夢をみた、たぶん、他人の夢、記憶、そんな夢をみた
リンは夢を見ていた。
たまにあるのだ、夢を夢だと気づくことが。
なぜ、こんな夢を見るのかわからない。
どこかの村だ。
そこで仲睦まじく暮らす、二人の少年と少女。
少女は、【綺麗なお姉さん】を幼くした感じだ。
だいたい、12~13歳くらいだろうか。
少年もそれくらいだ。
ただ、こちらはつい最近知り合ったグウェンに似ていた。
そんな二人の、なんてことない、平々凡々なある意味退屈で平和な日々が過ぎていく。
ある日、少女がお腹に手を当て嬉しそうに少年へそのことを話す。
少年は驚いて、でも次には嬉しそうに少女を抱きしめる。
場面が変わる。
結婚式の場面だ。
村人たちに祝福され、神に愛を近い、口付けを交わす。
そんな幸せな場面だ。
2人とも照れながら、でも幸せそうに笑っていた。
でも、幸せはドス黒い紅に塗りつぶされた。
魔王軍が村に攻め入ってきたのだ。
よりにもよって、二人の結婚式の日に。
殺戮が行われた。
夫婦となった二人は逃げ惑った。
なんの力もない二人には、逃げることしかできなかった。
やがて、夫となった少年は妻となった少女と、彼女に宿る新しい命をまもるために散ってしまった。
少女はなにもかもを諦めようとしていた。
そんな時だ。
二人とそう歳の変わらない少年が現れて、魔王軍を討伐してしまったのだ。
彼が後の勇者として、歴史に残り語り継がれる少年であった。
まだ、勇者紋を神から授かる前である。
また場面が変わる。
今度は、どこかの診療所だ。
そのベッドの上で、少女は呆然としていた。
宿っていた命が流れてしまったのだ。
仕方ないだろう。
あれだけの事を経験して、体力的にも精神的にも負荷がかかり過ぎたのだ。
そこから、しばらく少女は泣いて暮らすこととなった。
生存者は彼女だけだった。
(……俺はなにを見せられてるんだろう)
まったく意味不明だ。
しかし、夢から覚める兆しはない。
もうしばらく、この夢を見続けなければならないのだろう。
なんとなく、そんな気がした。
【追記】
前話で迷探偵が調べた資料は、一部事実と異なる記載があります。
記載者のミスだったのか、あえて異なった記載にしたのかは不明です。




