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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第51話 ディスコミュニケーション

 じいさんは言葉を発することもできず、ゆっくりと倒れた。


老人

身体能力 D⇒N/A

▲ B⇒N/A

■ SS⇒N/A

魔力 D⇒N/A

好感度 C⇒N/A


 ……死んだ。

 殺した。

 

「姫様! 何事ですか!?」


 ガルニたちが浴室に入ってこようとする。


「待ちなさい! 私たち、今、裸なの! 終わったから、外で待っていなさい!」


 シュリアの言葉通り、この場に立っている者はみな裸だった。


 シュリア、ココ、アリア、ニッキー。

 何がとは言わんが、中くらいのとでかいのと小さいのとでかいのが並んでいた。

 何がとは言わんけどね。

 俺の視線に気づいたのか、女の子たちは全員、バッ! と手で胸と下半身を隠した。

 ……言っとくけど、俺はスケベだから、その一瞬のうちに全員の裸を目に焼き付けてしまった。

 描写、いる?

 ……女の子たちに失礼な気がするからやめとくか。

 一応少しだけ触れておくと、ココみたいな金髪の子って、全部金髪なんだなあ。何がとはいわんけど。

 あとアリアは生えてなかった。何がとは言わんけど。


「……トモキ様、私の……見ちゃいましたか?」

「いや、見てない……。ってか、ココ、大丈夫だったか、溺れかけたみたいだけど」

「ええ、シュリア様の治癒魔法をかけてくださったおかげですわ」

「それはよかった」

「それはいいですから向こう向いてください……恥ずかしい……」


 ココは顔を真っ赤にしながら恥ずかしがっている。


「す、すまん……」


ココ

身体能力 E

▲ D

戦闘能力 E

魔力 SSS

好感度 Ultra


 ココは途中で溺れかけて戦闘から途中離脱してるから魔力はまだ残っているな。


 いや、それよりもだ。


「ニッキー、お前……」


ニッキー

身体能力 S

▲ B

戦闘能力 S

魔力 E

好感度 A


 ……今までちゃんと見たことなかったけど、なんだこのステータス?

 我ながら今までなんできづかなかったのか不思議なほどだ。


「ニッキーって強いんだな」

「姫様の護衛も兼ねていますから。鍛錬はかかしていません。それよりも、早く服を着てください。っていうか、そこ、どいてください」


 おっと。

 言われてみれば、俺は今いつの間にか壊れた壁の側に立っていた。

 これじゃあ女の子たちが女湯に戻れないよな。


「す、すまん……みんなも服を着てくれ」


 俺はうつむいてなるべく女の子を見ないようにしながら移動する。


「嫁入り前の貴族令嬢が……裸を見られたら死ぬしかないわ……。私、このあと死ぬわね」


 シュリアが物騒なことを言う。


「あーあ、ご主人様、その死体、どうすんの? 殺しちゃうなんて。いろいろ吐かせることもあったはずなのにさー」


 アリアの言葉にも少しトゲがあった。


 二人とも、好感度がFにまで落ちてるからな……。

 これ、ちゃんともとに戻せるんだろうか……。


     ★


 みな、服を着て宿の応接室に集まった。

 俺とココとアリア、それにシュリア、ニッキー、ガルニもいる。

 じいさんの遺体は別室に安置している。


 宿の主人はガタガタ震えている。


「貴族の方に斬りかかるとは……。父が大変なことを……」


 階級社会であるこの世界において、それは重罪であるらしかった。

 そりゃそうだ、例えば日本の江戸時代で、大名一行に斬りかかる庶民がいたら族滅させられてもおかしくない。

 シュリアは銀等級の貴族だ。

 じいさんはそのシュリアの客人を殺そうとしたことになる。

 どんな理由があれ、一般庶民に許される行動ではない。


「まあ、あのおじいさんが斬ろうとしたのはトモキだから。私の客人とは言え、私自身を最初に狙ったわけではないわ。ただ、事情聴取はさせてもらうわよ」

「は、はい……」


 宿の主人――ミハルタという名前らしい――は、目を泳がせながら答えた。

 年齢は40歳くらいかな。

 かなり動揺していて落ち着かないようすだ。

 自分の父親が貴族一行を殺そうとして返り討ちにあった、なんて状況になったら、冷静でいられるほうがおかしいけどな。


「私としては? 私が目標じゃなかったみたいだし? 女の子をはべらせてなおかつその裸を見て喜んでいるような男なんて別に?」


 いやなんだよその言い方。

 まあ好感度が下がっているからなー。


「なにをおっしゃいますの! トモキさんはシュリア様の命の恩人ですわよ。そんな言い方をするなんてシュリア様らしくない」


 ココが俺をかばってくれる。


「うーん、でもねー。なんか、さっきから、ご主人様を見ると、ムカッとくるんだよねー。特に理由もなくムカッとくるの、なんでだろ?」


 今はツインテールに戻したアリアが言う。

 なるほど、強制的に好感度を魔力に変換して吸い取ったから、その辺は違和感として本人にも認識されるのか。


「それについては、俺の能力が関係しているんだと思う。あとで説明する」


 ちゃんと説明しとかないと、この先の旅でもいろいろありそうだし、禍根を残しそうだ。


「俺の能力について、知っていることを全部話す」


 人間関係を壊すのは、相手との相性とかもあるけど、それ以上に『ディスコミュニケーション』が原因だと、俺は前世で学んでいた。

 言葉ってのは不完全で、お互いに会話していると思っていても、そこには大なり小なり必ず誤解ってのが生まれているから、そのズレをチューニングしないと、無駄な敵対関係を作っちゃうのだ。


「だけど、それはあとにしよう。まず、あのじいさんについて聞きたい」


 俺はミハルタに尋ねる。


「あのじいさんは勇者ガルアドとどういう関係だ?」


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