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俺を好きなやつの魔力を吸い取って奇跡を起こせる件。奴隷少女よ、だからといってそんなに俺にくっつくな  作者: 羽黒楓


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第20話 エッチなこともほどほどに

 俺の言葉を聞いてココは、爆笑し始めたのだ。


「おほほほほ! うふふふふ! 何を言い出すかと思ったら! 私はライラネック家の令嬢、ココ・ライラネックですのよ! なにかしら、今のはプロポーズでらっしゃいますか? 救世主様、じゃなかったトモキさん、冗談がおもしろいですわね! おほほほ!」


 そうだった。

 ココは自分のこと、奴隷だなんて思っていなかったのだった。

 でも、胸元に彫られた奴隷の刻印のことは気にしているようだったよな。

 どういうふうに折り合いをつけているんだろうか?


 シュリアも笑って言う。


「そうね、いいわよ。ココは私の所有物だから、それなら私の独断であげることができるわ。我が家の労働力でもあったけど、《《このくらい》》ならお父様も許してくださると思うわ。……あげるとなると、惜しく思うのって、不思議よね、ふふ。あとで書類にサインちょうだいね。これから、ココはトモキの奴隷よ」

「ありがとう。感謝するよ」


 ココの価値がシュリアにとっては『このくらい』なんだなあ、と思うと、改めてこの世界の厳しさと格差のひどさを思い知らされる。

 でも、俺にとっては『このくらい』でもなんでもない。

 村人たち全員のステータスを見て回ったけど、魔力の値は最高でシュリアのAだった。

 あとは、奴隷の少年であるナニーニのB。ほかにも何人かBはいたけど、そのくらいだ。

 SSSSSの魔力を持つココは規格外なのだ。

 そばに置いておきたいし、なにより……。


「ココは変なやつだけど、一緒にいるとなんか安心するんだよな」

「私が変なやつって、失礼ですわ! 救世主様じゃなかったら怒ってるところですわよ!」


 そういうココの目は全然怒っていない。

 今は俺の奴隷だ。

 まあ、奴隷としては扱ってやらんけどな。

 俺は自分のケーキが乗った皿をココの方に押しやる。


「ほら、食え、いっぱい食え。ココはなんか褒美、いるか? 欲しいものあったら言ってみな」


 俺の言葉に、ココは即答した。


「それなら、お願いがございますわ……。いえ、トモキさんではなく、シュリア様にお願いがございます」


 シュリアは驚いたように目を見開く。


「私に?」

「ええ。あの主人を失った哀れな奴隷がいるでしょう? 私も少しだけですが見知っていますわ。タルミと、ナニーニと、ミーシャ」

「ああ、そういう名前なのね。あのダークドラゴンの襲撃のときに亡くなった農場主……ええと、ベルーガさんのところの奴隷でしょ?」

「ええ、あの子たち、今はどうなってますの……?」

「まあ、所有者であるベルーガさんが亡くなっちゃったからね……。性格悪くて評判の悪い人だったけど、亡くなっちゃえば悪く……言う人はまだいるけど。奴隷だけじゃなくて雇っている農夫の人たちにもひどい扱いしてたし。お父様も何度か叱っていらっしゃったわ」


 タルミたちが言っていたとおり、本当にひどい人間だったらしいな。あの少年たち、ムチで打たれたような傷だらけだったしなあ。


「で、ベルーガさんの親戚って結構遠い土地にいるから、送り届けるのも大変だし、近くの町で売ってお金にして送金する予定よ」


 ココは間髪入れずに言った。


「それを、シュリア様が買ってくださらないかしら?」


 ああ、それはいい考えだ、と俺も思った。

 シュリアは奴隷の所有者としてはかなり寛大な方だ。

 どこの誰かもわからない人間に買われるより、シュリアのもとで奴隷をやっていたほうが絶対にいい。


「俺からもそれは頼むぜ」

「うーん、そうねえ。三人となると、私のお小遣いで足りるかなあ……。ギリギリ、足りるはず。でも、三人一緒にとなると、お父様の許可もなければ難しいわ。お父様が帰ってきたらお願いしてみるわね」


 ありがたい。

 やっぱりシュリアはいい子だなあ。


「ね、奴隷ちゃん。奴隷ちゃんはもうトモキの奴隷ちゃんなんだから、ちゃんとご奉仕するのよ。……トモキ、あんまり痛くしないであげてね? エッチなこともほどほどにね?」

「しねえよ!」


 俺はつい叫んでしまった。

 いやほら、そういうのは良くないと思う。

 俺は人権が守られてる現代日本で平和に生きてきたから、そういうの、ほんとよくないと思う。

 いや俺だって性欲はあるし、ココのでっかいおっぱいには視線を奪われちゃうけどさ。それはそれとして、そういうのは、同人誌の中だけで楽しんでいればいいのだ。

 っていうか、今の会話、まだ9歳のミラリスに聞かれてないだろうな……。

 と思ったら。

 ミラリスは俺たちの会話に入れなくて退屈していたのか、テラスの手すりにぶら下がるように肘をかけ、ボーッと外を見ていた。

 そして突然、叫んだ。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん! 馬の蹄の音がする!」


 言われてみれば、遠くから馬が駆けてくる音がする。

 遠くに目を凝らすミラリス。

 そして何かを発見したようで、また叫んだ。


「パパだ! パパが帰ってきた!」


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