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1話ー極地任務ー


「クソ、またGNCの連中に先越される!!」


兵士の一人が量産型二脚機甲〝ジェントス〟のコクピットの中で声を荒げた。

メインモニターに映っているのはこの激しい吹雪の中上空数百メートルをかっ飛ぶGNCの特殊二脚機甲。


今回大々的に張り出された任務である元ユーラシア大陸、北方領域解放戦線を受注した各企業がそれぞれの移動手段運送手段を持って二脚機甲を戦場投入した。

ユーラシア大陸北方領域は日本と同じく大海溝にて分かたれてしまった片割れであり、もはや大陸と言えるほど巨大な土地では無くなってはいたが、まだまだ人が住みうる環境として機能していた。


わかりやすく言えばこの北方領域はロシアということになる。

結月静流やアルビナの生まれ故郷であるここは大海溝の影響を受けてはいるが内地は比較的安全とされていた。


なにせ日本と違い陸が巨大であり、グレアノイド侵食の影響が緩やかなのだ。

海岸線などに好んで住まない限りはドミネーターに遭遇する確率も少ない。


《こちらモーリス2、共有回線を開きながらぼやかないでくれ、気が滅入るだろ。ただでさえこんな天候なんだ》


「しかしだな……畜生、こっちはこんな大吹雪の雪原を這うようにして進んでるってのに」


《まだ我々はマシな方だ。最高グレードの極地兵装を装備しているのだから。あまり文句は言うものじゃない、報酬金は大きいぞ》


ヘリックスモーリス重工。

主に極地用汎用二脚機甲や装備を開発し、各国へ輸出している中堅企業である。

今回この氷点下30度を軽く下回る環境においての自社極戦闘用二脚機甲のテスト運用を兼ねこの任務に参加していた。


その他企業に寒冷地用パッケージをレンタルすることで自社製品の有用性を広く知らしめるためでもあった。


二脚機甲が氷点下30度を下回るような環境下で稼働を続けるとどうなるか。

今現在主流となっている駆動系、その要になるのが人工筋繊維。

腕部や脚部、高性能モデルになってくると腰周りなどにも使用されるそれはより人らしい自然な動きと強靭な力を生み出すことに成功している。

しかしそれは低温に弱く、固まり上手く伸縮しないことで繊維が断裂し最悪の場合駆動停止に追い込まれる。


通常の二脚機甲に装着されている装甲はグレアノイドによる大なり小なりの耐侵食性を持たせているが、その合金は低温脆弱性が高く、温度が低くなれば低くなるほど脆くなる傾向にある。

後は低温下で原動核の出力が落ちるなどデメリットだらけとなっている。



「しかし氷点下30度か……。通常の二脚機甲エグゾスケルトンであれば間違いなく戦闘どころではなくなっているかもな」


《今回寒冷地用パッケージをレンタルしなかったのは確か……3社だけだった筈だが》


「センチュリオンテクノロジー社とGNC社……ああ、あとオンボロPMCか。レンタルする金もなかったんだろう。あの機体を見たか? 腕に工業用パイルバンカーを装備していたぞ。思わず笑ってしまった」


《あんな継ぎ接ぎの機体でこの環境の中保つのかどうか怪しいな……。心配だが我々には助けられるだけの余裕はないからな》


「その通り。身の程もわきまえずこんな任務を受ける方が悪いんだ。俺たちは怪物狩りに集中しよう。そろそろ出現区域に入るぞ」





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