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第75話 「犯人はわかりました」

ジュン視点です。


短編作品「ドリームドリーム!」を投稿しました。

そちらも読んで頂ければ幸いです。

「ジーナ殿にハリー殿か。何か誘拐犯から要求があったのか?」


「いいえ。ですが、犯人はわかりました」


「ほう?それは我々の予想通りの人物なのかな?」


 いきなり犯人がわかったのか。

いや、最初からわかってて、今まで証拠を集めてたってとこかな?


「それで犯人とは誰と誰なのかな?ジーナ殿」


「勿体ぶっても仕方ありません。御察しの通り、犯人はイワンとヴァネッサです」


「主犯はイワン兄さんです。ヴァネッサ姉さんは実行犯の手引きと物資、資金の提供で協力しています」


「物資?」


「我々を眠らせた睡眠アイテムなどですね。城の貯蔵庫から持ち出したのを確認しています」


 …城の物を使うとか、計画性が足りてないな。

バレない自信があったのか、バレても問題無いと思っていたのか。


「それで、二人は捕らえたのか?」


「いえ、まだです」


「今捕まえても、二人は部下に罪を押し付けるだけでしょう。そこで、皆さんに御協力をお願いしたいのです」


「……」


「エメラルダ様、ここで怒っても仕方ありませんわ」


「取り合えず、最後まで話を聞きませんと」


「…何を協力して欲しいと言うのだ?ハリー殿」


「はい。実行犯の捕縛に協力して頂きたいのです」


 …実行犯の捕縛?

そんなの、この国の騎士でやればいいのでは?


「実行犯は恐らく、イワン兄さん子飼いの冒険者パーティーです。葬儀の前日に接触していたのを確認しています。そして事件後、何やら大荷物を持ってダンジョンに入って行く姿を目撃されています」


「…なんというか、色々杜撰だな。その冒険パーティーとやらも、よく引受けたな。皇女の誘拐など」


「彼らはA級冒険者で帝都では一番の腕利き冒険者パーティーではあるのですが、素行が悪くイワン兄さんがバックに付いてるからとやりたい放題で評判は悪いです。今回の事も、恐らくは発覚しても皇家の権力でもみ消してやると言って、大金をエサにやらせているのでしょう」


「ダンジョンに入ったというのは?」


「そこなら簡単には捜査に入れませんから。単純ではありますが、効果的ではあります」


「しかし、危険では?誘拐した皇女を連れてダンジョンに入るなど…まさか皇女自身に戦わせるわけにいきませんし」


 今のアヴェリー殿下は鎧を着たとしてもまともに戦えるか、怪しいものだけど。

普通に考えて誘拐した者に武器を持たせるなんてしないはずだ。


「恐らく、ダンジョン内の安全地帯に連れて行き、そこで数日を過ごすつもりなのでしょう。彼らはそのダンジョンを主な狩場として稼いでいるようです。人目に付かない安全地帯の一つや二つ、知っているでしょう」


 安全地帯…確かダンジョン内には魔獣が出なくて罠も存在しない場所があるんだったか。

そこで数日過ごすつもりなのか?


「ダンジョンの中で数日過ごすなんて無謀では?いくら安全地帯があると言っても…」


「ジュンさん。冒険者が数日掛けてダンジョンを攻略する事はよくある事なんです」


「え?そうなんですか?」


「はい。だから余程の長期間で無ければ、その冒険者パーティーを探す者は出ないでしょう。むしろ外で連絡が付かない方が不審に思われるかもしれませんね」


 ティータさんは冒険者に関してもある程度の知識があるらしい。本当に物知りだな。

アイシスさん達がティータさんに頼る理由がよく解る。


「わたくしはアヴェリー殿下の貞操が心配ですわ。素行の悪い冒険者なのでしょう?」


「その点は心配無いかと。兄さんの側近の騎士が同行している筈です。兄さんは捜索に出した、と言っていましたが、事件前から姿が見えなかったそうですから」


「ん?それはつまり…実行犯の冒険者だけでなく、その騎士も捕えろ、と?」


「…そうなります」


「しかし、そこまでわかっているのなら何故帝国の騎士を使わないのですか?」


「場所がダンジョンだからです。我が国の騎士はダンジョン探索に適した能力を持った者がおりません。居てもA級冒険者には勝てないような腕の騎士ばかりで…」


 そこで、ボク達に、か。

というより、アイシスさんとボクに期待してるんだろうな。

でも、ボク達だってダンジョン攻略の経験が豊富ってわけでもないんだけどな。

まぁ能力はあるけれど。


「その冒険者パーティーと同行してる騎士は何名かわかっているのですか?」


「冒険者パーティーは五名。同行してる騎士は三名です」


 合計八名…ふむ。

力量がわからないけれど、何とかなるかな?


「…話はわかった。だが、第一皇子と第一皇女はどうするのだ?こう言っては何だが、貴国は敗戦国で我々は勝利国だ。そしてアヴェリー殿下は王国へ人質として差し出している身。今回、葬儀に参加出来たのは陛下の温情に依るもの。それを無碍にし、我らの手を煩わせる。しかも、第一皇子は我々に責任があるような発言をしていたな?一体どう始末をつけるつもりなのか?」


「それは…」


 今回の件が公になれば。

ファーブルネス帝国の信用は地に堕ちる。

それ相応の罰を与え王国が納得する賠償をしない限り。


 あの皇子と皇女は、帝国に更なる負債を背負わせようとしている。

それをわかってやっているのだろうか?


「エメラルダ殿の御言葉は御尤もです。イワンとヴァネッサの処罰は私にお任せください。必ずご納得頂ける罰を与えるとお約束します」


「具体的にはどういう罰を与えるつもりなのだ?ジーナ殿」


「皇位を剥奪。平民の身分に堕とし、辺境の修道院で軟禁します」


「ほう…」


 命までは奪わない、か。

それはあの二人にとって情けとなるか、それとも…


「そういう事らしいが、皆はどう思う?チェザーレ」


「引き受けるしかないかと。第一皇子の言に乗るのは癪ですが、確かに我々にはアヴェリー殿下を護る責任がありますので」


「ネーナ」


「やるべきですわ。あの二人は我々を舐めていますもの。吠え面をかかせてやりますわ」


「ラティス」


「私もやるべきだと思います」


「ジュン」


「アヴェリー殿下はグラウバーン家に預けられたので、ボクにはアヴェリー殿下を護る責任があります。是非、やらせてください」


 もし、このままアヴェリー殿下を助ける事が出来なかったら。

他家の貴族家にグラウバーン家を攻める良い材料を与える事になってしまう。

それは避けないと。


「あ、そっか。このままじゃジュンが一番責められる事になるんだ」


「それは何としても避けないといけないわね」


「だね!早く準備して行こう!」


「…決まりのようだな。ジーナ殿、ハリー殿。実行犯の捕縛は我らで引き受ける。そちらは第一皇子と第一皇女の監視を頼むぞ」


「はい。兄さんと姉さんは任せてください」


「不出来な身内の行いに恥じ入るばかりです。よろしくお願いします」


 目標はダンジョン、か。

ボクは初挑戦だけど…アヴェリー殿下が心配だ。

急いで行くとしよう。

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