アリア、魔力理論を持ち出して説得
料理長が“愛情より大事なものがある”という衝撃から
まだ立ち直っていない隙をつき、アリアはすっと前へ出た。
(……ここは理屈で畳みかけるしかないわね)
アリアは、昨日見た魔術師たちの“魔力脱水ゆらぎ”を思い出し、
ふとひらめいた。
アリア
「料理長、魔術理論ってご存じ?」
料理長
「ま、まあ……かじった程度には……」
(※完全に苦手そう)
アリア
「いい? 魔力にはね、“色”があるのよ」
料理長の目が見開かれる。
料理長
「い、色……?」
アリア
「ええ。肉ばかり食べると“赤”が濃すぎて暴れやすくなるの。
力は出るけれど、扱いが乱暴になる。
だから“青”や“緑”――つまり野菜と果物――で整えてあげないと、
魔力循環が乱れて暴走しちゃうのよ!」
食堂がざわっとする。
魔術師見習い
「そ、そんな話……聞いたことないような……でもありそうな……?」
料理長
「な、なるほど……魔力の、色……
赤・青・緑で……整える……のか……!」
(※料理長、魔術理論に弱い。ものすごく弱い)
アリアは内心ガッツポーズを決めながら、さらに畳みかける。
アリア
「例えば騎士たちの攻撃魔法、最近ブレてるでしょう?
あれは“赤が濃すぎる”の。
だから緑(野菜)で鎮めてあげるのが一番いいのよ!」
料理長
「そ、そうだったのか……!
わしはてっきり、鍛錬不足か愛情不足かと……!」
アリア
「愛情が万能じゃないことを悟るのよ、料理長……!」
そこへ、そっとルチアがアリアの袖を引いた。
ルチア(小声)
「お嬢様、今の……完全にブラフですよね……?」
アリア(小声)
「いいの。結果的に野菜が増えればそれでいいのよ!」
ルチアは「お嬢様……」と若干呆れながらも、どこか楽しそうに微笑んだ。
そして料理長は腕をぶんと振り上げた。
料理長
「よし! 今日からは肉だけでなく、
“魔力の色”を整える料理も作ってみよう!!
青と緑……つまり野菜!
王族に野菜を! 王族に緑を!!」
アリア(心の声)
(野菜の導入がこんなにドラマチックになる国、初めて見たわ……)
こうして――
王城の食卓に、初めて“緑色の改革”が芽生え始めるのだった。




