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第74話 「どう責任を取るつもりなんだい?」

ジュン視点です。

「それでは詳細を聞かせて貰おうか。いつ、どこで、誰が、何を、何故、どのように。一からわかりやすく全てをな」


「ふん。それが皇族に対する態度――」


「私が説明します」


「…チッ」


 アヴェリー殿下が誘拐されたと、連絡を受けたボク達は帝城の会議室に集まっている。

全員揃った所で、エメラルダ様が場を仕切り始めたのだが、第一皇子は気に入らないらしい。

余計な事を言う前に、第二皇子のハリー殿下が話出した。


「アヴェリーが誘拐されたのはつい一時間前。皇家代々の墓所に父上の棺を納めた後の帰り道で事件は起きました。何者かの襲撃で私達は気絶…いえ、煙幕状の睡眠薬を嗅がされ眠らされました。目覚めた時にはアヴェリーの姿は無く…犯人が何者なのかはわかっていません」


「…アヴェリー殿下のみ?」


「はい。現在確認させて居ますが、あの場に居なかった皇家、分家を含めて誘拐されたのはアヴェリーのみ。念の為、身分を高い者を優先して確認させて居ますが、今の所はアヴェリー以外に誘拐された者は出ておりません」


 眠らせた場にはアヴェリー殿下以外の皇族も居たのに?

誰か一人だけ選ぶにしても優先順位がおかしい。

狙うなら第一皇子や第一皇女、皇妃が優先的に狙われるのが普通のはず。


 …アヴェリー殿下が狙いだった?

だとしたら、その理由は?


「どう責任を取るつもりなんだい?王国側は」


「何?アヴェリー殿下の誘拐は我々の責任だと?」


「当然だろう?アヴェリーは人質として王国預かりの身分だ。ならばアヴェリーの身の安全は王国が保障する必要がある。違うかい?」


 …その理屈が間違ってるとは言わない。

確かに、それはその通りなのだが、その王国側の護衛を引き離したのは帝国側。

ならばその間は帝国に責任があると思うのだけど。


 でも、そんな理屈を聞く気は無いんだろうな。

なんだ、そのニヤけた顔は。

皇妃と第二皇子は真剣な顔だが、第一皇子と第一皇女の顔は何処か真剣味が無い。

まるでアヴェリー殿下が誘拐されて喜んでいるみたいだ。


「…兄さん。アヴェリーの誘拐の責任を王国側に問うのは無理です。アヴェリーと引き離したのは我々なのですから」


「黙れ。お前には聞いていない」


「そーよ。あんたは黙ってなさい、ハリー」


「………」


「ふん。さて、ハリーの言うように、貴方達をアヴェリーから引き離したのは我々皇家だ。だが、全く責任が無いとは言えないだろう?」


「そーよね。責任は果たさなきゃね」


「…何が言いたいのかな?」


「アヴェリーの捜索、及び犯人逮捕に協力をお願いする」


「当然、無償でね」


「…いいだろう。犯人にはこの世の地獄を見せてやろうじゃないか。実行犯のみならず、黒幕も含めてな」


「…け、結構な事だね」


 …エメラルダ様がキレた。

第一皇子と第一皇女に好き勝手に言われて腸が煮えくり返ってるらしい。


「…質問してもよろしいでしょうか」


「あら?何かしら、魔帝殿。何でも聞いて?」


「…犯人から何か要求は?」


「無いと思うわ。そうよね、ハリー」


「…そうですね、今はまだ犯人からの要求は何も」


「では次に。犯人に心当たりは?ハリー殿下」


「む…」


「ありません。…今の所は」


 第一皇女がハリー殿下を名指しして質問したのを不満そうにしているが、そんな事はどうでもいい。


 誘拐しておいて犯人からの要求が無いとは?

まだ連絡が来てないだけか?


「では最後に…アヴェリー殿下が狙われた理由に心当たりは?」


「…わかりません」


「ふん。何を言ってる、ハリー。そんな事もわからないのか?」


「そんなのアヴェリーが普段は引きこもりのヘタレで狙いやすかったからに決まってるじゃない。バカねー」


「…それでは犯人は外部では無く内部の者の犯行だと御二人は考えていらっしゃるのですね?」


「え?」


「…何故、内部の者の犯行だと?」


「だって、そうでしょう?アヴェリー殿下が鎧を着て無ければ、ヘタレ…失礼。弱気な人格になると知っているのは帝国内部でも一部だと聞いています。対外的にはアヴェリー殿下は『龍姫』と称される武人のはず。本来ならば誘拐の対象から一番最初に外される人物の筈です。違いますか?」


「…ふ、ふん。なるほど、一理あるね」


「そ、そうね。賢いじゃない、魔帝殿は」


 …何だ?何か妙な反応だな。


「と、兎に角、アデルフォン王国の人達にはこのまま城に滞在してもらうという事で。ね、兄さん」


「そうだな。直ぐに部屋は用意させるよ」


「城内にアヴェリー殿下が居ると考えて居るんですか?」


「な、何を言うのかな、剣帝殿。短期解決が見込めない以上、拠点となる場所が必要だろう?」


「短期解決が見込めない?何故です?」


「それはそうだろう?こうも鮮やかに皇族を誘拐して見せたんだ。証拠や手掛かりも無しにね。そんな連中が簡単に捕まるとは思えないよ」


「…ふーん」


「………」


 …その言い方だと、捕まえる気が無いようにも聞こえる。

というか、探す気が無い?

