のパーティーメンバーだ。
「む……主がそう言うなら、そうね。下等種族。住むところ、斡旋してあげてもいいわよ? 虚の森、あそこに私の屋敷があるわ、そこの使用人になりなさい」
アステマが腰に手をやって顎で使うように言う。
すると、ヴァンパイアのホホトさんはまさに執事の敬礼をしてコウモリになると飛び立っていった。
その様子に満足したような顔を見せるアステマ、そして俺と目が合う。
「主、こんなところでどう?」
……クソ、ちょっとかっこいいじゃねぇか
そう、そしてどうやってこの状況を説明しようか?
自称勇者様は何がなんやら分かっていない様子……と言うよりいい風に解釈してそう。
そして俺の嫌な予感は当たる。
「あ、アステマ……まさか君はモンスターを……追い払ったのか? まさか……女神の加護……あるいは君自身が女神。いや、今はいい! 時がくれば話してくれ」
「……はぁ? 何言ってんのアンタ? まぁいいわ。私は凄いのよ」
「そうだな。君は確かにすごい。この俺たちが油断をしたとはいえ、ここまで追い詰められた魔物を一人で追い返してしまうのだ」
「ふふん! もっと褒めていいのよ! 主もね!」
俺を巻き込むのをやめてくれませんかね?
自称勇者様から物凄いジェラシーの視線を感じるのですわ。惚れた腫れたとそういう青いのは俺はもういいんですわ。
アステマは今日に限ってガルン並に褒めて褒めてアピールをする。
これで砂糖を買ってもらえると思っているのだろう。いや、砂糖くらい買ってあげるからマジでやめて。
ほら、自称勇者様が……
「アステマの雇い主よ。アステマをかけて俺と決闘を申し込む」
「何なに? 私をかけて主とこの人間の男が揉めているの? 全く、男ってバカなんだから、まぁ! それだけ私の美貌が罪作りという事ね! いいわ、殺し合いなさい!」
腹立つわ。半分正解ゆえにさらに腹たつ。このバカに天罰あれ!
自称勇者様は高価なブレードを俺に向ける。人に刃物を向けるなバカちん。
「名前はなんと言ったか商人の男よ。お前のような低レベルでパッとしない男がこんなにも麗しいアステマの主人であるという事。おかしいと思っていた。何か弱みでも握っているのであろう! 弱みに付け込み今までなにをしてきたかを考えると怒りに震える。楽に死ねると思うなよ!」
自称勇者様はヤル気満々で俺にそう言う。
完全にとばっちりというやつである。なにを言おうと多分俺の話を聞く耳を持たないだろう。
こういう奴は自分の中で出来上がっている答えなりストーリーがあるので、自分の思い画くこと以外正解ではないと思い込んでいる。
要するに、ストーカーの典型的パターンなのだ。そしてそういう奴に絡まれると高確率で火傷する。というか殺される危険性もある。
まぁ、俺がそういう奴に狙われる事になるとは思いもしなかったよ。それも勇者様ですわ。自称だけど。
さぁ、こういう奴を退ける方法は……俺の辞書にはないですわ。
もういっその事ぶっ倒してしまおうか? いや、無理か……こいつ俺より三倍くらいレベル高いんだよな。
勇者様に俺は決闘は受けない事を伝える。何故なら俺は商人であるから、そんな俺に剣で戦おうなどそれこそ卑怯ではないかと。
「確かに、卑怯な男に卑怯と言われるのは心外ではあるが、剣の素人であるお前をこの伝説の剣の錆にするのは俺の剣が汚れるとも言える。ならば、どうする? ただし商人スキルなど俺は持っていないぞ」
かなりのバカだが、俺の言い分が通った。
そうなればまぁ、ぶっ殺される事は回避できたろう。
「えー、血で血を洗うような醜く、それでいて血が踊るようなブラッドカーニバルを期待していたのに、案外情けないのね? まぁ、私はあの白い粉さえもらえればなんでもいいのだけれど、見てみたかった物ね。人間同士の血潮流れる。私を取り合うそんな、決闘。主、その熱くなった血を冷ませるのかしら?」
こいつ何回血って言葉使うん? 頭悪そ、いや、頭悪いんだった。
「アステマ、今までどのような仕打ちを受けてきたのかは知らぬ。だが安心するといい! 俺のこの聖なる剣を奮わずともこの男は断罪してくれよう。今まで多くの悪人を見てきたが、お前ほどの大罪人に出会った事ない。見れば見るほどろくでもない顔をしている。目つきの悪さが証明しているぞ!」
俺以上の悪人をみた事がないとは、よほど治安の良い国で育ってきたのだろう。というか段々腹立ってきたわ。
俺、君に何かしましたか?
