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私はまだ、何もしてなかったのに?  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


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9/11

9.殿下からの提案

 アグネス様の断罪が終わった。


 国王陛下暗殺未遂は一族連座の大罪だけど、実行犯はロドニー殿下。


 そのためアグネス様のサーマル公爵家は、今後、絶対服従の魔導契約の元、降格処分と罰金刑で終わった。

 もちろんアグネス様は許されない。公爵家からの勘当のすえ、表向きは処刑。


 でも……。実はアグネス様は死んでない。

 彼女を殺せば、物語通り孤児に転生する可能性がある。

 記憶を持ったまま転生され、逆恨みで動かれてはたまらない。


 死なれるのも後味悪いし、他の刑じゃ無理なのかしらと思っていたら、クリフ殿下がそっと教えてくれた。


 彼女は魔道具で獣に変えられ、厳重な監視下に置かれることになったらしい。


 牢ではなく、檻での生活。

 公爵令嬢としての尊厳も何も守られない。

 人間としての意識を持ったまま動物にされるのは、正直、死ぬよりキツイと思う。


 ロドニー殿下は身分(はく)奪の上、投獄。刑の執行を待っている。

 王様に毒を盛ったのだ。たぶん見逃しては貰えない。


 罪を(あば)く時、クリフ殿下もすごく複雑そうな、割り切れない顔をしていた。弟だもんね。情があるよね。


(いろいろすごく、切ないなぁ……)


「私を追放するだけで終わっておけば、大きな波風は立たなかったのに。アグネス様はどうして王家にまで手を出したのかしら?」


「欲が出たんじゃないか? 国を操りたいという」


「殿下っ!」


「国を預かるなんて、相当覚悟の()ることなのにな」


 王宮のバルコニーでポツリこぼした独り言を、クリフ殿下に拾われた。


 事後処理に忙しくて、ほぼ会うことのなかった久しぶりのクリフ殿下に驚く。

 シーツや古着じゃない殿下は、金糸刺繍の高貴な服がこの上なく似合ってて、改めて住む世界が違うと痛感する。


 その雲の上の方が、隣に立って笑顔を見せた。


「"聖女の万能薬"は、やっと収穫が終わった」


「なんですか、その"聖女の万能薬"って」

「ん? お前が大神殿の森で育てた(タネ)だが」

「えっ、そんな呼び名がついたんですか?」


 リスな殿下が植え、私が世話した王家の種は、その後見に行くとワッサワッサと生い茂っていた。

 殿下も王様も私の神聖力で回復したから、薬草はそのままになっていたのだ。


 "純真無垢な、心正しき聖女の力で芽吹いた(タネ)。薬草は大切に扱い、有事の際に活用しよう"。


 とかなんとか。クリフ殿下が恥ずかしい(うた)い文句で先導し、ハイポーションとして大量に精製されることになったらしく、その作業中らしい。


 殿下には話したのだけど、物語『あなたと永遠(とわ)に』ではこの先疫病が流行る。それに備えて薬を用意しておけば、早めに食い止めることが出来るかも知れない。もちろん衛生管理を徹底したら、その方面からだって効果あるだろうし、それに他にも──。と、語るうちに白熱したことは否めない。


「聖女として文句なしの活躍だ」


 殿下が頷く。

 王様が私を「聖女」と認め、神殿も賛同したせいで、私は森小屋にも男爵家にも帰れず、なぜか王宮に留め置かれている。


「それですけど、私には聖女なんて務まりませんから、このまま野に(はな)ってください」


「そうか? 弱き者に手を差し伸べるシェリルの優しさ、先を見据えた考え方、視野の広さ、俺の目にはこれ以上なく聖女に相応しく映っているが?」


 器用に小首をかしげて、殿下が私をのぞき込む。


(近い、近い! なんでこの方、こんなに近いの?)


 以前殿下が言っていた。

 ペットと飼い主の距離感だと。

 でももう殿下は人間に戻ったし、私の不整脈を誘発する近さは控えて欲しい。吐息を感じるような近さは、未婚の男女としてよろしくないと思うの。

 だって頬が、とても熱くなるから。


「か、買い被りです。それは全部、私に前世の記憶があるからで……」

「前世の記憶があるからって、怪我(ケガ)したリスの世話は焼かないだろう?」

「えっ、それは──」

(そうかな? 優しいかな? 別に普通だと思うけど、そう思って貰えるのは嬉しいかも)


 チラッと殿下を見上げたら。

(!)

