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とんでもねぇケモーナーが営む追放先輩ブリーダーの異世界牧場物語その①

「お菓子作りか……流石に俺もお菓子はなぁ……カレーとはレベルが違いすぎるぞしかし」


「いやぁ、冷凍ベコポンがめちゃ売れてるからねぇ、ここでもう一つくらい何かあればより売れると思うんだが」

 

 そう、冷凍ベコポンの売り上げからマージンを貰いに行った際に、商店のオッサンに言われたその一言。

 仕事に関して俺の中の何かをくすぐってしまった。

 俺の知識の上で作れるお菓子は何かないか? それはすぐに思い出された。

 カレーといえば、子供の頃給食で楽しみだった。そして同じ時に高確率で出されるデザート……プリンもまた万人に受けるスイーツ。

 が、俺には卵を使ったその作り方なんて正確には分からない。されど、虚の森でバナナの栽培には成功したのだ。

 バナナと牛乳的な物があれば簡易プリンは作れる……ハズ。

 そう、牛乳である。忘れていたが、俺は牛乳が好きなのだ。


「……なんというか、動物の乳を飲むという文化はこの地域にはないんですか? できれば牛さん的な……」

 

 俺の質問に対して、エメスが自分の胸を寄せて上げて俺にアピールする。お前さんはゴーレムだから乳なんて出でないだろうが、というか出ても困るわ。

 今にして思えば、ガルンやアステマは亜人種に相当するわけだから、多分赤ちゃんの頃は母乳で育ったんじゃなかろうか?


 商店のオッサンは難しい顔をする。

 静かに、奥に行くとシナモンを溶かしたような生姜湯的な飲み物を出してくれた。

 ……何これ?


「これは赤子に母乳の代わりに飲ませる事がある栄養のあるシナン湯だよ」


 あぁ、粉ミルク的な奴なのかな? 飲んでみるとほのかに甘く美味しい。

 アステマとガルンは気に入ったようで、エメスは何かガッカリしている。


「これは美味いぞ! ご主人、なんだか懐かしい味がするのだ! パンと食べると合いそうなのだっ!」


 ガルンが店主の親父に見えないところで尻尾をブルンブルンと振るわせている。俺は自然に尻尾を制服の中に入れてやる。


「認めたくないものだ。こんな騙したような飲み物で育った幼体など不憫極まりなし、我は思う。幼体が母体の乳をしゃぶり育つ、母体の方も自分が生み出した幼体にしゃぶられなんとも言えない気持ちになるのが趣が……」


 エメスさんは何を言ってるのだろうか? 店主のおっさん完全に引いてるじゃないかそしておっさんはこれを代用品にできないかと言いたいのだろうか?


「そうだな……試してみるか、エメス。お前のオヤツ用のバナナを一本よこせ、今栽培してるから今度嫌になる程食わしてやるよ」


 バナナの何かの酵素とカルシウムが結びついて確か固まるはずだったのだが……

 

 ぎゅっ……

 

「エメスさん、バナナ! そんな後生な! みたいな顔せずに、はよよこせ!」


 俺はエメスが身を呈して守ろうとしているバナナの房から一本もぎとると、バナナの皮を剥いてそれを輪切りにした。

 

「ま、マスター! まだ皮をかぶっているのを無理やり剥いてしまって……さらにそれを輪切りにするなんて……それ、なんて拷問と我は問う?」


 ほんと、何言ってるのこのゴーレム。


「この輪切りにしたバナナを潰して、さらにペースト状にするんだよ。それをシナンの湯と一緒に混ぜて冷やすとぺクチンとカルシウムで化学反応を起こして固まるんですわ」

「そんな、白濁の卑猥な塊を固めるなんて、マスターそれはあまりにもアブノーマルである判断す」


 こいつはもうダメかもしれない。


 俺が手際よく、バナナプリンを作ってアステマの魔法で作った氷の中で冷やしている様子を見て店主が俺に話しかける。


「マオマオさん、大体どんな物ができるか分かってきた。これは貴族が食べるお菓子にババロアという物があるんだが、それに近い物ができるんじゃないかい? 甘い果物に甘いシナン湯。食感がまだいまいち分からないけどね」


 ババロアはババロアとして存在しているのか……調べる術はないけど、もしかすると、異世界から逆輸入か、あるいは俺の世界の人間が作ったか?

 ババロアとプリンの違いって何だったけかな?

 

「店主、よく分かりましたね。そういえばこれプリンというか、ババロアとかに近いのかもしれないです」

「へぇ、マオマオさん。お菓子は儲かるよ! お貴族様達は新しい物、甘い物好きだからねぇ」

「……もしかして冷凍ベコポンも大口取引があるとか?」

「ははっ、バレてしまったか、はっきり言ってマオマオさんに卸してもらっている冷凍ベコポンだけで売り上げが倍増しているよ。マオマオさんに支払うマージンに関して再度調整をさせてもらわないといけないなって思ってはいたんだけどねぇ……今後の商売関係的にね」

「あぁ、いや。そこは最初の契約通りでいいです」

「本当かい? そりゃこっちは嬉しいけど……」


 十分な売り上げがあっても、俺の取り分が多くなったら商売の美味しさは減ったように思うだろう。店主は見ず知らずの俺と契約するというリスクを負った結果、冷凍ベコポンの独占販売に成功しているのだ。


「店主さんは商売に成功した。それだけですよ。それに今後の商売関係もよくありたいと思いますし、ただ一つだけお願いを聞いてくれませんか? 今虚の森に俺の大きな商店街、お店ばかりの街と言えばいいでしょうか? そんな物を作っているんですけど、店主のお店も出店してくれませんか?」

「ははーん、売り買いでマージンを稼ぐんじゃなくて、出店手数料を……面白いねこれ」

「どうですかね?」


 商売人の目からして俺の考えはどうか?


