アリア、“魔腸ケア”プロジェクト開始
魔術師塔の騒がしい“腹鳴りコンサート”を聞いた翌日、
アリアは早速、塔の講義室に魔法士たちを集めた。
前に立つアリアの背後には、ずらりと並んだ試作品の瓶や鍋。
乳白色のヨーグルタ飲料、香ばしい発酵黒パン、そして謎のファンタジー味噌樽まで。
魔法士A
「お嬢様、その……これは魔力薬の新種ですか?」
アリア
「違うわ。健康の基礎よ。腸の味方たちよ。」
魔法士B
「腸……? 本当にそんな場所で魔力が生まれるんですか?」
アリア
「生まれないけど整うのよ!!
魔力っていうのは、身体が“普通に働いてる”前提で巡るの!」
魔法士たちは口をぽかんと開ける。
難解な魔法理論よりも、よほど意味がわからないという顔だった。
アリアは卓上の鍋から湯気の立つスープをすくい上げた。
「はい、まずはこれ。
“腸を温めるポカポカスープ・魔力循環仕様”。
飲むだけで腸が動き始めて、詠唱中にお腹が邪魔しなくなるわ。」
魔法士C
「そ、そんな……スープで詠唱が改善するなんて……」
アリア
「大丈夫、あなたたちの腸は限界よ。
昨日の音、塔中に響いてたんだから。」
魔法士たち
「(めちゃくちゃ聞かれてた……!!)」
半泣きの魔法士たちは、言われるまま木椀を受け取る。
ひと口。
「……あれ、温かい……お腹のあたりが……」
「なんか、魔力が胸の方までスッと……?」
「え、え? 気のせいじゃないよな……?」
アリアは腕を組んで得意げに頷く。
「気のせいじゃないわ。
腸が元気だと、魔力は勝手に巡るの。
さぁ、今日から“魔腸ケアプロジェクト”を始めるわよ!」
魔術師塔の面々は、半信半疑ながらもスープを啜り続けた。
そして――彼らの運命の腸が、静かに目覚めていくのであった。




