『体育祭』
あれから季節は夏になって、俺たちは暑い日を過している。
「柊くんは神城さんといつ出会ったんだっけ?」
赤野がそう言って今日も志乃亜のことを聞いてくる。
夏になってもこいつは変わらないということは秋になっても冬になっても神城さん神城さんとうるさいままなのだろうか?
そんなことを考えるが、結局は無駄なことだなと考えるのをやめる。
どうせ、いつになっても、赤野は変わる気配が一切見られない。
それならそうと、仕方ないことなのだろうと思った。
「綾は体育祭どうするの?」
突然大野から言われて俺は思い出した、夏って体育祭あるじゃん...。
「・・・」
そう、言うまでもなく俺は運動をしていないことから体力不足が特に目立っているようになった。
対して志乃亜はというと運動神経抜群という、完璧美少女なので俺との差は歴然だった。
「あ、俺運動ダメダメなんだよな...」
俺がそう言うと赤野と大野は口を半開きにして俺の方を見ていた。
「ま、まぁいかにもできなさそうだからな!」
赤野はそう言って俺の体の白さや、筋肉のない体を見て言っていた。
「あはははは!!マジかよ!綾、お前頭は良いのに運動は無理なのかよ!」
一方、大野は俺のことを見て爆笑中だった。
なんで運動ができないということに、ここまで笑えるのか少し不思議に思ったけど勝手に笑ってもらおう。
「それで、柊くんはどうするんだ?」
「まぁ?100メートルとかなら行けるけど多分」
100メートルを全力で走るくらいなら体力はある、タイムは12秒くらいだった気がするがこの体になってから測ることはなかったので13秒くらいには落ちてるだろう。
「まぁ、それが無難だろうなぁ...」
大野は笑いが収まったみたいですぐに話しに入ってきていた。
「いや、借り物競争もありかな。もしかしたら...1位取れるかもしれないし」
「あはははは!!まだ1位取る気か!」
「ありかもしれないね、借り物競争は結構人気な種目だけど頑張って」
大野に対してはまた笑っているので放置しておこう、もうこいつ面倒だ。
だって何言っても笑ってきそうだから、まぁこういうのも悪い気分じゃない。
赤野は俺の話を真面目に聞いて、話し相手になってくれている。
いつもの志乃亜のことを女神に例えて宗教のような話しをする時は無視しているがこういう時には役に立ってくれる。
「あれ、綾団体戦は?」
また笑いから戻ってきた大野は突然そんなことを言い出した。
そう言えば団体戦もあるのか...。
「終わった...」
俺はその場に膝をついていた。
何故終わった...と言っているかと言うと団体戦は個人とは違いチームに迷惑をかけるという事態になってしまう。
「まぁまぁ、落ち着いてあっても綱引きとか力入れてるかわからない競技だったりするから...多分」
「騎馬戦とか下で持ち上げる役になったら終わりじゃん!」
赤野のカバーを大野がツッコミをしている、漫才の完成だった。
「騎馬戦なら上になればいいだろ?」
「あ...」
どうやら騎馬戦については赤野の発言によって大野は敗北したようだった。
実際に上ならまだ動けるかもしれないな...などと思いながら2人のやり取りを眺めていた。
実際に決めるのはまだもう少し先の話になるみたいなので、こんな話で盛り上がってしまっているのは俺たちだけではないらしい。
ふと志乃亜の席を見ると『志乃亜ちゃん、何出る?』『神城さんリレーで1位とったら付き合って?』『神城さん100メートル1位取るから結婚しよう!!』などど、半分以上は危なさそうな奴らが志乃亜に対して、話しかけていた。
志乃亜はゴミでも見ているかのような冷たい眼差しになっているが、無表情なので小さな変化には俺くらい一緒にいる人じゃないと見分けがつかないだろう。
「神城さんは何やるか聞いてないのか?」
「聞いてるわけないだろ、全く俺をなんだと思ってるんだ?」
「神城さんの恋人?」
「全然違う、小さい時の知り合いだぞ?」
赤野のいきなりの発言にびっくりしたが落ち着いて返答していた。
「だけど神城さんはどうかな?結構前に聞いたけど小さい時の約束守ってここまで調べてきたって神城さん言ってたからな?」
「約束は守るためにあるんだ、そこに何かしらの感情があったとしても志乃亜の好きにすればいいだろ、来たいと思ったからこの高校に来た、それで終わりだ」
俺の言葉に対して「真面目だな...」と赤野は返してきたが拗らせてるな...とか思ってたりするんだろうな。
実際にもう恋愛に対しては懲り懲りで、当分はこんな風に馬鹿みたいに騒いで何かとみんなで色々なイベントを楽しんでいきたいと思った。
◇
放課後になるといつものように志乃亜と一緒に帰っている。
「最近は随分と盛り上がってるみたいですね」
「盛り上がってるんじゃなくて、あいつらが騒いでるんだけど」
「体育祭どうします?」
「とりあえず、借り物競争とか100メートル走とか、楽そうなのを選ぶしかないかな」
「借り物競争は内容によっては地獄です」
「そこは俺の運を信じよう」
「結構運悪い方だと今までの経験からわかるんですけどどう弁明します?」
確かに今までの事を振り返ると俺の運は最悪の最底辺だと言えるだろう。
「まぁ、頑張るしかないな...」
そう一言返し、帰路を辿った。
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今日も3話投稿。
第三章は色々な人を綾と関わらせていけたらなと思います。
また、体育祭という行事も絡めつつ、少しでも盛り上げれたらなと思います。第二章とは違い結構長くなると思います。




