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【俺氏】聖女紋が発現して、王子の花嫁候補になった件【男なのに】  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)
二章

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体育館地下のダンジョンの怪

翌日。

王立学園での調査開始三日目。

今日も、リンは生徒会室で待機である。

三日目ともなると、学園関係者が差し入れを持ってきてくれるようになった。

グウェンのことが噂になったのかもしれない、と心配したが、違った。


「ほら、バレたら罰が待ってるから。

そんなヘマはしてない」


とは、本人談である。

彼は今日も、生徒会室に来ていた。

他の人が来た時には、二人で口裏を合わせる予定である。


グウェンは【情報提供者】である、といえばいいだけなのだ。

事実として、今日、彼は情報を持ってきてくれた。


「行方不明関係だと、やっぱり体育館地下室が怪しいと思うんだ。

噂くらい誰かに聞いたかもだけど」


「あぁ、怪人とか声のやつ?」


「そうそう、それそれ。

他には」


「ダンジョンの話?」


「あ、やっぱり知ってたか。

そうそう。

体育館にあるステージ。

その地下は物置になってるんだけど、そこには怪人がいて気に入った人間を連れ去るって話。

もしや、と思って地下室を調べたり、深夜から明け方にかけて張り込んだんだけど、なにもおこらなかった。


で、考えたんだよ」


と、差し入れを持ってきた本人が食べ始める。

リンも食べる。

差し入れの中身は菓子パンや菓子である。

惣菜パンもあった。


「たぶん、俺だとダメだとおもったんだ」


「なんで?」


「だって、そういう噂の中の登場人物たち、被害者というべきか行方不明になった子というべきか。

とにかくそういう子って皆女の子なんだよ」


基本、聖女紋持ちは女の子しかいないので、女の子が被害にあっているということだ。


「女の子を餌にするしかないのかなって。

でも、出来ないじゃん、そんなこと」


「まぁな」


リンは自分の手の甲にある紋章を見た。

何故か、発現してしまっている聖女紋。


「けど、」


そこで、グウェンは言いにくそうにリンを見た。


「けど?」


「あの、餌って言っちゃったけど、それは言葉のあやってやつで」


「うん」


「考えてみたんだ。

もしかして、声や怪人と呼ばれる存在は、【聖女紋持ち】だけを狙ってるんじゃないかなって。

だから、その、リンは男の子だけどワンチャン、あるんじゃないかなって」


なにがワンチャンなのかは、あえて言わなかった。

リンも察することができたからだ。

くわえて、考察厨がすでにその事に気づいていたからだ。

朝と夕に、リン達はそれぞれが集めた情報を共有するための会議を開いている。

体育館地下室のことや、ダンジョンの怪異についても情報共有されている。

その時に、考察厨がそのことを指摘していた。

今日1日、情報収集をして新しいものや、目ぼしいものが無ければ体育館ステージの地下室を調査する予定であった。


「うん。そうかもね」


「その様子だと、もしかしてもう知ってた?」


「頭のいい人がいるんだ。

あと情報集めるのが得意な人も。

だから、知ってた」


「そっかー。

じゃあ、近いうちに調べる感じ??」


婚約者のことが気がかりなのだろう。

少しでも、どれくらい情報があって調査が進んでいるのか、グウェンは知りたいのだろうと思った。

だから、本当は知らせてはいけないのだけど、リンはグウェンを安心させるために、頷いてみせた。


グウェンは、ホッとしたような笑みを浮かべていた。


そして、更なる情報を提供してくれた。


「それじゃ、これも多分知ってると思うけど……」


それはどこにでもある怖い話の定番だった。

別口で怪人と出会う方法、声を聞くための方法、帰らずのダンジョンへの行き方、そのやり方、儀式。

それらを教えてくれたのだ。

それは、本当にどこの学校にでもある【怪異と出会う方法】で、目新しさはなかった。


「じゃあ、よろしくね。

リン」


「うん、婚約者さんを見つけたら必ず知らせるよ、グウェン」


リンが請け負うと、グウェンは嬉しそうに微笑んだ。



その日の夜。

珍しく母から連絡がきた。

映像通信である。


「え?

あー、別にいいけど、でも今色々忙しくて」


なんでも、祖父母や親戚からさすがにリンの顔を見に行った方がいいのではないか、と言われてしまったらしい。

父親の葬儀を終え、一区切りが着いたのだから、ちょっとした旅行にでも行ってくればいい、という提案でもあった。


『でも、夜はこうしてお家にいるんでしょ?

ほんのちょっと一泊するだけだから。

リンのお家も見てみたいの。

散らかしてないかとか心配なの』


「姉ちゃんじゃないんだから。

大丈夫だよ」


『そう?

どうだろう??

コンビニの菓子パンばっかり……たべてるじゃない。

やっぱり心配ね。

そういうことだから、今度の休みの日に行くわ』


「え。ちょ、勝手に」


『もう決めましたー。

じゃ、お仕事頑張りすぎないようにね。

あぁ、それと知らない人から物をもらわないこと。

食べ物とかもらっても、絶対たべないこと。

いいわね??』


「母さん、俺、もう高校生なんだけど」


母親の中では、リンはいつまでたっても小さな子供のままのようだ。

そもそも、他人から貰った食べ物に妙なものが入ってたとしても、リンには関係ないのだ。

要らぬ心配である。

そうして、その日は終わったのだった。



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