第91話 死妖姫からの招待状
「「 雪だー!! 」」
ウインターシーズン到来ッ!
ここは公国の首都から遥か北東に位置するブランディル自治領にある、結構大きな村。
見渡す限り、辺りの山々は一面の銀世界。
私としてもレジェグラの世界に転生してから、初めて見る絶景の雪景色だった。
「はー、はー! 息が真っ白だー!」
「防寒着のおかげで寒くないのが救いですね、お母様」
「ふふ、そうね」
あっちの世界に居た頃は雪国の地方に旅行した事ってないから、ここまで何処もかしこも雪で真っ白って言うのは、初めての体験だわ。
火の術式を仕込んでポカポカの防寒着をしっかり着込んだ子供達も、雪を見て大はしゃぎね。
「母様、あっちにでっかいお城が見える!」
「あれがここの御領主の城ですか?」
「ええ。シェリル女公爵のお城ね」
今回、私達をこの地に招いた張本人。
ーーー永遠を生きる死妖姫でありながら公爵の爵位を持つ、ブランディル自治領の美貌の女領主、シェリル。
……レジェグラの本編でもチラッと名前だけは登場していたんだけど、
「(まさか私と友人同士だったなんてね……)」
何故、私達がブランディル自治領まで赴いたのかと言えば。
ーーー数日前にシェリル女公爵から手紙が届いたのが、全ての始まりだった。
以前、魔女の夜の開催を知らせる手紙を届けに来たのはカラスだったけど、今回はなんとコウモリが手紙を届けに来ましてね……。
手紙の内容を要約すると、
『お久しぶりね、ディケー。
今年の冬は私の領地で過ごしませんか。
美味しいご馳走と雪景色で歓迎します。
お話したい事がたくさんあります。
是非、いらしてね。
貴女の永遠の友 シェリルより』
……的な事が書いてありましてね。
文面から察するにディケーのお友達の一人だと思うんだけど……。
「(肝心のディケーは南の樹海でアグバログと戦った時以来、呼び掛けても返事してくれないし……)」
話を聞こうにも八方塞がりなので、仕方なく私がディケーの代わりに子供達と一緒にブランディル自治領までやって来た次第なのです、はい。
……半分くらいは観光やグルメを楽しみたかったのもあるけど。
「(お城のふもとの村にある小屋と、うちの納屋の扉が繋がってたって事は……)」
ディケーが以前にも、この土地に来た事があるって証拠だし。
なら久々に顔見知りに会いに、旅行に来てもバチは当たらないでしょう。
ここのところは子供達に構ってあげられてなかったしね……冒険者ディケーはしばらく、お休みって事で!
「(にしても……。
なるほど、噂通りの所ね……)」
村の中を歩いている人達は皆、頭から角やら耳が生えていたり、背中から翼、お尻から尻尾が生えていて……普通の人間があまり見当たらない。
「(ブランディル自治領……シェリルと同じく、名前だけはレジェグラの本編に出て来たから存在自体は私も知っていたけど……)」
公国内で唯一、国外からやってきた亜人に対して永住権を与える領地……何せ、領主が何百年も生きてる亜人の吸血鬼なものだから、公国側も「そういうのはちょっと……」とは言いづらいみたいね。
亜人達を率いて反乱なんて起こされても困るでしょうし。
「(国境の町であるヴィーナでも亜人は見掛けるけど、ここは比じゃないわね……)」
私達みたいに観光で来てる人間の人達も勿論居るには居るみたい。
けど、やっぱり亜人の方が圧倒的に多い所だわ。
「(確か、300年前の深淵戦争の時も……)」
このブランディル自治領からそう遠くない北の大森林(私が前に倒した巨猿王が異常進化した森ね)の中で異界のゲートが開いた時も、異界からやって来た魔物達はシェリル女公爵を恐れて、ブランディルへだけは侵攻しなかったとされている。
……それ程の実力者なら、公国が迂闊にシェリルの内政に干渉出来ないのも納得だわ。
「(それにディケーとも旧知の仲なら……)」
13年後にレジェグラの本編が始まって、ディケーの代わりに悪役になった誰かが邪神を召喚した時、シェリルも一緒に戦ってくれるかもだしね!
「(今のうちに顔を出しておいて、旧交を温めておくに越した事はないでしょう!)」
持つべきものは友達って、昔から言うもんね。
それに、せっかくのシェリルからの御招待だし、ここは素直にお城で何日か御厄介になっちゃいましょう!
「ライア、ユティ。
まだお昼だし、お城に向かうのは何か食べてからにしましょうか」
「「 さんせーい!! 」」
まずは地元のグルメで腹ごしらえ、とばかりに。
私は子供達の手を引いて、雪が舞い散るブランディルの村の食堂へと歩き出した。
「(寒い地方の方が星がよく見えるって聞くし……趣味の天体観測で立ち寄ってたのかしらね?)」
なにせ私……と言うか、ディケーは"星空の魔女"ですので。




