Go over 100%! ―100%を超えろ!―
「……。わかりました、龍一さんを信じています」
「じゃあ僕も」
「わかりました。予選落ちしてオーナーと監督の仕事を増やしたら、一生恨みますからね」
もし予選落ちして、龍一は本加入なしでフィチは離脱となった場合の、新しい選手を探し加入のための手続きの手間を言っているのだ。これぐらいは言ってもいいだろう。
「今日はこの打ち合わせで終わりです。空いた時間は自主練習も大事ですが、大会に備えてのコンディション調整もしてください。これは大事なことなので何度でも言います」
「はい」
「それでは、明日は夜7時半に、お会いしましょう」
優佳が閉めの言葉を言い。ビデオチャットは閉じられた。
龍一は立ち上がって背伸びをして、深呼吸をして、
「刹那的にかっこいいことを言ってしまった……。……まあ、やるっきゃないか」
と、ぽそっとつぶやいた。
それから休憩を挟みながら自主練習をして時間を過ごしたが。満足な走りは出来ないままに日曜日が終わった。
翌月曜から、仕事を終えてから走り、打ち合わせをする。プロの目は厳しくも、的確で、龍一も学ぶことは多かった。
とはいえ、プレッシャーもある。そのため気分も重くなるのは禁じえず。ある時など、
「フィチはベテランでやってこれたから、そんなことを言えるんだよ!」
と、つい声を荒げてしまった。気になるところの指摘に対して、龍一は思わずムッとしてしまった。
「悪意があって言っているわけじゃないよ」
「オレだってわかってるけど、どうにもならないんだ!」
「それじゃプロは務まらないよ。承知の上でなんだろ」
ソキョンと優佳は一瞬呆気に取られたが、このまま、成り行きに任せた。任せながらスマホをいじり、ソキョンと優佳で、
「本音で言い合える仲ってことね」
「知り合って長いと聞いてましたが、喧嘩出来るほど長かったんですね」
「賭けになるけど、これでチームワークも期待出来るわね」
と、そんなやりとりをする。
思わず言い合いになってしまうのは、人間関係の中ではよくあることだ。もしこれで関係が絶望的になって、試合にも障るようなら、所詮はその程度のもので、契約を打ち切るまでだと割り切れる。
「eスポーツプレーヤーには、社会性も求められますからね……」
「そうね、スキャンダルの方が負けるよりも損失が大きいし」
「まあでも、私たちも随分と……」
「やったものですねえ」
ふたりより幾分か長く生きて、ソキョンや優佳も経験はあり。思わず懐かしがってしまった。
「ああ、いや、そうじゃなくて、ああなんていうか」
「うーん……」