というかコイツ俺のなにを知っているんだ?
自称勇者様はチラチラとアステマを見る。あー、今さっきの決め台詞的な何かだったのか……
「主の目つき? やる気がなさそうで隈を作ってるところが多いわね。よく働いているから……疲れてるのよ。私にまであんな事させて……バカなんだから」
「な、なにをさせられたんだ!」
お前と一緒ですよ。魔法しか取り柄がないから魔法使わせて……
おうおう、ついにはつっかかってきましたわ自称勇者様。
ガンと俺の肩をぶつけ、そして突き飛ばそうと伸ばした手、それは俺には届かない。
「不敬なり、我怒りの言葉を貴様に送る事躊躇わず。マスターが我らをどう扱おうと貴様に関係なし、その臭い口を閉じよ」
なんかエメスがめちゃくちゃまともに臭い事を言っている。
しかしだ。自称勇者様はエメスの言葉の“どう扱おうか“の部分しか聞いちゃあいねぇ。
自称勇者様はエメスに払われた手をさすりながら……折れてないそれ? めっちゃ痩せ我慢してるぅ!
「ててっ、力の強い女性だな。男装をさせられたファイターかな? エメスと言ったか? お前もまた美しいな! そちらのまだまだ幼い美少女はモンスターテイマーか? アステマだけは飽き足らず。女ばかりを騙して集め、男の風上にも置けない奴だな。商人……汚い金の匂いを感じるぞ!」
はい、男女差別発言いただきました! これが異世界じゃなければお前は死んでいた!
あまりにも普段のバカさ加減に呆れていて忘れていたが、このモン娘共、そこそこ見てくれ良かったんだな。
面倒くさいからアステマにおべっかでも言わせるか。
「おい、アステマ。あの自称勇者様はお前にぞっこんだから、お前が少し色目使えばこの場も収まるからちょっとリップサービスしてやれよ」
「は? 主、何を言い出すかと思ったら、私が人間風情に媚びへつらえというの? そんな事するわけないじゃない! 主、私は主の傘下に下った事は認めるわ! 何故なら主は北の魔王の後継、シーイー王じゃない! でもあの男は違うわ! 無理ね。フン」
なんか、気高い魔物ぶりだしたけど……なんで今日に限ってまともな反応なんだよ!
アステマのその言葉を聞いて、俺はどうしたものかと考える。
よく考えれば、モンスターは人間を忌み嫌い、人間はモンスターを忌み嫌うという関係性が何故か存在しているのだ。
本音と建前の使い方も知らないモンスター達が俺の従業員トップスリーなのだ。何この罰ゲーム。異世界で変な拗らせ男にも絡まれるし……
「俺は勇者。この聖剣に選ばれし、勇者! いつかは王都を統べるあの王も、怪しげな子供ではなくこの俺を勇者と認めるだろう! 悲しき運命を強いられた少女達よ。俺のパーティーに加えてやろう。いずれ、南の魔王と魔物の軍勢を討伐し、生涯困らない生活を約束しよう! 特殊職の二人に女神……おっといまはアークメイジだったなアステマ? この商人と縁を切る良い機会だ!」
俺との勝負を無視して引き抜きかけ始めたぞ。
頭沸いてんのかな?
