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【俺氏】聖女紋が発現して、王子の花嫁候補になった件【男なのに】  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)
二章

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彼が夢を見せた理由

全てが終わり、軟禁生活となったリンの元へグウェンダルが現れた。

しかし、その足にはやはり枷がある。


『ありがとう、お母さんにもよろしく言っておいてね。

それと、これ、斬ってくれるかな?』


グウェンダルがリンに、事情説明のために見せた夢。

結局、最後までは見ることは無かった、彼と、そして勇者とメリアの過去。

ただの事情説明だけで見せたわけではなかった。

なにもかもが解決して、もしまだ天へ行けなかった時の保険として、グウェンダルはリンへあの夢を見せたのだ。


リンは優しいから。

困ってる理由を見せれば、知れば、まず断れないと知っていて、グウェンダルはあの夢を見せた。

そのことは、とっくにリンへ説明済みである。

だから、リンは肩をすくませて頷いた。

手近にあった果物ナイフを取る。

けれど、少し躊躇う。


「あの、お姉さんに会わなくていいんですか?」


リンが女神だと思っていた女性、【綺麗なお姉さん】のことだ。


『うん。

彼女には、やっぱり僕たちのことは見えないはずだし。

それに……』


そこでグウェンダルは、足元に視線を落とす。

それから、何かを抱き上げ、肩に乗せるような動きをする。

そしてリンを見た。


『彼女は新しい時間を過ごして、幸せに生きた。

その結果を見れただけで、僕は満足してる。

僕の、僕たちの時間はとっくに終わってるんだ。

新しい時間も経験も必要ない。

後悔が無いわけじゃないよ。

でも、人生ってそういうものなんだよ。

なるようにしかならない。

この結果に思うところがないわけじゃないけど、会わなくていい』


「そういうもの、ですか」


リンはナイフを振るう。

枷が外れ、鎖が消える。


『本当にありがとう。

僕達の死が無駄じゃなかったって、最後に思わせてくれて』


たち??

そういえば、さっきから複数形だ。

消えていくグウェンダルの肩、そこにさっきまで見えなかったモノがみえた。

たぶん、ずっとグウェンダルの傍にいたのだろう。

それは、子供だった。

二歳くらいの、子供。

グウェンダルに肩車される形で、その小さな子はリンを見ていた。

でも、リンはおろか、リンの母ですら、あまりに希薄で気づけなかった存在。

そして、リンの母親がグウェンダルに対して持った疑問の答えでもある。

なぜ、他人の子供に対して必死になっていたのか。

それは、彼も親だったからだ。

もう一人の自分のやらかしではあった。

けれど同じ親だから、よその家の子とわかっていて、余計なお世話だと理解していて、口を出したのだ。

もしも、ここにリンの母親がいたならその理由に気づいたことだろう。

けれど彼女は現在、王都を観光中のため不在であった。

小さな子どもは、ニコリと笑うとバイバイとリンへ手を振った。

リンも手を振り返した。

小さな子どもは、嬉しそうにわらってくれた。

そして、二人は光の粒子となって消えていった。

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― 新着の感想 ―
そうか、子供も囚われて…そしてそのまま育ってたのか…… おやすみ……
グウェンダルさんが穏やかに逝けたようでよかった 次に生まれてくるときもそばに居続けた子供と家族になれたらいいな
流れた赤子は、悠久の時の中で僅かに成長してたんか…。 死しても側に居つづけた父親の、愛故になのかなぁ。 ──お疲れ様です。おやすみなさい…。
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