腸ケアの全国的(城内的)流行とゆる不和
魔術師塔での“詠唱スラスラ事件”から数日。
噂は城内を駆け巡り、今やどの部署でも腸ケアが大流行していた。
廊下ですれ違ったメイドが、頬をほんのり赤らめながら報告してくる。
メイド
「最近……その……お通じが良くて……
魔力も安定してる気がします!」
アリア
「そ、そう! よかったわね!
(※そんな即効性の説明はしてないんだけど!?)」
訓練場でも――
騎士
「腹の具合がいいと、剣も軽いな!
魔力の流れが違うぞ!」
アリア
「それはまあ……そうね!!
(※科学的に説明すると長くなるから黙っておこ……)」
結果が出すぎている。
アリアはもはや何も言えなかった。
◆
そんな中、問題が発生した。
魔法科教師(白髭を震わせながら)
「最近の若い者は……
“快便=強さ”と思っておるらしい。
魔道の道は、そこまで俗ではないのじゃ!」
魔法士たち
「でも先生! 腸が整うと詠唱がスムーズです!」
「腸は第二の魔石!!」
「腸こそ最強!!!」
アリア(そっと視線をそらしながら)
「……実際そうなんだけど……
言わない方が良かったかも……」
老教師
「腸、腸と……最近はどいつもこいつも腸信者よ……!」
魔法士たち
「“腸こそ我らの魔源!”」
アリア
「だから宗教化するのはやめてってば!!」
しかし、城内のどこかから聞こえてくる。
「腸に良いスープ、追加でー!」
「黒パンの発酵種、売り切れですー!」
「腸は裏切らない!」
アリア
「……これ、もう止まらない流れよね……?」
ルチア(にっこり)
「お嬢様、今日も改革が大成功ですね!」
アリア
「成功……なのかなぁ……?」




