第5話 魔腸ケアで詠唱がスラスラ!? アリア、魔術師塔で“お腹の音”を聞く
魔術師塔に入った瞬間、アリアは空気の揺れ方に違和感を覚えた。
魔力の流れが、妙に波打っている。
塔の中央ホールでは、魔法士たちが詠唱の練習をしている最中だった。
「……ファイア、ボ……ぐ、ぐるるる……」
アリア
(……今の音、火の魔法じゃなくてお腹の音ね?)
続いて別の魔法士が声を上げる。
「……ヒ、ヒール……(ぷるるる……)」
ルチアが眉をひそめる。
「お嬢様……今の、詠唱に必要な音ですか?」
「違うわ。腸がSOSを出してる音よ。」
緊張や魔力不足の音ではない。
もっとこう、内臓的な悲鳴。
最近、騎士団・魔術師団に健康改革を施していたが――
アリア(内心)
(……食物繊維、やっぱり足りてないんじゃない?
魔力の循環にも影響が出てる……!)
魔法士たちは必死に詠唱を続けるが、ところどころで「ぐるる」「ぷるる」と不協和音が混じる。
魔術塔の中に、妙な“生のリズム”が響き渡っていた。
アリアは腕を組み、真剣にうなずいた。
「……決めたわ。」
ルチア
「はい?」
アリア
「腸は……魔力生成の“第二の魔石”よ!」
塔の空気が一瞬止まった。
ルチア
「お嬢様、それは……新理論というか、ほぼ暴論では……」
アリア
「いいのよ!
こういうのは――言い切ったもん勝ち!」
そう言い放ったアリアの目は、なぜか確信に満ちていた。
魔法士たちのお腹は、ぐるるる……と賛同するように鳴り続けていた。




