改革スタート(試作→大混乱→少し改善)
料理長が徹夜で仕上げた“魔力四色御膳”の試作品が、
翌朝の食堂に堂々と並べられた。
肉の赤。
葉物野菜の緑。
雑穀の黄色。
果物とスープの青。
王城の歴史が始まって以来、
“茶色以外の食べ物が並んだ”というだけで、
食堂の空気がざわめき始める。
騎士
「……み、緑色の……は、葉っぱ……?」
魔術師
「こ、これ……野菜って、本当に“食べていい”んですか……?」
メイド
「飾りじゃ……ないんですか……?
飾りを……食べる……?」
アリア
「食べるの!! それは“食べ物”!!
飾りにされてただけなの!!」
一同、ぎくりと肩をすくめる。
皿の上の緑や黄色を前に、騎士たちは困惑して武器のようにフォークを握り、
魔術師たちは未知の魔道具に触れるように距離をとり、
メイドたちは「毒見……?」という目でこちらを見る。
アリアは胸を張った。
アリア
「いいから! 一口でいいから食べて!」
恐る恐る、城の者たちが箸やフォークを伸ばし――
緑の葉をパリッと噛んだ瞬間。
魔術師
「……あれ……?」
眉がふるふると震えだした。
魔術師
「お嬢様……なんか……魔力が……落ち着いてます……?」
アリア
「でしょ!!」
続いて騎士が立ち上がった。
騎士
「う、動きやすい!?
体が軽い……! 軽すぎる!?」
(※騎士、数分前まで“油まみれ朝食”で重かった)
メイドたちも順に頬をゆるませる。
メイド
「甘いデザートじゃないのって……案外いいです……
お腹の中が……軽い……!」
アリア
「そうよ!
人類は“野菜”という食べ物を忘れていただけなの!!
思い出しなさい、本来の姿を!!」
騎士・魔術師・メイド、そして料理長までもが、
野菜を噛みしめてしみじみとうなずく姿は――
ある意味、王城最大の異変であった。
こうしてアリアの“食事改革”は、
混乱の中に一筋の光を見出しながら、
ゆっくりと――しかし確実に、王城を変え始めたのだった。




