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【俺氏】聖女紋が発現して、王子の花嫁候補になった件【男なのに】  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)
二章

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王立学園で調査することになったから、助っ人呼んだ

今回は、というべきか、今回も、というべきか。

リンは王子と共に聖女活動をするよう指示された。

活動場所が、王立学園ということで王子は案内役も兼ねている。


王立学園で何かしらの怪異が起きており、すでに生徒含め20名が行方不明となっている。


「じゃ、確認」


そう言いつつ、軽く手を挙げたのは考察厨だった。

場所は生徒会室だ。

この場には、リン以外にも召集された者たちがいる。

手を挙げた考察厨、配信者、特定班、スネークの四人である。

リンの知り合いであり、こういったことに詳しい、ということで呼ばれたのであった。

その判断をしたのは王子である。

魔族襲撃時には犠牲となったものの、事実として彼らはリンと共に魔族の件で活躍した。

その功績を鑑みての依頼である。


「まず、一部生徒の登校が確認されておらず、調べたところ行方不明が発覚。

その調査の際に、生徒たちは怪異について噂ないし独自の調査をしていたことが判明する」


独自の調査というと聞こえはいいが、要は肝試しである。

娯楽のひとつだ。

深夜の学園に侵入して、怖い噂をたしかめよう、としたのである。


「それらの情報をもとに、王宮は聖女紋持ち三人を派遣。

しかし、調査中に聖女紋持ちが姿を消す。

護衛は意識不明で倒れているのが発見された。

つぎに、人気ランキングの序列でいうところ十位から四位の聖女紋持ち、7名を派遣。

やはり、学園内で消息をたってしまう。


そして、先日。

聖女A、じゃなくて序列三位のアリス嬢、序列二位の薔薇ジャムさん、じゃなくてリリス嬢が派遣され行方不明となった」


神妙な顔で頷いていた王子だったが、ちょくちょく挟まれるアリスとリリスのあだ名に首を傾げる。


「聖女A? 薔薇ジャム??」


「あ、こっちの話です」


考察厨は軽くそれをかわす。


「え、なに、二人って一般人の間でそう呼ばれてるの??」


と、今度はリンへ言葉を投げる。

リンは明後日の方を見る。


「ま、まぁ、いいじゃないですか。

親しみをこめて、呼ばれてるだけですから。

俺なんて【配信者馬鹿四天王】ですよ、あだ名」


と、フォローを入れたのは配信者である。

リンは先を促す。


「話を進めましょう。

事前に特定班が、派遣された薔薇ジャムさん達、すみません、元々行方不明となった人たちと、派遣された聖女紋持ちたちの行方不明となった状況諸々を、あらためて調べてくれました」


王子が、【君もそう呼んでるのか……】という表情になる。

しかし、事態が事態なのでなにもいわない。

特定班が情報共有のため、発言する。


「結論としては、全員【声】を聞いていたみたいだ」


「声?

報告にあった、【声】か?」


王子が確認する。

行方不明となったもの達は全員、正体不明の声を聞いていたのだ。


「そうです」


特定班が答える。

最初に行方不明となった生徒も同様の声を聞いていた。


「で、スネークに手伝ってもらって、声を聞いた生徒とそうでない生徒の違いも調べてもらいました。

違い、というよりも条件、と言った方がいいかもしれません」


「違いがあったのか?」


「まず、これは王子もご存知のこととは思いますが。行方不明となった生徒たちは、花嫁候補からははずされていましたが、全員が【聖女紋持ち】であったこと。

そして、【怪異】について興味本位で関わっていたこと。

肝試しのことです。

あとは、彼氏持ちだったこと」


「は?」


王子が、【彼氏持ち】という言葉に反応する。


「ここからは生徒のプライベートに関することなので、アレなんですけど。

必要なので言います。

生徒達は全員、彼氏とそういうことをする関係でした。

事実として、肝試しに参加した他の聖女紋持ちで彼氏なしの子達はとくに何も起きていない」


これだけだと、行方不明となった花嫁候補達へ要らぬ誤解をされてしまう。


「ただ、そうなってくると行方不明となる条件に王子の花嫁候補たちは当てはまらないことになる」


そう口にしたのは考察厨だった。

考察厨は王子を見据え、続ける。


「無粋な言い方になってしまいますが、花嫁候補であることの大前提はそれなりの聖女としての力をもっていること、つまり聖女紋持ちであり実力があると判断されること。

リンの場合は神からの判断だったので、特例として花嫁候補とされた。


しかし、彼女たちにはもう一つ条件がある。

そういった意味で身綺麗であること」


少なくともそういった醜聞を人は嫌うものだ。

それは王室だとて例外ではない。

いや、王室だからこそ、そのあたりの調査は徹底されるはずである。


「だから、アリス嬢やリリス嬢は行方不明となる条件に一部合わない」


そこで考察厨は頭をカリカリとかく。


「これらから考えるに、行方不明となる条件はやはり【声】を聞くこと、と仮定するのがいいでしょう」


彼らの情報共有はつづく。

と言っても、ほとんどが元々の情報に毛の生えたような補足でしかない。

リンは話がある程度まとまったら、校内でさまざまな生徒に話を聞く係である。

でも、その前にやれることはやっておこうと、こっそりと掲示板へアクセスした。


脳内にリリスの言葉がよみがえる。


――オカ板を覗いたことは?――


なんとなく気になった。

もしかしたら、リリス嬢もそこで情報収集をしていたのかもしれない。

リリス嬢は基本家庭教師のもとで学んでいる。

王立学園に籍はおいてあるものの、必要最低限の日数しか登校していなかったらしい。

死んでたのも理由かもしれないが。


つまり、リリス嬢は学園内の情報に疎かった可能性がある。

ある程度のことは調べることのプロである、特定班とスネークが調査済みだ。

だから二人の前でわざわざ改めて調べ直す、というのも悪い気がして、リンはスレ立てして情報収集することは言わなかった。


スレ立てしたのは、リンとしては成功だとおもった。

なんと元卒業生が書き込みしてくれたのである。

この元卒業生が本当に卒業生であるかは、わからない。

けれど、なんとなく嘘はないなと思った。

卒業生とスレ民たちへのお礼を書き込み、現実に戻ってくる。

話し合いはまとまっていた。


リンは、生徒会室の外で控えていたタクトともに、当初の予定通り聞き込みを開始することとなった。

生徒や教師たちには話が通してある。

しかしやはり部外者であるリン達は私服で歩き回るのも目立ち過ぎる。

というわけで、リンは王立学園の制服を貸してもらった。

助っ人たちは、守護騎士見習いの制服を借りている。


「コスプレみたいだなぁ!

これ、あとでオフショのコスプレってことで画像上げたりは」


ウキウキと配信者が、王子へ許可を取ろうとしている。


「それは遠慮してもらいたいな。

動画もダメだからね」


王子は苦笑して却下した。

当たり前である。

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