誘拐事件を前に長期戦を考えて居るなんて、どう考えてもおかしい。

まるで…いや、その通りなのか?


「それでは一旦解散だ。何か新しい事が判明次第、情報は共有する事としよう」


 そこで会議は一旦終了。

終始無言だった皇妃様が何だか気になるけど…ボク達は一つの部屋に集まって会議の続きをする事に。


 そこにはアヴェリー殿下のメイド、リリさんとララさんも一緒だ。


「さて諸君。アヴェリー殿下が誘拐されたわけだが…どう思う?」


「間違いなく、内部の犯行でしょう」


「ハッキリ言いなさいな、ラティス。貴女も犯人の目星は付いているのではなくて?」


「え、嘘。もう犯人わかってるの?ダイナはわかる?」


「私にわかるわけないよ。ティータは?」


「…何となく、なら」


「私も何となくわかってるぞ」


「「それは嘘でしょ」」


「何でだ!」


 意外…と言ったら失礼か。アイシスさんにも犯人の目星が付いているらしい。


「犯人は第一皇子ですわね。第一皇女も関わってるのではないかしら?」


「だろうな。ジュンの指摘にあからさまに動揺していた。御手柄だぞ、ジュン」


「あ、はい…ところで、エメラルダ様が連れて来た二人は?」


「あの二人なら既に捜査に向かわせた。直になんらかの手掛かりを持って来てくれるだろうさ」


 こういう捜査なら黄天騎士団が本職なんだが、黒天騎士団も得意な筈だ。

自由に入れない場所に潜入しての捜査なんかは黒天騎士団の方が得意かもしれない。


「ふうん…ま、確かにあの二人の言動はおかしかったけど…アイシスは何処で感付いたの?」


「どうせ勘なんでしょ?」


「勘…まぁそうなんだけど。でもさ、あの二人。あまりアヴェリー殿下を探す気が無そうに見えたから。実の妹が攫われたって言うのに、妙に落ち着いてるし。そこが気に入らなかったかなー」


 同感だ。あの二人には危機感という物がまるで感じられなかった。

まるで全て知っていて慌てる必要が無いとでも言いそうな感じだった。


「でも…妹でしょ?何で兄と姉が妹を誘拐する必要が?」


「さてな。そっちの二人はアヴェリー殿下付きのメイドだったな?アヴェリー殿下とあの二人の関係性はどんな物だったのだ?」


「…あまり良好とは言えません」


「イワン殿下もヴァネッサ殿下も、自分より下の者は自分の手駒としか思ってませんから。それは自分の御兄妹も例外ではないです」


「では仮に。あの二人が犯人だとして、だ。その目的はなんだと思う?」


「それは…すみません、私達にはそこまでは」


「そうか…しかし、今更だがいいのか?君達は帝国の人間だろう?」


「構いません。私達の主はアヴェリー様です。あの御二人ではありません」


「ですから、皆さんの会話の内容を漏らすつもりはありませんよ」


「それは助かるな。手間が省ける」


 手間…?何か不穏な言葉だな。


「ジュン、君はどう思う?あの二人の目的について、何かないか?」


「…こういうと自惚れと捉えられそうでですが…ボクとアイシスさんが狙いなのではないか、と」


「ああ…言ってたもんね、欲しい物は必ず手に入れるって」


「ええ…まさか、その為に?誘拐劇を仕組んだって事?実の妹を相手に?」


「つまり、その為にジュン君とアイシスをこの城に留めるのが目的だと?」


「随分頭の悪いやり方ですわねぇ」


 本当に。もう少しスマートなやり方は無かったのだろうか。


「もしそうなら…ジュン様とアイシスさんに接触して来るでしょう。妹を探す事もせず」


「有り得る御話しです。あの御二人ならやりかねません」


 ノルンの発言をララさんが肯定する。

リリさんも頷いている。やはり、その線が濃厚なのか。


「では、第一皇子と第一皇女が犯人として仮定して動くとして。先ず、どうしますか?」


「王国から応援を呼びますか?黄天騎士団や黒天騎士団がこの手の捜査に向いていると思いますが」


「いや…それだと私があのアホ皇子とバカ皇子にお仕置きが出来ん。捜査は我々の主導でやるぞ」


 他の宮廷魔導士の声に、そう答えるエメラルダ様の顔は本気だ。

そこはアヴェリー殿下の安全を最優先に考えるべきなんじゃ…気持ちはわかりますけど。


「皇族の誘拐事件となればヨシュアが来ますものね。そうなればヨシュアの主導で捜査は行われ…犯人に対する不当な暴力は禁じられてしまいますわ」


「そうなったら私達を年増と呼んだ事に対する罰が与えられないわね。それは避けたいわね」


「御二人、実は仲良しなんじゃ?」


 普段いがみ合ってても、息ぴったりだし。

普通に仲良しに見えるんだけど。


「それは無いわよ、ジュン君」


「此処は余所様の国ですし、エメラルダ様の前ですから。自重してるだけですわ。それよりも、もう少し情報が欲しいとこですわね…あら?」


「ならばその情報は我々が提供しましょう」


「失礼します、皆さん」


 皇妃と第二皇子が共も連れずにやって来た。

どうやら話をある程度は聞いてたようだけど、情報…?何かあったのか?

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