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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
45/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 優佳がそれを訳す。

「なにそれ?」

「杜甫の春夜喜雨って詩だよ」

 一瞬ぽかんとしてしまったソキョンにフィチは答える。

「レース中は大変だったけど、終わってみれば春のいい雨のように、許せるものだなあと、思って」

「フィチらしいわね」

「でもまあ確かに、やりがいあったね」

「難しければ難しいほど燃える。それがゲーマーさ」

「違いない」

 フィチと龍一はもう、選手として予選レースを戦ったのだから、予選通過にご満悦だ。自分の力で危機を、試練を切り抜けるというのは、これ以上にない充実感があった。

 チームのSNSアカウントでも龍一の加入と予選通過が告知されたが。それに対して、ようこそ! 頑張れよ! 期待してるぞ! と、歓迎するコメントが書き込まれた。

 予選でも何かしらの結果を出せば雰囲気はよくなる。ウィングタイガーも、フィチもプロチームにプロゲーマーとして一定のファンが着いている。

 龍一は促されてスマホでSNSアカウントを、それに対するコメントを見て、照れくささが増した。それと同時に、

「頑張らないと」

 と、使命感も増したのだった。

 龍一はSNSはシンプルなのをひとつ、非公開で持っているだけで。表に出ることは好まず。チームもそれを尊重し、SNSアカウントのことは書いてない。

 もっとも、フィチだけでなくソキョンと優佳には知らせて、フォローリクエストが来たので、それを承認して相互フォローしている。

 ちなみに最後の書き込みは、一年位前、全国チェーンのうどん店で釜玉うどんを食し、写真着きで「かまたまうめー」と書いたものだった。

 それを見た優佳は、

「うどんがお好きなんですね」

 とメールで触れていた。

 とはいえ、SNSでの書き込みはそれきりだった。ソキョンと優佳もSNS使用を無理強いせず、必要な連絡はメールやボイスチャットでしてくれた。

 ともあれ、第一関門は突破した。今日くらいは気楽にやっていいだろう。

 コロナ禍でもある。韓国のチーム本拠地の面々は、予選を無事に終えて。

「もっとみんなでいたいけど、今日は解散! 以後はリモートで打ち合わせです」

 と、ソキョンの言葉で、帰り支度をして。

「それでは!」

 と、すぐさまに帰った。

「では、また何かあれば連絡しますね」

 と、優佳も満面の笑顔で言い。ライブチャットはオフラインとなった。

「……。はあぁーーー」

 緊張感が一気に抜けて、シムリグを離れて、龍一はそのまま床にあおむけに寝そべった。

 プロとして初めての公式戦に挑み、その厳しい条件の予選を通過し、正式にチームに加入できた。

 感慨深かった。

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