だが、効果が出るのが早すぎた
渋々ながらも、アリアの指示どおり身体をひねり、
腕を回し、深く呼吸する副団長。
最初はぎこちなかった動きが、数回繰り返すうちに――
ふわり。
目に見える形で、彼の肩まわりの魔力の濁りがほぐれた。
副団長
「……お嬢様。肩が……上がる。軽い……!」
その声は驚愕と感動が入り混じっていた。
その瞬間、騎士たちの空気が変わる。
騎士A
「え、え? 副団長が……肩を回してる……!」
騎士B
「昨日まで“肩は上がらんのが通常”とか言ってたのに……!」
副団長は腕をぐるりと回しながら、呆然としていた。
副団長
「嘘だろう……私は今……上まで上がっている……?」
アリアは心の中で頭を抱える。
アリア(内心)
(え、ちょっと待って。効果出るの早すぎじゃない?
この世界……全員、健康レベルが底辺なのでは……?)
そんなアリアの内心など知らず、
騎士たちは色めき立った。
騎士C
「おい俺もやる! ひねるやつ!」
騎士D
「魔力の濁りが取れるってマジか!?
じゃあ俺の腰も治るんじゃ……!」
騎士E
「副団長が軽いって言ったんだぞ!?」
もはや誰も笑っていない。
騎士団の半分が、アリアの周りに集まってきた。
アリア(内心)
(……あれ?
これ、湖に小石投げたら大津波みたいになってない?)
こうして“魔動ストレッチ”は、
予想外の速さで騎士団全体に広まりはじめるのだった。




