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Sim Racing Novel Faster Fastest  作者: 赤城康彦
41/99

Go over 100%! ―100%を超えろ!―

 追走する、淡々と、だけど身も心も引き締めて、追走する。AIカーの後ろ姿が誘ってくる。

 来いよ、抜けよと。

 だけど誘いに乗らない。

 路面も滑りやすい。シンプルなレイアウトのディオゲネスの市街地コースだが、連続S字区間は右左と身を翻すようにうねるような感覚を覚えるときもあるが、右から左、また左から右へという操作では慣性も上手く操作しなければ、体勢を崩してスピンしかねない。

 この間、タイムトライアルでヴァイオレットガールもしくじってスピンしたじゃないか。

 左上に表示される周回数が、重ねられてゆく。

 35週に入る。残り10周。ヘッドセットから鋭いモーター音や風の音、雷鳴が入り混じって耳を突く。もちろん音は小さめにしてはいるが。それでもディスプレイの映像とあいまって、自身も激しい雷雨の中に本当にいるみたいに没入する。

 残り周回数は少なくなってゆく、残り9周、残り8周……。

「!!」

 そろそろと思ったころ、龍一の方では、連続S字区間の入り口でAIカーが必要以上に減速したが、減速どころか急ブレーキを掛けて、ほとんど止まりそうなほどだ。

「うお!」

 慌てて右によけようとするが、あろうことか急ブレーキをしながらAIカーもラインを変えて前をふさぐ。

 もうフェンスぎりぎりのところだった。左によけようかと思ったが、無理なライン変更は体勢を崩す。龍一も急ブレーキを掛けて、止まりそうなほど減速した。

 フロントノーズが相手のリアテールと接触する。

「……!」

 ソキョンや優佳たちはひやりとした。初めての練習時のような、フロント破損か!? と思われたが。

 2台とも何事もないように走り出す。軽い接触で済んで、損傷はない。大きな安堵感が湧き出る。

(やりやがったな!)

 龍一はもう遠慮しない、水しぶきで視界が悪くなるのもなんのその。ぴったりとAIカーに張り付き、抜く機会をうかがった。

 フィチも猛然と追走する。連続S字を抜けての次の右直角コーナーで、AIカーは追突させようと急減速するが。フィチは難なく抜き去る。

 AIカーは急減速しながらラインも変えたが、間に合わず、フィチにパスされ。しかしそのままの勢いでフェンスにぶつかり、あろうことかAIカーは本当に一瞬止まってしまった。

 ソキョンと優佳たちはこの、AIカーの、AIカーゆえのアクシデントに苦笑する。

(勝つことよりも妨害を優先させたプログラム。考えてみたら、哀れなものね……)

 フィチはメインストレートを駆け抜ける。引き離せたので、追走をされていることを示すデルタ矢印の表示はない。

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