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第86話 「これ、買うよ」

「此処が遺失物店ね」


「王都アデルリーゼ・ノーティカ遺失物店。此処で間違いないね」


 雑貨店の店員さんから聞いた遺失物店と古物商の話。

行ってみる事にしたので、詳しい場所を聞いた処、遺失物店が近かったのでこちらから先に来た。


「てか、此処もノーティカじゃん」


「きっちり自分とこの商会の店じゃん」


「やるな、あのおじさん」


「そこは商売だから。兎に角、先ずは入りましょ」


 店内には複数の客。

前の持ち主が分からない中古品ばかりなので値段は確かに安い。


 四角い店内の中央にあるのは目玉商品のようだ。


「ふうん…これ全部遺失物なんだよね?」


「色々あるね…というか、これ、本当に忘れ物?」


 遺失物を取り扱ってる店だけあって、ラインナップは雑多だな。

短剣やランプ…野外用の食器類。水筒にテント。

冒険者の忘れものっぽいけど…テントとか忘れる?


「あ、ティータ。下着あるよ、下着」


「か、買わないわよ…誰かの忘れ物の下着なんて」


「てか下着の忘れ物って…何処で忘れるんだ?」


「宿屋とかじゃない?あっ、連れ込み宿とか」


「…ノーパンノーブラで帰った事にならないか?それ」


 そうなる…よね。

しかし、中々にエロい下着…参考になる。


「他にも色々…落とし物としてありがちな物から意外すぎる物まで…」


「ちょっと面白いな。美術品まであるよ」


「ほんとだ」


 絵や壺、女神像に…宝石箱?

仮面や手鏡、鏡台まである。


 鏡台って、どうやって忘れるんだろう。


 他にもドレスやらマントやら。

日用雑貨の類まであった。

歯ブラシとか誰が買うんだろう?


「で、御目当ての品は?」


「無いねぇ」


「魔法道具関連はこっちに纏めてあるみたいよ」


「どれどれ…へぇ、魔法道具は横に説明書きがあるんだ」


「魔法道具は見ただけじゃどんな魔法が付与されてるか、わからないからね」


 殆どは旅にあると便利って程度の魔法道具みたいだ。

小さな火が出る筒。水が出続ける水筒。オイル要らずのランプ。


 ちょっと欲しいな、と思ったのはどんな人でも三秒で眠れる枕だ。


「アイシス、眠れないの?」


「昼寝したりすると夜眠れない時とかない?」


「そりゃそうでしょうよ…でも、これ私も欲しいな」


「やめておきなさい。それ、欠陥品だから」


「欠陥品?」


「だって、枕に頭を乗せてる限り眠り続けるのよ?誰かに枕を外して起こしてもらうか、偶然枕から頭が落ちるかしないと目覚めないんだもの」


「「「ダメじゃん」」」


 そりゃ確かに欠陥品だわ。だから安いんだな。


 それから店内の商品を見て周ったけど、御目当ての物は見つからなかった。


 因みに中央に置いていた目玉商品は魔剣だった。

火の球が出る短剣で、それほど強力な魔剣では無いがあの店では一番の高額商品だった。


「で、今度は此処ね」


「ノーティカ古物店…此処もか」


 本当に商売上手なおじさんだな…いいんだけどさ。


「此処が本命だよね」


「そうね。引退した冒険者の装備品にありそうね」


 店内に入ると、遺失物店よりも客が多い。

そして冒険者ばかりのようだ。

それも、まだまだ新人といった感じの。


「駆け出しの冒険者なんて御金が無いのが普通だから。少しでも安く、良い装備を買おうと思ったらこういうお店になるわけね」


「なるほどね。お、メイス」


 店に並んでいるのはやはり、冒険者用の装備がメインみたいだ。

剣は…『エア』以上の物はないな。


「おい、アレ…」


「騎士服?どこの騎士団だろう」


「ばっか、お前。女性で白い騎士服って言えば白天騎士団に決まってるだろ」


「てか、もしかして…剣帝じゃね?」


「うそ!あたしファンなの!」


「サ、サインとかもらえないかな…」


 ピクピク。

思わず聞き耳を立てちゃう。


 ふっふ…そうかそうか。

少年少女達よ…私のファンなのかね。

仕方ないな、ここはサインの一つや二つ、どんと書いてやろうじゃないか。


「とか考えてるんでしょうけど。やめなさい」


「此処、王都なんだからさ。此処に剣帝が居るって広まればあっと言う間に人が集まるよ」


「で、貴族の耳にも入って御誘いが来るわけだ。是非、我が家で食事でも!とかって」


「うっ…」


 そうだった…サッサと目的の物、探そう。


「此処は魔法道具が多いね」


「だね…探すのも一苦労しそう」


「店員に聞いた方が早そうね。すみません」


「はい。何かお探しですか?」


 ティータが捕まえた店員に目的の品が無いか尋ねる。

因みに今度の店員は二十代後半くらいの、やけに胸を強調した服を着てるお色気姉ちゃんだ。


 …何となく、グラウハウトの娼婦を思い出す。


「ございますよ」


「だってさ、アイシス」


「良かったね」


「…え?あるの?」


「はい。ちょっとお待ちください」


 ちょっと別の事を考えてるうちに、説明は終ってたらしい。

奥に引っ込んだ店員が持って来たのは…髪留め?