まぁ、モン娘の三人は成り行きでパーティーになったわけだ。
彼女らが自称勇者様と一緒にパーティーになりたいと言えばその意見は尊重しようとは思う。
俺はくる者は拒むのだが大体強引に居座られ、去る者もおわないが、中々さってはくれない。
一応、三人に俺は振り向くと、自称勇者様の提案に乗るのかを聞こうとした。
あー、うん。正直、俺が女の子だったとしたら……この自称勇者様はまぁ無理だ。そしてモン娘の三人もその感性だけは同じだったらしい。
「は? 人間の分際でこの私たちを引き入れて傘下に入れようとしているわよ? 魔神器も持っていないドブ臭い人気風情が、何あいつ? キモくない?」
「……我、驚けり! 性的な意味で全くそそらないとはどうした事か? やわり我が性癖を満たすにはマスターの他なし!」
「あのクソ人間、ずっと思ってたのだが臭いのだ! 特に頭と脇とかが物凄い臭いのだっ! 鼻がもげそうなのだ!」
ガルン、それは本人には言っちゃダメだぞ!
アステマは指を唇に当てると俺に上目遣いにいう。
「ねぇねぇ、主。そんな事よりも! あの白い粉は? あの為にこんな面倒なところにまで足を運んだのよ? いい加減我慢でーきーなーい!」
コイツの事を知らない俺だったら、鼻の下を伸ばして言う事を聞いたろうか? いや、ないな。殴りたいと思った女は君が初めてだよアステマ。
「じしょ……じゃなくて勇者様。という事で今回は前向きに検討した結果、三人は俺のところに残留するらしいので、今回の報酬をと」
そう、今回俺たちはアステマの保護者であり、報酬もらえる立場なのだ。
……あっ! これくれないやつだ!
「契約破棄はギルドでもそこそこペナルティじゃなかったでした?」
契約は満了した事、破棄した事を証明する為に魔法刻印で行われる。
そしてそれが証明となり、違反すればギルドからきつい沙汰があるのだ。
「悪人との契約など失効されて当然だろう! ギルドに行けば俺たちの潔白とお前の悪事が判明しお咎めはなしに決まっている! それに北の魔王の後継? そう言って騙して三人につけ行ったか!」
「北の魔王の後継は勝手に周りが言っているだけだ! 俺はCEOだ!」
俺がそう言う。
勇者様は俺を嘲笑するように笑う。
多分……イントネーション的にねぇ
「ほう! 自らを王と名乗るか! それにしてはあまりにも見窄らしい。大体王を名乗る者などその全てと言っていい程の連中が詐欺師であり、虚言なのだ。残念んだったな! 俺は騙されない」
「Oね! 王じゃないんだわ」
そう言ってもわかることもないだろう。
正直、この自称勇者に対しては俺がアステマよりもイラついていた。
俺は理解力が低い奴は嫌いじゃないが……話が通じない奴は大嫌いだ。
王を名乗る奴が嘘つきなら大体てめーは勇者名乗ってるじゃねぇか!
だなんてツッコム気力すら俺には無かったが、俺に刃を再び向けた自称勇者様の元に俺の持つ錬金術アイテムが降ってきた。
それは打ち上げ花火のようにピューと、そしてどしんと落下してくる。
自称勇者様に、そのパーティー達は目の前に降ってきた禍々しい力を放つ大きな斧を見て固まる。
「なっ……北の魔王の魔神器……へ、ヘカトンケイルなのか?」
あれは魔物界隈だけでなく、人間側ににも有名な武器らしい。
そしてコイツは並の魔物と同じく、この斧を見るだけでビビり散らかして戦意喪失する側でもあった。
俺はそのヘカトンケイルを持ち上げる。所有者が持つと重みがないのだ。
「じゃあ、やろうか? 自称! 勇者様」
元の日本で誰かの肩がぶつかると先に謝る俺が、
とにかく目の前の男を限界までビビらせてやりたいとそう思った。
それだけ、俺をイラつかせてくれたのは今時点で、異世界で暫定トップのウザさだっただろう。
「ひ、ヒィイ!」
もうそこには勇者様と名乗れる男の姿ではなかった。
豪華な装飾品のついた剣をを突き出しへっぴり腰で震えている。
そう、俺が威嚇ついてでにヘカトンケイルを持ち上げると自称勇者様一行は全員、綺麗な姿勢で頭を地面に擦り付けて命乞いをした。




