アリア、“魔力色を整えるメニュー”を提案
料理長は腕を組み、まだどこか不満げに鼻を鳴らしていた。
だが先ほどの“魔力色理論”が効いているのか、
完全に拒絶する様子はなく――むしろ、聞く姿勢になっている。
料理長
「……で、その……色で魔力が整う、というのは……
つまり、どう整えるんじゃ?」
アリアは「待ってました」とばかりに、
手元の紙とペンをぱっと取り出す。
アリア
「例えば、こうよ――」
紙にサラサラと色分けしながら書き込んでいく。
●赤=肉(力)
●緑=葉物野菜(調整)
●黄=穀物(持久)
●青=水分・果物(循環)
アリア
「この四つの色が揃うと、魔力が安定して暴走しにくくなるの。
だから――」
ぱちん、と指を鳴らした。
アリア
「“魔力四色御膳”
って名前で出すのよ!」
料理長が思わず身を乗り出す。
料理長
「な、名前が……か、かっこいい……!」
くわっと目が輝き始めた。
アリア
「でしょ!? 貴族はね、まず名前で釣れるのよ。
“効くらしい御膳”“魔力が整う御膳”ってだけで、
もう飛びつくから!」
料理長
「な、なるほど……!
効能+格好良さで、“食べさせる理由”を作るわけか……!」
(※料理長の心の扉、ほぼ自動で開きかけている)
アリア
「だから料理長が得意な肉料理を“赤”に置いて、
その周りを“緑・黄・青”で整えるの。
肉の価値を引き立てる形にすれば、誰も文句を言わないわ」
料理長の眉がぐっと上がる。
料理長
「肉の……価値を、引き立てる……!
それなら……わしにも、できるかもしれん……!」
アリア
「もちろんよ。むしろあなたにしかできないわ」
その一言で、料理長は完全に落ちた。
料理長
「お、お嬢様……!
わし、やってみますぞ!!
“魔力四色御膳”――王族にも魔術師にも、最高の料理を!」
アリアはほっと息をつきながらも、
内心では(よし、釣れた)と思っていた。
こうして――
王城の食卓改革は、
“名前の格好よさ”という最強の武器によって、
さらに大きく動き出すのであった。




