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「やっくたたずぅ」


「うう、言い訳できません……」


「まあここの基地に侵入してきた奴らはほとんどやっちゃったけどぉ」


 中にはロシア兵と交戦した後に死亡し、寄生体ドミネーターに寄生された敵兵もいた。

 寄通常の銃や爆薬では対処できないためガーネットが殲滅する必要があったのだ。


「大きな組織は大変ねぇ。すぅぐ身動き取れなくなっちゃうんだからぁ」


「一番動きを制限されなければならない貴女に言われる事になろうとは……」


 本来海上都市企業連合という巨大な組織に属しているはずのガーネットだが、現在は非公式的に夜刀神PMCに所属している。

 そのため今のガーネットの指揮系統トップは夜刀葉月であり、その夜刀神葉月が雛樹にガーネットへの指示を任せているため比較的自由に動ける立場にあるのだ。


「姉さん、一旦仲間たちの元へ戻らない?襲撃によってかなりの死傷者が出たはずだ。状況を把握しておきたいわ」


「そうですね。交渉の状況も確認したいですし、持てるだけの武器を持って司令室へ向かいましょう。ガーネットは葉月を護衛しながらついてきてもらっていいですか?」


「なんであんたが指図するのよぉ」


「一応この場では上官ですので」


「はづはづぅ?」


 この女生意気ぃ、とでも言いたげな表情で葉月の方を向くが葉月は首を横に振り……。


「今は結月少尉の指示に従わないとダメ。ここでバラバラに動くと私も含め、みんなを危険にさらすことになるわ」


「はぁい。じゃあさっさといきましょお?」


 基地内で行動する彼女たちは己らの指針を定め、行動を開始する。

 だがその中でもガーネットだけはずっと嫌な胸騒ぎを覚えていた。

 ベリオノイズで出撃した雛樹が気になって仕方なかったのだ。

 現在の雛樹の操縦技術があればある程度のドミネーター相手になら余裕を持って戦えるだろう。

 その上センチュリオンテクノロジーの精鋭二脚機甲部隊も一緒なのだ。

 本来なら気にかける必要はない。

 だが……どうしても気にかかってしまうのだ。

 どうか無事に帰ってきてほしい、そう思うほどに。


……。



 凄まじい雪埃を巻き上げながら、ベリオノイズは広大な針葉樹林帯を突っ切って行く。

 レーダーには相当数のドミネーター反応が映し出され、ベリオノイズとの間をみるみるうちに縮めていく。

 

 操縦桿を握る手に力が入る。

 ハーケンの射出角度を調整、狙いは前方両側。

 

 凄まじいマズルフラッシュと共に両側に広がるように打ち出されたハーケンはワイヤーを針葉樹の間に通していく。

 ハーケンの先が一本の針葉樹に突き刺さり、今まで伸ばしてきていたワイヤーがピンと張られた。

 

 そしてこちらへ向かって進んでいたドミネーター群がその張られたワイヤーへ差し掛かると……。


「かかった……!!」


 横に広がってきていたドミネーター群の大半がワイヤーに足を取られるか、胴体がひっかかり動きを阻害された。

 しかしそれにより凄まじい負荷がワイヤーを通してベリオノイズのフレームにかかり、嫌な金属の擦過音を立てながら軋む。


 レーダー上でドミネーターの動きが止まったことを確認したライアンはすかさず仲間に指示を出す。

 

「進軍が止まった! 今のうちに狙い撃て!!」


《了解》


 雛樹が行ったのはあくまでもこちらへ向かってきていたドミネーター群の足止めである。

 しかし現状ドミネーターに対し有効な射撃装備を持つ二脚機甲部隊が後方に控えているため、足止めさえできればよかったのだ。


 ライアン率いるセンチュリオンテクノロジーの機甲兵器が動きが止まったドミネーター群に対し一斉に砲撃を浴びせていく。

 


 


 




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