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健康オタク悪役令嬢、静かに城内改革を始めます  作者: 南蛇井


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23/30

騎士団、魔動ストレッチにハマる

翌朝の訓練場。

 騎士団の掛け声が、いつもとまったく違う種類の熱気に満ちていた。


アリア

「はーい! 肩ぐるぐる~!

 息止めない! 吸って吐いて~!」


騎士団

「は、はいっ!!」


 その声は剣の稽古よりも真剣だった。


 全員がアリアの動きに合わせ、肩を回し、腰をひねり、深呼吸する。

 まるで健康クラブの団体レッスンである。


 と、そのとき。


副団長

「……あの腰ひねり……たまらん……

 まるで背中の悪い魔力が流れ出るようだ……!」


騎士A

「副団長が快感を語った!?!?!?」


騎士B

「やべぇ! 副団長が陶酔してるぞ!!」


 副団長は本気で感動している様子で、

腰をゆっくり、味わうようにひねっていた。


アリア(動揺)

「ちょっと待って!?

 そんな劇的な動きじゃないから!!

 私、ただのストレッチ教えただけよ!?!?」


 しかし現実は――


 腰をひねるたび、

 騎士たちの周りにふわりと淡い光が立ち上る。


騎士C

「お、俺のまわり光ってるぞ!!」


騎士D

「魔力が整ってる……のか!? なんか身体が軽い!!」


アリア

「(いやそれ……ただの血流改善よ……!!)」


 彼女の心のツッコミは誰にも届かない。


 むしろ騎士たちは完全に信じてしまった。


騎士E

「これが……魔動ストレッチ……!

 身体だけでなく、魔力すら整える伝説の術……!」


アリア

「伝説じゃない!!

 ただの運動!! 現代の一般常識!!」


 だが、その必死の否定すらも

騎士団の中ではこう変換された。


騎士F

「お嬢様……“常識”と呼べるほどの高みにおられる……」


アリア

「待ってやめてやめて!!」


 その日の訓練場では、

 剣の音ひとつしない。


 代わりに聞こえるのは、

 「うぉぉ……伸びる……!」

 「魔力が澄んでいく……!」

 そんな感動の声ばかりだった。


 ――こうして騎士団は、“戦闘”よりも先に“健康”で団結したのである。

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