アリアの危機感MAX ― “この国、滅ぶのでは”疑惑
アリアの危機感MAX ― “この国、滅ぶのでは”疑惑
散歩という名の健康観察ツアーを終えたアリアは、自室に戻るなりベッドへ倒れ込んだ。
ドレスは重く、精神は限界。
この世界の生活習慣の荒れっぷりが、心にずしりと来る。
(まさか……ここまでとは……)
天蓋の金糸を見上げながら、アリアは原作ゲームを思い返した。
■原作ゲームの“悪役令嬢ルート”
悪役令嬢アリアは、嫉妬に狂って暴走し、
恋敵のヒロインに対して嫌がらせを繰り返す。
その末路は――破滅。
そして同時に、王国には“魔力暴走事故”が起こり、
城の一部が崩壊するイベントがあった。
(でもさ……)
現実の城内魔術師のヘロヘロっぷりを思い返す。
(あれ、暴走って……嫉妬とか感情じゃなくて……
寝不足と過労と偏食で、魔力の制御力が落ちてるだけじゃない?)
今朝見た魔術師の魔力は、
ロウソクの火みたいに頼りなくて、少し風が吹けば消えそうだった。
(あれで高度魔法なんて撃とうとしたら……
そりゃ爆発するでしょ!!)
ゲーム内では説明されていなかった“裏側”が、
現実になって初めて見える。
■アリアの危機感はMAX
「この国……破滅フラグどころの話じゃないわよ……」
アリアは額を押さえた。
「生活習慣病で国が滅ぶんじゃないの……?」
侍女ルチアは不思議そうに小首を傾げる。
「お嬢様……何か、恐ろしいことでも?」
「ええ、恐ろしいわ。
この状態で魔法使ってるみんな、
命綱の繊維一本で宙吊りになってるレベルよ……!」
ルチアは分かっていない。
だがアリアには分かる。
・徹夜魔術師→魔力制御ガタガタ
・茶色食騎士団→集中力ゼロ
・水分不足の貴族たち→脱水寸前
・睡眠難民ルチア→ふらつきすぎて階段が危険
(このままいけば、誰が最初に倒れるかのレースよ……)
悪役令嬢?
破滅フラグ?
そんなもの、生活習慣の前では霞む。
「こうなったら……
城内の健康習慣、全部改革するしかない!」
静かだが確かな決意が、アリアの胸に灯った。
――悪役令嬢の新たな戦いは、
嫉妬でも陰謀でもなく、
“乱れきった城の健康”との戦いなのであった。




