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23.二人からの贈り物

「の! アリアが作ったお菓子食べるの!!」


「私のも食べて欲しいな」


 可愛らしい包みに入った手作りお菓子というものを貰った。なんでも二人で一緒に作ったらしい。


「ありがとな。お、クッキーか」


 まずはクリスタの包みから開く。中身はハート型のクッキーだった。チョコがまぶしてある。


「うん。アル君、昔好きだって言ってたから。チョコ付きだよ。久しぶりに作ったから味の保証は出来ないけど」


「どれどれ……ん、美味いなこれ!」


 口の中に、ほのかに広がる甘い香り。チョコの甘さも相まってとても美味しかった。クリスタは昔から料理が得意な方ではあったけど、それは聖女になった今でも変わらぬようだ。


「良かった口にあって」


 クリスタがほっと胸を撫で下ろす。俺がもぐもぐとクリスタのお菓子を頬張っていると、アリアがむうっと膨れっ面をしていた。


「アリアのお菓子も食べて欲しいの!」


「わりぃアリア。ついクリスタのお菓子に夢中になっちまってた」


 慌ててアリアの包みを開くと、中にはアリアの顔の特徴をよく捉えたクッキーが沢山入っていた。


「これはアリア?」


「なの! アリアクッキーなの!!」


 腰に手を添え、どうだと言わんばかりに胸を張るアリア。



「私がクッキーを作ってたら、アリアも作りたいって言ったから作り方を教えたんだ。どんなの作りたいって聞いたら自分のクッキーを作りたいっていうから二人で頑張っちゃった」


 クリスタはてへへと可愛らしく舌を見せる。俺はアリアの顔が描かれたクッキーを手に取ってごくりと喉を鳴らす。


 食べようとしたらクッキーのアリアがつぶらな瞳で見つめてきた。どうしよう食べれない。


「……アリアクッキー、可愛いすぎて食えねえんだけど」


「なの!?」


 アリアがギョッとする。クリスタが「だよねー。私も勿体なくて食べれない」と頬を掻く。


「そんな事言わないで食べて欲しいの! こんなにいっぱい作っちゃったの!」


 アリアが籠いっぱいのアリアクッキーを指差す。


「他の皆さんにも渡して回ってたんだけど、みんなアリア様のクッキーを食べるなんて恐れ多い、可愛すぎますって言って一個ずつしか貰ってくれなかったんだ。予想より遥かに余っちゃってどうしようかなと思ってたらアル君が私たちの前を通って」


「なの!」


「待て。今の話だと俺元々貰えない予定だったの?」


 そう切り出すと、二人は慌てふためき出した。


「あ! そ、そんな訳ないよ。ちゃんとアル君の分も用意してあったもん。ねーアリア?」


「な、なの! ママの言う通りなの!!」


「ちょっと怪しすぎるぞお前ら……」


 俺はカゴの中に入っている大量のアリアクッキーに目を向ける。


「アル君……」


「パパ……」


 二人が上目遣いをしてこちらを見てくる。食べる、食べるからとりあえずその目はやめてほしい。


「……頂きます」


 勇気を振り絞ってアリアの耳から頂く。


「ん。美味しいな」


「良かったねアリア」


 流石にクリスタが手伝っただけあって、かなり美味しかった。だと言うのにアリアが何故かプルプルと震えている。


「パパがアリアを食べたの!!」


 アリアが俺の食べかけのアリアクッキーを指差す。


「ぶほっ! げほっ、げほっ……おいアリア、その言い方はやめろ。誤解が生まれる」


「まあまあアル君。アリアクッキーはまだ一杯あるから全部食べなよ」


 そういって俺にカゴを押し付けてくる。ずしんと重みが来る。やはりかなりの量だ。


「クリスタ。そうは言ってもこの量、いくら俺でも食えないぞ」


「やっぱりそうだよね」


「なのー」


 しゅんとアリアの耳が垂れ下がる。

 3人でどうしようかと悩んでいると、酷く後ろから視線を感じた。


(誰だ?)


 軽く振り返ってみると、バーバリアンが物陰から物欲しそうにじーっと見てきていた。


「バーバリアン! こっちにきて一緒に食べないか?」


「バーバリアンさん。一緒に食べましょう!」


「バーバリアン。アリアが頑張って作ったクッキーを食べて欲しいの」


 アリアの必殺上目遣いが炸裂した。バーバリアンはごくりと喉を鳴らす。


「アリア様が食べて欲しいというのなら仕方ないな、よし、私が全部食べてやろう!!」


 俺からアリアクッキーのカゴを奪い取ると、どんどん食べ始めた。


「すげー食いっぷり」


「ね」


「なの。アリアは嬉しいの!」


 バーバリアンがアリアクッキーをどんどん食べるのを見ていると、後ろから下で見張りをしていたエルフに声をかけられた。随分と神妙な様子だ。


「アルベルト様。森の外にアルベルト様のご友人を名乗るお方がやってきています」


 友人? 誰の事だろう。


「えっと、名前はなんて」


「ユカナ。賢者のユカナと名乗っておりました」


「ユカナ!?」


「ユカナちゃん!?」


 それは勇者パーティーメンバーの一人であった。

ここまで読んで頂きありがとうございました!


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