「是非、2号店出店させてもらうよ」

「マジですか!」

「夢だったんだよ。2号店」


 まぁ、商売人の夢や目標は自分の店を大きくする事だろう。

 さらにチェーン店の開業なんて成功の証みたいなものかもしれない。

 案外、この話に乗ってくれる人は多いかもしれない。店舗数を増やしシャッター街を避ける。

 そしてふとモン娘の三人に目が行った。

 

「果たしてこいつらが商売で活躍する時はくるんだろうか……」

 

 


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 試作型のバナナプリンを食べてみた。モン娘に店主は美味しいと言った。

 が、俺はこれは違う。俺の知っているバナナプリンの味ではないとここは妥協したくないのである。

 だって、プリンという物はある種オヤツの王様だ。

 学校給食のデザートだ。

 デパートに親に連れて行かれたご褒美として食べさせてもらえたお子様ランチには生クリームとさくらんぼが乗っていて豪華極まりない。

 焼きプリンだ何だと有名ケーキ店に行けば、必ずといっていい程オススメのプリンが置いてある。

 何ならコンビニやスーパーで買えるあれですら超うまい。

 

 ということで俺はこの試作バナナプリンを失敗と評した。

 どうしても牛乳じゃないのであのクリーミーさが足りない。異世界だろうと何だろうと人間がいて哺乳類がいる以上ミルクはある。

 それが上級貴族クラスでないと手が出せない物だというのであれば、それを手が出せる範囲に大衆化させる。

 今まで、数々の商人が行ってきた事だ。昔は何百、何千円とした物を百均で販売している店がいい例だ。



 という事で俺はガルンを連れてミルクを求める営業活動に向かった。


「えぇ、ガルン。一応仕事である事。そして俺のボディーガードとして連れてきたが、ここにある物を勝手にとったり食ったりするなよ」


 街から随分離れ、王都と呼ばれるところに乳製品だかを卸している牧場。アステマとエメスにはバナナの栽培と木材の切り出しを虚の森で任せている。大丈夫だろうか? 心から心配だが……

 店主に教えてもらったそこに俺達は見学に行った。


「ご主人! みてみて! 大きな四つ足の生き物がいっぱいいるのだ! そしてとても美味そうな匂いがしているのだ! あれ食べたいのだっ! ご主人! ボクはあれが食べてみたいのだっ!」 


 山犬だかオオカミだかのガルンが食べたいと言うのもわかる。ヤギ的な? 牛的な生物が放牧されていた。

 そんな牧場を眺めて俺たちは併設している大きな建物へと向かった、俺たちの街のギルドから連絡が行っていたのか、牧場主が顔を出した。

 

「お待ちしていました。犬神さんですよね? この牧場オーナーのクルルギです」

「ご主人っ! この人間のメス。ご主人とどこか同じ匂いがするのだっ! ご主人と同族なのか? もし、ご主人がこの人間のメスとつがいになりたいというとボクは少しばかり寂しい気持ちになるのだ。まぁでもハーレムの形成という事なら、ボクもいるからやぶさかでも……うわっ!」


 ガルンは牧場の主人だろうか? 若い女性……多分作業着にツナギを着ている事から俺と同じ世界の人間に絡むので口を押さえて隣に立たせた。

 俺はそのままガルンの頭を下げさせて、俺も頭を下げる。俺たちは客ではないのだ。交渉、営業に来たわけだ。


「初めまして、クルルギさん。……その特措法の?」


「……ご主人、お腹が空いたのダァ! 死んでしまうのだ」

「あら、かわいいお嬢さん。犬神さん。そうですね。私も特措法でこの世界にきました。元々農学部の学生でしたので、元の世界で叶えたかった牧場経営を異世界でかなえた感じですね」

「いやぁー、そうでしたか! こんなよく分からない世界で戸惑っていたところ、同郷の方にあえて少し安心しました。折り入ってご相談がありまして」


 クルルギさんは日本とドイツのハーフらしい。枢木フーカというらしい。俺は今この世界で商人をしているという事。商店街を作る為に今は人脈を増やしている。

 そしてミルクを一般人にも買える価格で卸してくれないか? 優しく微笑んだクルルギさん。


「そうですねぇ、その商売。私に何かメリットがありますか? 丁重にお断りします」

「……そこをなんとか! 栄養価の高いミルクは大衆が買えればより販売できるルートが……」


 俺の熱を込めた説得。

 それをクルルギさんは冷静に、いや呆れたように見つめている。


「同じ世界にいたからわかりますよね? 年間、どれだけのミルクを世界では廃棄しているか知っていますか?」


 クルルギは語った。畜産の大変さ、労働に見合わぬ報酬。そして大事に育てて絞ったミルクの廃棄。需要と共有のバランスが一定であると起きうるフードロス。そしてそれに伴う収益の減少。


「犬神さん以外にもいたんですよ。同じことを言う方。私は日本の大学で最高水準の畜産を学んでいます。この世界でいえばそれは異次元のスキルなんです。それを安売りはしませんし、高く買ってくれる人とだけ商売をして、もし売れなくなってもこの子達がいるので食べるには困りませんし、他に潰しはいくらでききます。ですので、その件はお引き取りください」


 地雷だった。彼女は喜んで異世界に来た側の人間なのだ。なんせ、事業を成功させてる。


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