 どきりと心臓が跳ねた。


(なんて目で見てるんですか、クリフ殿下っ)


 慌てて目を()らす。

 まるで大切な宝物を見るような、情愛(こも)った眼差しに、私の鼓動がますます乱れる。

 ヤバい。これ以上ここにいたら、勘違いしてしまいそう。


「あ、の、でも、やっぱりそろそろ、帰りたいです」

「お前のリスを見捨ててか?」


 はぅぁあああああああ???

 な、何を言いだしちゃったの、殿下。

 殿下は第一王子で、今やこの国唯一の王位継承者で、だからもうリスじゃなくて。それ以前に「お前の」って何──っっっ。

 

「ほ、保護した生き物は、怪我が治ったら、あるべき場所に戻すんです。殿下のあるべき場所はこの王宮で、拾った責任はもう、完遂(かんすい)、しましたから」


 つっかえ、つっかえ、どうにかこうにか殿下に伝える。


「それは野生動物のケースだろう。ペットは違うはずだ」


 ぽてっ、と殿下の頭が私の肩に乗せられた。


(ええええええ──??!)


()でていいぞ?」

「へあっ?」


 驚きすぎて、変な声出た。

 流し目コンボの上目遣い! 色香と魅力が突き抜けすぎよ!


「たびたび俺の頭を見ていたな? 気づいてないとでも思っていたのか?」

「うっ、あ、それは」


 シナモンカラーのリスを思い出すたび、その手触りが懐かしく、つい視線が殿下の金髪に向かっていた。手がそわそわしてた覚えがある。見られてたの?


「ストレスでハゲでも出来てるのかと案じた」


 くっくっと殿下が笑う。

 振動が、ダイレクトに肩に伝わってくる。触れてる部分の金髪が、柔らかい……!


「で、殿下、頭を戻して」

「なぜ?」


(なぜ、ですってぇぇえ? 殿下の体温に期待しちゃうからで──ンンンンンっ。期待って何!?)

 

 怖いわ。危うく理性が()かされるところだった。


「普通に恥ずかしいからです。それに誰かに見られでもしたら誤解されます」

「誤解? シェリルのうなじに、ホクロがあることまで知ってる仲なのに?」

「いっ!?」(いつ見たの?)

「"肩乗りリス"がしたいと、俺を肩に乗せたのはお前だ」

「っつ、あれは! 言葉がわかってるようなお利口なリスだったから、"ナウシカごっこ"が出来るんじゃないかとうっかり……!」

「"ナウシカごっこ"?」

「こちらの話です。お聞き流しを」


 まずい、まずい、どうしちゃったの殿下?

 なんでこんなにグイグイ来るの?

 でも一番まずいのは、殿下とのこのじゃれあいが楽しい自分だ。ずっと続けていたいほど、心地良いのは絶対まずい。


(彼とは身分が違いすぎるのに)


 このままじゃ私、ペットロス以上の喪失感を抱えることになる。


「あの、本当に私、もうお(いとま)します。明日にでも、ううん、今すぐ荷物をまとめますから」


「まあ、そう()くな。聖女就任式にお披露目と行事が続く。王宮で寝泊まりした方が便利だろう」


(お願いだからもう引き留めないで──! 聖女もずっと辞退してるのに──っっ)

 焦る気持ちを押し隠し、なんとか抵抗を試みる。


「前に私に"家族と引き離されてかわいそう"って言ってくれたじゃないですか」


「それなんだが──。俺をお前の"新しい家族"にして欲しいと言ったら、困らせてしまうだろうか」



 殿下、猛アプローチ中。この続きは明日(朝)を予定しております。

 断罪シーンをアグネスで展開してしまったのですが、あまり人気がなく! (^▽^;) ヽ

 やはりシェリルたちから見た断罪が良かったでしょうか?

 その他「端折(はしょ)ってたけど、この場面読みたかったなぁ」とかありましたら、ぜひお聞かせください♪(´艸`*)


※クリフは目的があり種と指輪を別の場所に埋めましたが、リスは習性として食べ物を種類別・大きさ別に整理して蓄えるようです。チャンク化に長け、整理整頓出来るのすごいヾ(*’O’*)/

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あああああーっ! 第一話でリスの名前を「テト」にしてたらここでフラグ回収できたのにーっ!(爆笑) 読んでるわしら読者としても「テト?なんで?まあ確かにあれリスっぽかったけどw」→「あー!それでテトかよ…
肩乗りはロマンですよね。うむ。 うちの先代猫は肩乗り猫ですが、登る時足や背中(服も)が 傷だらけ。一時は七キロ弱だったので重い… 洗い物や料理なんかを肩から見てたり、 肩でコップ持ってきて水飲ませて…
ほら、怖くない え、感想ですよ( ̄ー ̄)b
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