「これにはフェイクの魔法が付与されています。少々曰く付きですが」


「曰く付き?」


「はい。これの元の持ち主は少々…性格に問題のある方でして。称号『悪女』を持っていたとか。それを隠し、男漁りをし、騙す為に用意された品だそうです」


「アイシスにピッタリじゃん」


「だね。アイシスもそのうち『悪女』の称号ゲットするんじゃない?」


「失敬だなー君達!」


 一応、私は聖女の称号を持ってるんだぞ?私がゲットしたんじゃないけどさ!


「ところで、それだけなら曰く付きとは言わないのでは?」


「これにはまだ続きがございまして。この髪留めで称号は隠せても日々の行動までは隠せず。騙されていたと気付いた男達の復讐によって惨殺されたそうです。そしてその時、この髪留めを握りしめたまま死んでいたとか」


「「「「………」」」」


 つまり、その悪女の遺品な訳ね。

そりゃ確かに曰く付き…しかも、ちょっと教訓じみてる。

道具に頼って隠していても、いつか何処かでバレるもんだよ、的な。


「あ、一応、司祭様により清められていますので、呪われているという事はございません。安心してお使い頂けます」


「それは何よりだけど…その司祭様って神の子教会の?」


「…?はい、そうですが?」


 ううむ…教会の連中の眼を欺く為に、連中が清めた物を使うのは、何となく………面白いな!

ハッハッハッー!自分で自分の首を絞めるがいいわ!


「てかさ、それ殺人事件の物証でしょ?何でそんなもん売ってんの?」


「犯罪の証拠として押収された物は解決した事件の物に関してのみ、本人か遺族などの引き取り手が居ない場合にのみ、商店に安く卸して税収に充てたりするのよ」


「その通りです。そういった商品だからこそ、御安く提供出来るわけです。如何でしょう?こちら金貨五枚の商品となっておりますが」


「いや、要らないでしょ。いくらアイシスの神経が図太くても…」


「買おう。はい、金貨五枚」


「買うの!?」


「お買い上げ、ありがとうございます!」


 ククク…これを教会の奴らに話して悔しがる顔を視れないのが残念だ。

まぁ、特に恨みがあるわけじゃないんだけども。


「アイシスが、なんか小悪党みたいな顔してるよ」


「またしょうもない事考えてるね」


「間違いなく、くだらない事ね。でも、本当にいいの?何も此処で即決しなくても、他の店を見てから決めてもいいのだし」


「いや、いい!多分、これ以上の物ってないだろうし!」


「…そう。アイシスが良いなら、いいけど。それで、店員さん。ハイドが付与されたアイテムの方は?」


「申し訳ありません。そちらの方は現在、当店にはありません。もし、入荷した際は御連絡をさせて頂く事は可能ですが」


「いや、いいよ。取り合えず、これだけで」


 元々、簡単には見つからないと思って来てたんだし。

片方見つかっただけでも儲けもの………んん?


「ねぇ、お姉さん。これは何?」


「そちらですか?そちらはある遺跡から発見された古代の置物です。特に何かに役立つ物というわけでもないそうですよ?」


 それは、他の商品に混ざって何て事の無い只の置物のように陳列されている物。

楕円形の卵に文様と文字のようなものが描かれた物。


「古代文明の置物ですか。石細工…とは違うようですね。何で出来ているのですか?」


「申し訳ありません。こちら、鑑定不能の商品となってまして。『鑑定』のアビリティ持ちの店員に調べさせても判明しなかったそうです。宮廷魔導士の方や学者の方に調べて頂いても、只の置物としか思えないとの事で」


「正体不明の古代の遺物かぁ…そういうの好きそうな人居そうだね」


「アイシス、これ気に入ったの?」


「気に入った、と言うより、気になった、かな」


 何だろう?私の勘が言ってる。

これは買うべきだ!って。


「これ、買うよ。いくら?」


「こちらは銀貨一枚です」


「安っ。…ああ、いや、只の置物に銀貨一枚は高いのかな?」


「どうだろ。あたしは興味無いかなぁ」


「じゃあ…はい、これ」


「お買い上げありがとうございます。直ぐにお包みします」


「いや、いいよ。このまま持って行くからさ……ん?」


 ドクン、と。

遺物を手に持った途端に、何か感じた気がする。


 一体何だろう?悪い予感はしないけど…

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