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25/27

Game 25

「あなたは何を言ってるの! そんなことできるわけないでしょう!」

 コーセイの提案に近見が噛みつく。

「ルールにあるのは【生還の権利は勝った「チーム」にのみ与えられる】、この一文だけだ。相手側と手を組むことを禁止していない。もしルール違反なら、オレも『天罰』を受けるはずだ」

 本物の銃を持ち込んでも、発砲せずに脅しに使うだけなら許される。ならば神の『天罰』の範疇はルールをあからさまに逸脱しなければ何をしてもいい。コーセイは天性の閃きで、そうした抜け道を突くのに長けていた。

「だからってそんな取り引きを堂々と持ちかけるなんて……」

「わたしはその提案、飲んでもいいわ」

 そう言ったのは小林だ。  

「あの女を殺して、沖島さんを生き返らせてくれるなら……よろこんで手を貸すわ」

「なっ、やめて! 後もう少しで勝てるのよ? 協力しなさい! ……こうなったら言うわ、私には数字が見えているのよ。ここで【8】の原田君を切って(・・・・・・・)あなたの【4】と合わせれば……」

「ふざけんな! 僕を切る? その言葉で近見さんの人間性がよく分かりましたよ。僕は乗りません」

 もう一人の劇団員、原田が近見を睨み『パス』を宣言する。

「ち、違う! 違うのよ誤解しないで! 今のは言葉のあやで……」

「見えているんならよ、だったらどうしてアンタ鬼柳ヤナさんを捨て駒にしたんだ?」

「えっ?」

 鬼吉組の若いほうが近見に言う。

「どうして鬼柳ヤナさんがあんなカッコ悪い死に方をしなくちゃならなかったのか、それを聞かせろって言ってんだよ!」

「だ、だからそれは……私も全部が見えているわけじゃ無くて」

「それが通ると思ってんのか? 結局あんたはヤクザを嵌めたんだ。そのツケは払ってもらうぞ。おっ死んで組長に詫びを入れてこい」

 補佐役の幹部の男が冷たく言い放つ。

「そ、そんな……」

 近見は人をうまく使おうとして墓穴を掘った。誰も彼女を救わない。あとはもう起死回生を狙っての一か八かの特攻しかない。

(向こうはまだ4人残っている……男が【X】だってことは分かる。『王族』だけど勝利条件にはならない。高校生の男と女のどちらかが【K】でもう片方がたぶん【10】なんだわ。固まってると見えないけどそうとしか(・・・・・)考えられない。【Q】の私が『王族覚悟』を使っても確率は1/2、そして外せば【X】が狩りにくる二段構えね。

 ……審判台の女は12なんだから【Q】で決定。でもだったらどうして『王族覚悟』を私に使わないの? 審判台での【相打ち】が狙い? それこそ意図が分からない……でも……)


「……もういい、見てなさい。自分だけ生き残ってやるわ。『王族覚悟』!」

 近見は剣を手にアイコの前に瞬間移動した。不気味さを感じながらも、「眼」で見えた情報を捨てることはできなかった。それがカーナビを盲信して右折左折をくり返すペーパードライバーと変わらない愚行・・なのだと思わずに。


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