朝の軽運動=“魔動ストレッチ”を提案
騎士団の惨状を確認したアリアは、その日のうちに自室へ戻り、
紙を広げてペンを走らせた。
「……よし。
“魔力循環”と“筋肉の可動域”の関係を考えると……
この世界、ストレッチを知らなすぎるわ!」
現代知識をベースに、この世界の魔力理論をちょい足しした独自の運動。
アリアは名前もつけた。
――魔動ストレッチ。
「朝に10分これをやるだけで、
魔力の流れが整って怪我も減るはずよ!」
翌朝。
アリアは騎士団の朝礼に乗り込み、堂々と宣言した。
「皆さん、今から“魔動ストレッチ”をお見せします!」
ざわつく騎士たち。
前に立った副団長は真面目そのものの表情だが、やや不安げでもある。
「お嬢様……その、ストレッチというのは……?」
「こうよ!」
アリアは腕と腰を大胆にひねり、
背筋を伸ばし、魔力を巡らせる呼吸法まで披露した。
副団長の目が点になる。
「な……なぜその奇妙なひねりを……?」
「奇妙とか言わないの! これが文明なの!!
あなたたちの腰痛、文明で殴って治すの!」
騎士たちは思わず吹き出す。
「副団長がひねったぞ! ほら、なんか出るんじゃねぇか!?
魔力とか、雷とか!」
「出ん!!」
副団長が真っ赤になって否定する。
しかしここは騎士団、野次は容赦ない。
騎士D
「おい、ひねってる最中に魔力暴発したらどうするんだ?」
アリア
「むしろ暴発しないように整えるのよ!
ほら、こうして肩を回して――」
アリアの説明は止まらない。
副団長は苦悶の顔でついていくが、その動きはぎこちない。
騎士C
「うわ、副団長が……ひねった途端に……変な音したぞ!」
副団長
「これは骨だ!! 魔力ではない!!」
爆笑が起こる。
だが――この“変な儀式扱い”の運動が、
のちに騎士団の救世主になるとは、
この時はまだ誰も信じていなかった。




